【医師監修】妊娠前に知っておきたい!風疹ワクチンを接種すべき理由とは?

2023.10.19

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監修医師:馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)
筑波大学医学専門学類卒業 。 現在は宮の沢スマイルレディースクリニック(札幌市)院長として勤務 。専門は産婦人科。

妊婦の方または妊娠初期の方が風疹を発症すると、母体感染を引き起こし、赤ちゃんの発育に影響を及ぼすことがあります。目が見えにくい・耳が聞こえにくい・心臓の動きが弱い・発達が遅くなるなどの症状は「先天性風疹症候群」と呼ばれ、後々の発達にも関係することが大半です。

そのため妊娠中の女性を風疹から守るためには、風疹ワクチンの接種が欠かせません。また風疹ワクチンには、生まれてくる赤ちゃんの健康を守る効果があることから、妊娠を希望する方には必須の予防接種といえるでしょう。

今回は大人、特に妊娠を希望する夫婦の方が風疹ワクチンの予防接種を行うメリットや、風疹に関する抗体の検査方法、また予防接種にかかる費用などについて解説していきます。

風疹とは

まず風疹とは、風疹ウイルスが引き起こす急性の突発性感染症のことを指します。風疹は1人の風疹患者から5~7人に移すこともある、強い感染力が特徴です。

主な風疹の感染経路は飛沫感染とされ、くしゃみなどで人から人へ感染していきます。

風疹の症状には、感染したにもかかわらず感染症状が出ない不顕性感染や重篤な合併症を併発するなどさまざまなパターンがあります。特に20歳以上の大人にみられる症状では、長期間の高熱・発疹・関節痛などがあり、子どもが感染するよりも重症化するケースがほとんどです。

更に脳炎や、血液中の血小板が減少して出血しやすくなる血小板減少性紫斑病を合併した際には、入院治療を必要とすることも少なくありません。

風疹にかかるとどのような症状がでるの?

風疹に感染すると、おおよそ2週間~3週間後に発熱・発疹・リンパ節の腫れなどの症状が現れます。子どもは軽症で済むことがほとんどですが、2,000人~5,000人くらいの割合で前述した脳炎・血小板減少性紫斑病などを発症します。

また発疹が出る前後おおよそ1週間は、感染力が強くなるため感染を拡大させるリスクが高くなるところも特徴です。

更に妊娠20週までの女性が風疹に感染すると、眼・耳・心臓に障害を持つ子供が生まれる確率が上がり、妊娠1カ月で2人に1人以上、妊娠2カ月の場合だと1.75人が先天性風疹症候群に罹患したという報告があります。

なお赤ちゃんが先天性風疹症候群に感染した際に、症状が現れやすい箇所は以下の通りです。

  • 眼(白内障・網膜症・緑内障など)
  • 耳(難聴など)
  • 心臓(心臓弁膜症など)
  • 肝臓
  • 膵臓
  • 血小板減少性紫斑病
  • 脳炎
  • 低体重症

妊娠前に風疹ワクチンの接種が必要な理由とは?

風疹ワクチンはウイルスが持つ毒性を弱めて製造されているため、赤ちゃんがウイルスに感染する恐れがあることから、妊娠中は予防接種を受けることができません

そのため赤ちゃんが先天性風疹症候群に罹患することを防ぐためにも、妊娠前のワクチン接種が重要になります。

また風疹が流行している地域にお住いの方は、不要不急の外出を避け、人混みには極力いかないようにするなど風疹に感染しないようにする注意も必要です。

更に同居する家族の方も風疹に感染しないように予防に努めることが大切になります。

風疹の抗体検査について

厚生労働省の調査によると、平成24年10月から平成26年2月までに、出生時に赤ちゃんが先天性風疹症候群を発症している報告は42件にのぼりました。また風疹に対する抗体があっても抗体価が低い際には、出生時に限らず成長の過程で先天性風疹症候群を引き起こす可能性も否定できません。

そのため、妊娠前に風疹に免疫があるかを検査することが重要です。

風疹抗体検査は、採血の数値を確認することで抗体の有無を確認しています。検査方法には2種類あり、それぞれをHI法・EIA法と呼びます。

HI法では風疹の抗体が陰性または数値が32倍未満、またはEIA法では風疹ウイルスIgGが陰性か数値8.0未満の場合には、過去に風疹ワクチンの予防接種を受けたことや風疹を発症した経験があったとしても、風疹に罹患するリスクが高くなります。

風疹抗体検査の結果、抗体がないあるいは抗体価が低いと判断された際には、風疹ワクチンの予防接種を受けて、風疹に対する免疫力を高めることが必要です。

また妊娠中の方が抗体検査を受けた結果、風疹に対する免疫がないことが分かるケースもあり、その際には妊娠中は風疹に感染しないように注意することしかできませんが、出産後は風疹ワクチンが接種可能なため、早期の段階でのワクチン接種を推奨します。

なお風疹の抗体価が低い同居家族の方に対しては、妊婦の方と生まれてくる赤ちゃんを守るためにも予防接種を検討することが必要です。

風疹ワクチンのメリット・デメリットは?

風疹ワクチンの予防接種を行うメリットとして、まず風疹抗体価の値が上昇することがあげられます。

風疹ワクチンを接種することにより、おおよそ95%の方が免疫を獲得できるといわれていることから、予防接種を行うことは風疹の予防に非常に効果があるといえるでしょう。

なお予防接種を行うデメリットとしては、ワクチン接種後の副反応があげられます。

最も多い副反応は発熱で、発生頻度は接種後1週間前後が一番高く、次いでアレルギー反応の蕁麻疹が現れることもあります。

稀にワクチン接種後30分以内にアレルギー反応の一種であるアナフィラキシーショックや、血管迷走神経反射による体調不良・血圧低下・失神などの症状が現れることもあるため、ワクチンの接種を受けたあとには医療機関などで安静にすることが大切です。

風疹ワクチンの予防接種は2回行うことが必要となりますが、2回目以降は発熱および蕁麻疹の頻度は極めて低くなることが分かっています。

なぜワクチン接種は2回必要なの?

風疹ワクチンは2回の予防接種を行うことで、1回目の接種では抗体が認められなかった方の多くに免疫をつけることができます。

風疹ワクチンを1回接種することで95%以上、2回目の接種で99%以上の免疫を獲得することが可能だといわれています。

また風疹ワクチンを接種してからであれば、風疹の患者さんと接触してもほとんどの場合は発症を予防できます。

いつまで免疫が持続するかについては個人差があるため、予防接種で獲得した免疫の状況や、流行の程度によって効果は異なります。

ワクチンを接種した後に気をつけておくこと

風疹ワクチンを接種した当日は、副反応が起こりやすいため安静に過ごすことが大切です。激しい運動を控えてご自身の体調を良く観察することで、副反応の症状にしっかりと対応することができます。万が一、気になる症状が現れた際には接種元の医療機関に相談してください。

また稀に、風疹ワクチンを接種した方ののどから接種後1~2週間後にワクチンウイルスがでてくることがあります。もし出てきたとしても周囲の方に感染することはないため、心配する必要はありません。 

風疹ワクチンの費用

風疹ワクチンの接種は保険診療外となるため、自費での接種を行うことになります。そのため医療機関ごとに若干のばらつきがありますが、1回おおよそ5,000円から10,000円程度の金額で接種することが可能です。

また風疹の抗体検査に関しては、クーポンを発行して無料で検査を行う自治体が増えてきています。自治体によって風疹ワクチンや抗体検査の補助には違いがあるため、医療機関を受診する前にお住いの保健所や役所などに問い合わせることをおすすめします。

まとめ

風疹ワクチンは、母体の健康はもちろん生まれてくる赤ちゃんの健康を守るために欠かせないワクチンであるといえるでしょう。風疹ワクチンには副反応がありますが、安全性が保障されているワクチンのため、不安なことがある際には医師への相談をおすすめします。

また風疹に対する免疫を確認しておくことも、妊娠前に行う検査として重要です。妊娠を希望する方は女性男性共に風疹の抗体検査を行い、抗体価が低い際にはワクチン接種を行うことで赤ちゃんの健やかな成長を生まれる前から確保することができます。