ミレーナの費用は?保険適用と自費診療の違いについて
監修医師:馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)
筑波大学医学専門学類卒業 。 現在は宮の沢スマイルレディースクリニック(札幌市)院長として勤務 。専門は産婦人科。
ミレーナとは、子宮内にT字型の小さな器具を挿入することで高い避妊効果が得られる避妊具の一種です。
ミレーナを装着すると、器具から放出される黄体ホルモンの働きにより、子宮内膜が薄い状態で保たれます。それにより月経過多や月経困難症の改善も期待できます。
ミレーナの装着は避妊目的か、または月経過多・月経困難症の治療目的かによって費用が大きく異なります。
この記事では、医師監修のもとミレーナの効果や費用について詳しく解説していきます。
ミレーナの効果とは
ミレーナとは避妊具の一種であり、T字型の小さな器具(約3cm)を子宮内に挿入することで、高い避妊効果が得られます。
ミレーナを装着すると、器具から「レボノルゲストレル」という黄体ホルモン継続的に放出されます。レボノルゲストレルは、子宮内膜を薄い状態で維持したり、精子の侵入を防いだりして、避妊効果を発揮します。
また子宮内膜が薄くなることで、経血の量が大幅に減り、人によっては無月経となることもあります。それに伴い、生理痛などの月経困難症の改善も期待できます。
ミレーナを正しく挿入できていれば、避妊効果の持続期間は約5年間です。
ミレーナは数ある避妊方法の中でも、避妊効果が非常に高いのが魅力です。1年以内に妊娠する確率は、コンドームで約2%、低用量ピルで約0.3%、ミレーナは0.2%といわれています。
ただしミレーナは稀に自然に抜け落ちてしまったり、ズレてしまったりすることがあるため、正しく使用するためには定期的に産婦人科を受診することが重要です。
ミレーナはどんな人におすすめ?
ミレーナは避妊効果の他に、月経過多・月経困難症の治療としても用いられています。
とくに以下に当てはまる方は、ミレーナの装着をおすすめします。
- ひどい生理痛を改善したい
- 経血の量が多い
- 低用量ピルの服用ができない
- コンドーム以外の避妊方法を探している
- 長期的な避妊効果を得たい
のちほど詳しく解説いたしますが、月経過多・月経困難症での治療目的の場合は保険適用(3割負担)となります。ただし医師の診断が必要となるため、気になる症状がある方は一度産婦人科で相談してみるようにしましょう。
ミレーナを装着できない場合もある?
以下に当てはまる方はミレーナの装着ができないことがあります。
- 性感染症にかかっている、または過去3か月以内にかかった人
- 肝機能が悪い、または肝臓がんの人
- 妊娠、または妊娠している可能性がある人
- 子宮頸管炎や膣炎がある人
- 子宮の形の異常がある人
また経膣分娩の経験がない方など、子宮頚管が狭い場合はミレーナが挿入できない、または強い痛みが生じることがあります。
出産経験がない方でもミレーナは装着可能ですが、不安があれば、事前に痛み止めの服用や麻酔の処置が可能か確認しておきましょう。
ミレーナの費用
ミレーナの費用は挿入する目的に合わせて、保険適用の場合と自費診療の場合で分かれます。
またミレーナの費用だけではなく、挿入前の検査や抜去時の費用、定期的な受診など別料金がかかるため留意しておく必要があります。
保険適用となる場合と、自費診療になる場合の費用について詳しくみていきましょう。
保険適用の場合
過多月経や月経困難症と医師から診断を受けて疾患治療として行う場合のみ、健康保険が適用されます。気になる症状があるという方は、まずは産婦人科を受診し、必要な検査や医師による診察を受けるようにしましょう。
保険適用(3割負担の場合)の費用目安は以下の通りです。
ミレーナ挿入時の費用:約10,000円
定期受診の費用(1回あたり):約2,000円
ミレーナ抜去時の費用:約3,000円
自費診療の場合
避妊目的でミレーナを挿入する際は、すべて自費診療(全額自己負担)になります。
自費診療の場合の費用目安は以下の通りです。
ミレーナ挿入時の費用:約40,000~80,000円
定期受診の費用(1回あたり):約3,000円
ミレーナ抜去時の費用:約10,000円
自費診療の場合は、医療機関によって金額が設定されているため、40,000円〜80,000円と費用に幅があります。
少し高価に感じるかもしれませんが、低用量ピルの場合は1シートで2,500円〜3,000円、5年分でおよそ150,000円〜180,000円となるため、比較するとミレーナは安価であるといえるでしょう。
ミレーナの注意点
避妊効果が高く月経トラブルの改善にも期待できるミレーナですが、一方で注意点もいくつかあることをしっかりと理解しておきましょう。
ミレーナの注意点は以下のとおりです。
- 定期的な受診が必要
- 出産経験がないと使用できない、または子宮頸管の拡張が必要
- 副作用が起こる可能性がある
それぞれの注意点について詳しく解説していきます。
定期的な受診が必要
ミレーナは固定するわけではないため、気が付かないうちに位置がずれてしまったり、抜け落ちてしまう可能性もあります。ミレーナがきちんと装着されているか確認するためにも、定期的な受診が必要です。
受診の期間も医療機関によってさまざまですが一般的には、挿入後1か月、3か月、6か月、1年のタイミングで定期検診が実施されます。その後も1年に1回の定期検診が必要なため、忘れずに受診するようにしましょう。
出産経験がないと使用できない、または子宮頸管の拡張が必要
ミレーナは子宮内に直接挿入する器具であり、子宮の入り口が狭い出産未経験のない方(経膣分娩の経験がない方)は挿入時に強い痛みを伴うため、医療機関によっては使用できません。
使用できた場合でも、子宮頸管という子宮の入り口を広げる治療が必要になることもあります。
医療機関によっては、ミレーナ挿入前に麻酔処置を行えることもあるため、まずは受診する医療機関へ相談してみましょう。
副作用が起こる可能性がある
人によってはミレーナ挿入後、副作用が出る可能性があります。
挿入後によくある副作用は以下のとおりです。
- 月経周期の変化
- 月経期間が長くなる
- 卵巣のう胞
- 腹痛
- 出血 など
副作用が続くようであれば、定期受診の日を待たずに、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
まとめ
ミレーナは黄体ホルモンの働きを利用した、避妊具の一種です。避妊効果の他、月経過多や月経困難症の治療としても用いられています。
ミレーナは、避妊目的の場合では自費診療となりますが、過多月経や月経困難症の疾患治療の場合では保険適応となります。
総合的にかかる費用や注意点なども踏まえて、ミレーナの装着について検討するようにしましょう。