【医師監修】尿酸値が高い!痛風の予防と治療について
監修医師:甲斐沼 孟(TOTO関西支社健康管理室)
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科を卒業後、心臓血管外科として勤務。国家公務員共済組合連合会 大手前病院 救急科医長を務め、現在はTOTO関西支社健康管理室に産業医として勤務。
健康診断で尿酸値が高いと指摘されたことはありませんか?尿酸値が高い状態が続くと、足の親指や踵などに激しい痛みが生じる痛風を引き起こすことがあります。
現在日本における痛風の患者数は約100万人、痛風予備軍といわれる人は約1,000万人にものぼるといわれています。痛風は中年男性の発症が多くみられますが、若い世代や女性であっても痛風を発症することはあります。
この記事では医師監修のもと、尿酸値が高い人が痛風を予防するためにできることや、痛風の治療方法について解説していきます。
尿酸値が高いといわれたら
尿酸値とは、血液中の尿酸(プリン体が体内で分解される際に発生する老廃物)の濃度のことをさします。尿酸値の基準は7.0mg/dlとされており、7.0mg/dl以上は「高尿酸血症」と診断されます。
尿酸値が高くなる原因として、食生活や運動不足、肥満などが挙げられます。健康診断で尿酸値が高いと指摘された方は、まずは以下のような生活習慣を心がけるようにしましょう。
- アルコールの摂取量を減らす
- 栄養バランスの良い食事を心がける
- 摂取カロリーの制限(食べ過ぎない)
- 水分を多く摂る
- 適度な運動
高尿酸血症の状態が続くと、さまざまな病気を引き起こすリスクが高まりますが、そのうちの一つに「痛風」があります。
痛風とは
痛風とは、尿酸が結晶化して関節や組織に蓄積し、急激な痛みや腫れなどの炎症を引き起こす疾患です。痛風は、「風が吹いただけでも痛い」といわれるように、我慢できないほど強い痛みがあらわれるのが特徴です。
痛風は主に中年男性での発症が多く、生活習慣や食生活などが原因となっているケースが多いです。
ここでは、痛風と尿酸値の関係、痛風発作の症状について解説していきます。
痛風と尿酸値の関係
尿酸とは、体内でプリン体が分解される際に排出される老廃物のことです。プリン体というと、ビールやレバーや魚卵などの食品を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし実はそれだけでなく、体内で古くなった細胞が新しく生まれ変わる際や、激しい運動によるエネルギー代謝でもプリン体は生成されています。
食品として摂取したプリン体や体内で生成されたプリン体は、通常血液中を循環して尿として排泄されます。しかし、うまく排泄できずに関節や周囲組織に蓄積した尿酸が結晶化することで、痛風が発症するといわれています。
尿酸値が基準値を超えた高尿酸血症になったからといって、すぐに痛風を発症するわけではありません。高尿酸血症の状態を長年放置していたり、尿酸値が基準を大幅に超えていたりすると、痛風が発症しやすくなるといわれています。
健康診断で尿酸値が高いと指摘されたことがある方は、早めに生活習慣の改善や適切な治療によって尿酸値を下げ、痛風の予防をすることが重要です。
痛風発作の症状
痛風発作の特徴は、突然足の親指や踵などの関節が赤く腫れて激痛が起きることです。痛風発作は夜中から明け方に起きることが多いです。これは、就寝時に横になることで溜まった尿酸が体内で関節に結晶化しやすいためと考えられています。
多くの場合、痛風発作の痛みのピークは発症後約2~3日続き、その後1~2週間程で症状は治まってきます。ただし痛風発作は再発することも多く、また痛風の悪化と共に、痛風発作が治まってから次の痛風発作が起きるまでの期間がだんだんと短くなっていくケースもあります。
痛風発作を繰り返すと、関節の変形や生活習慣病などの合併症を引き起こします。痛風の症状がみられたら、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
痛風の予防方法
痛風を予防するためには、生活習慣の改善が最も効果的です。
前述の通り、高尿酸血症の状態が長く続くと痛風を発症するリスクが高まります。つまり痛風を予防するためには、尿酸値を下げる必要があります。
近年さまざまな研究結果により、高尿酸血症と肥満は非常に深い関係があることが分かってきました。肥満の中でも特に内蔵脂肪型肥満は、高尿酸血症になりやすいといわれています。肥満の方は、まずは3~5%の体重減を目標に、肥満の解消に努めましょう。
また肥満ではないという方でも、食べ過ぎ・飲みすぎには十分気をつけましょう。
痛風の予防というと「プリン体を多く含む食品を避ける」必要があることは多くの方が認識しているでしょう。しかし一般的にプリン体が多く含まれる食品として知られているビールやレバーや魚卵など以外にも、ほぼ全ての食品にプリン体は含まれています。
普段の食事の中からプリン体だけを減らすことは難しいため、食事全体の量を減らし、栄養バランスのとれた食生活を心がけましょう。
またこれ以外にも、水分を多めに摂って尿酸を排泄する、ジョギングや水泳などの有酸素運動を行うのも、痛風の予防には効果的です。
痛風の治療と費用について
尿酸値が8.0mg/dL以上、または8.0mg/dL未満であっても痛風発作の経験がある場合には生活習慣の改善とあわせて薬を使った治療が検討されます。
痛風の治療で使用される薬は大きく分けて①痛風発作の痛みを抑えるための薬 ②尿酸値を下げるための薬の2種類があります。
痛風発作が起きている時には、まずは①痛風発作の痛みを抑えるための薬を使用して、痛みや腫れなどの症状を抑えます。痛風発作の痛みを抑えるための薬は主に以下を使用します。
ナイキサン(非ステロイド系抗炎症薬)
体内で炎症を引きおこす物質の生成を抑え、炎症や痛みなどを抑えることを目的とした治療薬です。痛風の発作が起きている時に使用します。
ナイキサンの費用(3割負担の場合)
1日あたり約20〜40円
コルヒチン(痛風発作抑制薬)
痛風発作(発作的に起こる痛風の痛み)を和らげることを目的とした治療薬です。痛風発作の前兆と思われる症状や、腎障害などの持病により非ステロイド系抗炎症薬が使用できない方に使用されます。
コルヒチンの費用(3割負担の場合)
1日あたり約20〜30円
痛風の発作が治まった際は、②尿酸値を下げるための薬を使用して、痛風発作を繰り返さないために尿酸値のコントロールを行います。尿酸値を下げるための薬は主に以下を使用します。
尿酸排泄促進薬
尿酸排泄促進薬は、体内にある尿酸の排泄を促し尿酸値を下げることを目的とした治療薬です。主にベンズブロマロン、プロベネシド、ドチヌラドなどの薬を使用します。
尿酸排泄促進薬の費用(3割負担の場合)
1日あたり約10〜200円
尿酸生成抑制薬
尿酸生成抑制薬は、体内にある尿酸の生成を抑えることで尿酸値を下げることを目的とした治療薬です。主にアロプリノール、フェブキソスタット、トピロキソスタットなどの薬を使用します。
尿酸生成抑制薬費用(3割負担の場合)
1日あたり約10〜60円
痛風の治療費
痛風の治療費(3割負担の場合)
初診費:約4,000~6,000円(検査費・薬代含む)
再診費:約2,000~3,000円(薬代含む)
痛風の治療費は症状や使用する薬剤によっても異なります。
痛風の治療は発作の症状をおさえるだけでなく、日頃の尿酸値の管理が必要となります。そのため治療は長期にわたることも多く、年間の治療費が高額になるケースもあります。
尿酸値が高いといわれたらまずは生活習慣を改善し、痛風発作の予防をしていくことが重要です。
まとめ
尿酸値が高い「高尿酸血症」の状態が続いていると、痛風を発症する可能性が高まります。
痛風を予防するためには、食生活や飲酒、運動習慣などの生活習慣を改善することが最も重要です。また肥満は高尿酸血症のリスク要因となるため、まずは3~5%の体重減を目標に、肥満の解消に努めましょう。
生活習慣を改善しても尿酸値の減少がみられない場合や、すでに痛風発作が起きている場合には薬を使った治療が必要となります。
尿酸値が高いと指摘されたら、早めに医療機関を受診するようにしましょう。