大人が風疹を発症するとどうなる?風疹を予防するために必要なこととは

2023.10.24

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監修医師:馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)
筑波大学医学専門学類卒業 。 現在は宮の沢スマイルレディースクリニック(札幌市)院長として勤務 。専門は産婦人科。

風疹は強い感染力を特徴とする、予防接種や抗体検査などが欠かせない疾患の一つです。また大人が風疹に罹患すると子どもよりも症状が悪化するケースもあり、重篤な合併症を発症する恐れもあります。

更に妊娠中の方が風疹ウイルスに感染すると、お腹の中の赤ちゃんが先天性の障害を発症する可能性が高くなるため、赤ちゃんの健康を守るという点でも風疹について深く理解しておくことが大切です。

今回は大人が風疹を発症した時の症状や、風疹を防ぐためのワクチンの予防接種また風疹抗体検査などについて解説します。

風疹とは

風疹とは、強い感染力があるウイルス性発疹症のことを指します。

風疹ウイルスに感染した際に発症しやすい症状は以下の通りです。

  • 高熱
  • 発疹
  • リンパ節の腫れ
  • 関節痛
  • 脳炎
  • 血小板減少性紫斑病
  • 先天性風疹症候群

稀に脳炎や血液中の血小板が減少して出血しやすくなる血小板減少性紫斑病なども発症する場合があり、その際には入院加療が必要となるケースが大半です。

また風疹ウイルスに感染していても症状が出ない不顕性感染は、「保菌者(キャリア)」と呼ばれ、知らず知らずのうちにウイルス感染源となる可能性があります。

更に妊娠20週頃までの妊婦の方が風疹ウイルスに感染すると、お腹の中の赤ちゃんも風疹ウイルスに感染することになり、さまざまな障害の原因となる先天性風疹症候群を発症する恐れがあるところも特徴です。

風疹の感染力について

風疹の感染経路は、くしゃみや咳などによる飛沫感染です。風疹の感染力のピークは、身体に発疹が現れる2~3日前、もしくは発疹が出てから5日くらいまでがほとんどです。

また風疹ウイルスの感染を認めた人に接触すると、1人の風疹患者からおおよそ5~7人への感染拡大が報告されています。

先天性風疹症候群とは

妊娠中の方の中でも特に妊娠初期の方が風疹に罹患すると、母体感染を引き起こし、お腹の中の赤ちゃんも風疹ウイルスに感染するリスクが高くなります。風疹ウイルスは赤ちゃんの耳・眼・心臓などの発達に影響をおよぼし、「先天性風疹症候群」と呼ばれる先天性の障害を引き起こします。

先天性風疹症候群における主な障害は下記のとおりです。

  • 眼(白内障・緑内障・網膜症など)
  • 耳(難聴など)
  • 心臓(心臓弁膜症など)
  • 肝臓(肝脾腫など)
  • 糖尿病
  • 心身の発達の遅れ

大人が風疹を発症するとどうなる?

風疹ウイルスに感染すると、おおよそ2週間~3週間後に発熱・発疹などの症状が現れます。それらの症状は子どもだと比較的軽症で済みますが、大人が発症すると発熱や発疹の期間が長くなることがあります。

更に2,000人~5,000人に1人の割合で、脳炎や血小板減少性紫斑病などを発症し入院加療が必要になるほどの重症化するケースも否定できません。

そのため、風疹の罹患を未然に防ぐ予防接種や抗体検査が重要になります。

風疹と梅毒の違いについて

風疹と似た症状が現れる疾患に「梅毒」というものがあります。

梅毒とは、梅毒トレポネーマという細菌が原因となる感染症です。梅毒という病名は、梅毒特有の赤い湿疹から名づけられており、発疹の他にも全身にさまざまな症状が現れます。

梅毒で現れやすい症状は以下の通りです。

  • 発疹(手のひら・足の裏・体幹など)
  • 発熱
  • 心臓(大動脈瘤など)
  • 肝臓

梅毒の感染経路は性行為とされ、治療せずに長期間放置することにより重篤な合併症を引き起こすことがあります。そのため、梅毒は早期の抗生剤投与が欠かせません。

また十分に治療を受けないと病気が進行し再発する恐れがあることから、症状が軽快しても医師の指示通りに服薬を継続することが大切です。

更に妊娠中の方が梅毒に感染すると、赤ちゃんが梅毒を発症した状態で出生する先天梅毒のリスクが高くなります。ですが妊娠中の方も適切な抗生剤投与を受けることで、母子感染のリスクを低下させることが可能です。

梅毒の感染は死産・早産・新生児死亡に繋がるため、気になる症状がある際には、早めの医療機関への受診をおすすめします。

風疹の検査・治療について

風疹の抗体検査や感染の有無に関しては、採血で調べることができます。

また風疹を発症した際の、風疹自体を治療する特異的な治療方法はありません。そのため発熱や関節痛などの症状を和らげるために、解熱鎮痛剤などを服薬する対症療法を行うことになります。

なお発熱による体力減少が懸念されることから、風疹発症後は1週間程度の安静が推奨されています。

風疹の抗体検査の方法は?

風疹の抗体検査とは、風疹に対する免疫の有無を調べる検査のことです。抗体検査は前述したとおりに採血で行うことができるため、比較的簡単に検査を受けることが可能です。

なお風疹抗体検査には、IH法とEIA法の2種類があります。

HI法は検査結果が陰性もしくは32倍未満、EIA法では風疹ウイルスIgGが陰性あるいは8.0未満の場合は、過去に風疹ワクチンの予防接種の経験や風疹に罹患したことがあったとしても、風疹に感染するリスクが高くなります。

万が一風疹抗体検査で抗体がないという結果が出た際には、予防接種を行い風疹に対する免疫をつけることが大切です。

また風疹抗体検査を気軽に受けられるように、無料クーポンなどを発行する自治体が増えてきています。抗体検査を検討している際は、医療機関に出向く前にお住いの地域の保健所や役所に問い合わせるといいでしょう。

風疹の予防接種について

風疹ウイルスは非常に高い感染力を特徴としているため、飛沫感染以外にも空気感染・接触感染にも注意が必要です。そのためマスクの着用や、手洗いうがいなどの衛生面に気を配ることだけでは風疹ウイルスを完全に予防することはできません。

風疹の予防には、予防接種が最も効果的です。風疹の予防接種は原則として2回受けることになりますが、1回目の接種で95%・2回目の接種で99%以上の免疫を獲得することができます。

なお予防接種の副反応として、発熱・倦怠感がおこることがあります。副反応は1回目の予防接種から、おおよそ1週間前後にピークを迎えるため、2回目の予防接種では副反応が現れない方もいます。

また風疹ワクチンは、ニワトリの胚細胞を使用して製造しています。実際の風疹ウイルスが混入しているため妊婦の方は接種することができませんが、天然素材を使用していることから身体に優しいワクチンであることも特徴です。

なおワクチンに卵は使用していませんが、稀に卵アレルギーによる重度のアナフィラキシーショックを引き起こす場合があるため、アレルギーの不安がある方は医師とよく相談をしてから摂取することを推奨します。

まとめ

妊婦の方が風疹に罹患すると、母体はもちろんのこと生まれてくる赤ちゃんの健康にも影響がでます。風疹は感染力が強いことから、妊婦の方だけではなく同居する家族の方も積極的な予防が必要です。

風疹ワクチンの接種歴が曖昧な方や抗体価が低い方は、医療機関や保健所などに問い合わせて、予防接種を行うことを検討してみて下さい。