ミレーナのメリット・デメリットとは?装着前に知っておきたいこと
監修医師:馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)
筑波大学医学専門学類卒業 。 現在は宮の沢スマイルレディースクリニック(札幌市)院長として勤務 。専門は産婦人科。
ミレーナは、子宮内に器具を挿入することで、最長約5年間の避妊効果が得られます。また避妊目的以外でも、過多月経や月経困難症の治療としても用いられることがあります。
ミレーナは世界各国で使用されており、国内では2007年に「避妊」の効能・効果で先に承認を受け、2014年に「過多月経」「月経困難症」に対しても追加承認されました。
この記事では、医師監修のもとミレーナのメリットやデメリット、またミレーナ装着時に知っておきたいことについて詳しく解説していきます。
ミレーナとは
ミレーナとは、小さな器具を子宮内に挿入することで、避妊効果が得られる避妊具の一種です。避妊目的以外でも、月経困難症や過多月経の治療としても用いられます。
ミレーナは3cmほどの柔らかいプラスチック製の器具です。T型の形状をしており、上部は両側に弓状のアーム、下側は取り出し用の糸が取り付けられています。
ミレーナを装着すると、器具から「レボノルゲストレル」という黄体ホルモンが継続的に放出されます。このホルモンの影響により子宮内膜が薄くなり、月経量が減少したり受精卵の着床を防ぐ効果(避妊効果)が得られます。
ミレーナのメリット
ミレーナのメリットは以下の通りです。
- 避妊ができる
- 月経量が減少する
- 約5年間効果が持続する
- ピルを内服できない人でも使用できる
- 取り外せば妊娠も可能
それぞれの項目について詳しくみていきましょう。
避妊ができる
ミレーナを装着すると、ホルモンの影響により子宮内膜が薄くなり、受精卵の着床を防ぎます。そして、子宮の入り口の粘液を変化させて精子が腟の中から子宮内に侵入するのを防ぎます。
ミレーナはコンドームや低用量ピルよりも高い避妊効果があるといわれています。しかしごく稀にミレーナがズレたり、外れてしまったりといったケースにおいて妊娠する可能性があります。(年間約0.2%)
月経量が減少する
子宮内膜が薄い状態が続くことで月経量が減少し、約2割の方は無月経となるとの報告があります。
それにより、月経に伴う月経痛も緩和します。
約5年間効果が持続する
ミレーナは一度装着すると、約5年間効果が持続します。途中で妊娠を希望したり、副作用やトラブルなどがない限りは、追加の処置をする必要はありません。
また5年を超えてミレーナを使用したい場合には、5年を超える前に一度外し、新しいものを装着することも可能です。
ピルを内服できない人でも使用できる
血栓症のリスクが高い方や喫煙者、副作用などの理由によりピルの内服ができない方でも、ミレーナを使用することができます。
取り外せば妊娠も可能
ミレーナを取り外せば元のホルモン状態に戻り、子宮内膜も周期的に肥厚して妊娠が可能な状態となります。
ただしその際は自分で無理抜こうとせずに、必ず産婦人科でお願いするようにしましょう。
ミレーナのデメリット
このようにミレーナにはさまざまなメリットがある一方、デメリットがあることも理解しておく必要があるでしょう。
ミレーナのデメリットとしては、以下が挙げられます。
- 装着時の痛みがある
- 副作用がある
- 定期受診が必要
- 性感染症は防げない
- 装着できない人もいる
それぞれの項目について詳しくみていきましょう。
装着時の痛みがある
ミレーナは、膣から子宮頚管を通って子宮内にミレーナを装着します。子宮頚管は狭いため、ミレーナを挿入するときに痛みが生じます。
出産経験のない方でもミレーナは装着することができますが、出産経験のある方に比べると痛みが強く生じる傾向があります。
副作用がある
どんな薬にも副作用がありますが、ミレーナにも副作用は報告されています。各症状における症状出現者の割合で最多なのは、「過長月経・月経周期異常」で 78.6%でした。
そのほか、卵巣のう胞12.7%、除去後の消退出血11.8%、月経中間期出血10%、腹痛7.9%の順になっています。(参考:インタビューフォーム(ミレーナ)第15版(2021年8月改訂) (bayer.jp))
定期受診が必要
ミレーナは自然に抜け落ちたりズレたりすることもあるため、定期的に産婦人科を受診して、正しく装着されているかどうかを確認する必要があります。一般的には、装着後の初回月経後、3ヶ月後、(6ヶ月後)、12ヶ月後、その後1年ごとの定期受診が勧められています。
また定期受診以外でも、副作用が出現した場合や異変がある時はすぐに受診するようにしましょう。
性感染症は防げない
ミレーナには、クラミジアや梅毒、HIVなどの性感染症を防ぐ効果はありません。そのため性感染症を防ぐためには、コンドームの併用が必要です。
装着できない人もいる
以下に当てはまる人はミレーナの装着ができないことがあります。
- 性感染症にかかっている、または過去3か月以内にかかった人
- 肝機能が悪い、または肝臓がんの人
- 妊娠、または妊娠している可能性がある人
- 子宮頸管炎や膣炎がある人
- 子宮の形の異常がある人
ミレーナの装着を希望する人は初診時に、医師の診察・性感染症検査・超音波検査などを行い、ミレーナの適応可否を調べます。装着にあたり不安がある方は、初診時に事前に医師に相談するようにしましょう。
ミレーナ装着前に知っておくべきこととは?
避妊・過多月経・月経困難症を対象に使用されるものには、ミレーナの他にピルもあります。
ピルが合わずにミレーナを検討している、またはミレーナとピルのどちらがいいか悩んでいる方など、さまざまな状況であるかと思います。
ミレーナを検討している方は、ミレーナとピルの違いや、最大のデメリットとも言える痛み、保険適用についての情報も知っておきましょう。
ミレーナとピルの違い
ミレーナとピルは、どちらも同じ目的で使用されることも多いですが、それぞれ特徴が異なります。
ミレーナとピルの主な特徴や違いは以下の通りです。
ミレーナ
- 卵巣に影響はなく、排卵はある
- 月経周期のコントロールはできない
- 一度装着すれば最大5年間効果がある
- 抜去時は産婦人科にかかる必要がある
- 装着時は痛みがある
ピル
- 卵巣に影響を与え、排卵が起こらない
- 月経周期のコントロールができる
- 毎日の内服が必要
- いつでも服薬を止められる
- 血栓が生じるリスクがある
このようにミレーナとピルはそれぞれ特徴が異なるため、自分自身の体の状態やライフスタイルに合わせてより適切な方法を選択することが重要です。
ミレーナの装着の痛みは?
ミレーナは子宮の中に装着するため、子宮内に入れる際に痛みが発生します。
国内の臨床試験では、ミレーナ装着時に、被験者の約8割が軽度~中等度の痛みを感じたと答えました。
(参考:インタビューフォーム(ミレーナ)第15版(2021年8月改訂) (bayer.jp))
痛みに関する不安が強い方は、事前に痛み止めを服用することで、痛みが軽減されることがあります。また医療機関によっては麻酔下でのミレーナ装着が可能なこともあるため、不安な方は事前に医療機関に問い合わせてみましょう。
保険適用について
ミレーナは避妊目的で使用する場合は、自由診療(全額自己負担)となります。ただし、過多月経・月経困難症の診断があり、ミレーナを使用する場合は保険適用の対象です。
ミレーナの費用は医療機関によって異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。
ミレーナ装着時の費用目安
自由診療の場合:約4~8万円
保険適用(3割負担)の場合:約1~2万円
自由診療の場合、約4~8万円と高額に感じる方も多いかもしれません。しかし例えばピルを5年間服用した場合の総額は約15万円となるため、比較するとミレーナは安価であるといえるでしょう。
まとめ
ミレーナは一度装着すれば、最長5年間の避妊効果が得られます。また子宮内膜症が薄くなることによって、月経過多や月経困難症の改善が期待できます。
ミレーナは避妊目的で使用する場合は自由診療となりますが、医師の診断のもと治療目的で使用する場合は保険適用となります。
またミレーナと同じ目的で使用できるものとして低用量ピルがあります。ミレーナとピルはそれぞれ特徴やメリット・デメリットが異なるため、体の状態やライフスタイルに合わせて最適なものを選ぶようにしましょう。