【医師監修】ヘルペスとは?症状や治療法を解説
監修医師:竹内 想(名古屋大学医学部付属病院)
医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積みました。 現在は主に皮膚科医・産業医として勤務しています。
ヘルペスとは、主に口の周りや性器などに水疱や潰瘍などの症状があらわれる感染症です。
ヘルペスの原因となるヘルペスウイルスは感染力が強く、世界中で日常的に存在しているため、いつどこで感染してもおかしくない病気だといえます。
ヘルペスは自然治癒することも多いですが、放置していると合併症を引き起こしたり、何度も再発を繰り返してしまうことがあるため、医療機関で適切な治療を受けることが重要です。
この記事では、医師監修のもとヘルペスの症状や治療法について詳しく解説していきます。
ヘルペスとは
一般的に「ヘルペス」と言うと、口や性器にできるものと、片側の上半身に帯状にできるものを指します。
上半身に帯状にできるものは「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」と呼ばれ、水ぼうそうのウイルスが原因ですので、この記事では口や性器にできるヘルペスについて解説していきます。
ヘルペスは「単純ヘルペスウイルス」の感染によって発症します。皮膚や粘膜に水疱が出現するのが特徴です。
単純ヘルペスウイルスは感染力が強く、世界中で日常的に存在しているウイルスの1つです。
主な症状
ヘルペスの主な症状は皮膚や粘膜に出現する小さな水疱(水ぶくれ)や潰瘍(ただれ)です。これに加えて人によっては、かゆみや痛みなどの症状があらわれることもあります。
また初めてヘルペスウイルスに感染した場合は、発熱や体の痛み、頭痛などの全身症状があらわれることもあります。
これらの症状は、初感染であれば2~4週間、再発であれば1週間程度で自然治癒することも多いです。しかし症状を放置していると、重症化したり人への感染を広げてしまったりする恐れがあるため、気になる症状があれば早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
ヘルペスの種類と特徴
ヘルペスの原因である単純ヘルペスウイルスには、1型(HSV-1)と2型(HSV-2)の2種類があります。
どちらも感染すると、感染した場所に水疱や潰瘍を作った後、神経節に潜伏します。症状が治まったあとも体内に残り続けるヘルペスウイルスは、風邪やストレスなど免疫力が低下した時にウイルスが再活性化して症状が再発することがあります。
このように、単純ヘルペスウイルスは一度感染すると体から排除されることなく、生涯感染が続くという特徴があります。そして単純ヘルペスは症状が出ている時だけでなく、無症状の時も人に感染する力を持っているため注意が必要です。
単純ヘルペス1型(HSV-1)
単純ヘルペス1型は、多くの人が幼少期に感染しているといわれています。WHOによると、世界では50歳未満の67%にあたる約37億人が感染しているとの報告があります。(参考:単純ヘルペス | 公益社団法人 日本WHO協会 (japan-who.or.jp))
症状の出現箇所は上半身、特に口唇ヘルペスが多くみられます。
重症化すると単純ヘルペス脳炎や単純ヘルペス角膜炎を引き起こすこともあるため、症状があらわれたら早めに適切な治療を受けることが重要です。
単純ヘルペス2型(HSV-2)
単純ヘルペス2型は、主に性行為によって感染します。性器ヘルペスの主な原因はこの単純ヘルペス2型であると考えられています。
再発の頻度は単純ヘルペス1型よりも多く、1年以内にほとんどの人が再発を経験するといわれています。
症状の出現箇所は下半身、特に性器、次いで殿部(お尻)に多くみられます。
新生児ヘルペスに注意
性器ヘルペスの感染は、妊娠中または将来的に妊娠を望む女性は特に注意が必要です。性器ヘルペスに感染したことがある場合、出産時の症状の有無にかかわらず、産道を通して赤ちゃんにヘルペスが感染する(新生児ヘルペス)恐れがあります。
新生児ヘルペスは死亡率が高く、また重度の後遺症が残る恐れのある病気です。妊娠中だけでなく、過去に性器ヘルペスに感染したことがある女性は、帝王切開での出産が勧められるため、事前に必ず主治医に相談するようにしましょう。
ヘルペスの感染経路
ヘルペスウイルスは、症状があらわれた時に最も感染力が強くなりますが、症状がない時でも人に感染させる恐れがあります。
単純ヘルペス1型、2型共に主な感染経路は接触感染ですが、感染の仕方に違いがあります。それぞれの感染経路についてみていきましょう。
単純ヘルペス1型の感染
単純ヘルペス1型は、主に口と口との接触で感染します。口に直接触れること、あるいは、唾液や病変部に触れた物(食品、食器、タオルなど)の共有が感染経路となります。
口周囲に症状がある時は、唾液のついた物、水疱や潰瘍に触れた物の共有はしないようにしましょう。
特に症状が出ている間は、患部に触れた手でそのまま誰かに触れることのないよう注意しましょう。また患部に触れた手で自分の目をこすると角膜ヘルペスを起こすこともあるため、他人への感染だけでなく自家感染にも十分注意が必要です。
単純ヘルペス2型の感染
単純ヘルペス2型は、主に性行為で感染します。感染を予防するためには、コンドームの使用が有効です。
性器周囲に症状がある時は、性器周囲や体液が触れた物を触らないようにしましょう。
ヘルペスの治療と費用
ヘルペスは一度感染すると、神経節に潜伏して何度も再発を繰り返すことがあります。単純ヘルペスウイルスを体から排除することはできませんが、治療をすれば症状の悪化を防ぐことが可能です。
ここでは、ヘルペスの治療について詳しく解説していきます。
ヘルペスの治療
ヘルペスが疑われる症状が出た時は、できるだけ早めに皮膚科を受診するようにしましょう。特に初めての感染の場合は、早期に治療を開始することで回復が早くなるだけでなく、重症化や再発の予防にもつながります。
ヘルペスの治療では、主にヘルペスウイルスに対する抗ウイルス薬が使用されます。抗ウイルス薬の種類は飲み薬や塗り薬などがあり、症状に応じて適切な薬が処方されます。
現在ドラッグストアなどでヘルペス治療薬が市販されていますが、これは再発時のみに使用できる薬となります。初感染の方は市販薬を使用せず、必ず医療機関を受診するようにしましょう。
ヘルペスの再発を繰り返す方
ヘルペスの再発時の治療方法として、「PIT(Patient Initiated Therapy)療法」というものがあります。これはあらかじめ薬を処方してもらい、前駆症状(口のピリピリ感やムズムズする違和感など)があらわれたらすぐに内服する方法です。
また年に6回以上再発を繰り返す方には、「再発抑制療法」という治療方法が対象となります。これは、抗ウイルス薬を1日1回、約1年間内服する治療方法です。
自分自身で前駆症状に気が付くという方、ヘルペスの再発を何度も繰り返しているという方はこれらの治療について、医療機関で相談してみると良いでしょう。
ヘルペスの治療費
ヘルペスの治療費の目安は以下の通りです。
ヘルペスの治療費(3割負担の場合・薬代含む)
初診費:約2,000~4,000円
再診費:約1,000~2,000円
ヘルペスの治療費は症状や治療方法によっても異なります。詳しくは受診される医療機関へお問合せください。
まとめ
ヘルペスは主に口唇にできる1型と、性器にできる2型があります。一度ヘルペスウイルスに感染すると、生涯神経節に潜伏し続けるため、免疫力低下時などに再発することがあります。
ヘルペスウイルスは感染している人が無症状でも感染する力を持っており、感染予防の対策を行っても完全に防ぎきれるものではありませんが、症状がある人との接触や汚染された物の共有を避けるようにしましょう。
初めての感染であれば、早期に治療をすることで重症化や再発のリスクを下げることができます。また再発を繰り返す場合は、PIT療法や再発抑制療法などの治療方法も検討してみましょう。