【医師監修】感染性胃腸炎はいつまでうつる?症状や治療を解説

2023.10.30

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監修医師:郷 正憲(徳島赤十字病院)
保有免許・資格は日本麻酔科学会専門医、ICLSコースディレクター、JB-POT。主な著書は『看護師と研修医のための全身管理の本』。

感染性胃腸炎は、食品や水を介して各種のウィルスや細菌に感染したことで起こり、消化器症状を主症状とする疾患です。

集団感染のリスクがあることや、乳幼児および高齢者は生命のリスクを伴うこともあるため、軽視してはならない疾患です。

ここでは、感染性胃腸炎とはどのような疾患で、どのように治療をすればよいのかを詳しく解説していきます。

感染性胃腸炎とは

感染性胃腸炎は、ウイルスや細菌などによって、胃や腸といった消化器を中心にさまざまな症状をきたします。

一般的には毎年秋から冬、おおむね11月から翌年の3月頃かけて流行します。

子どもから大人まで誰しもがかかるリスクがあることが特徴です。

健康な人では重症化するリスクは低いものの、子どもや高齢者、基礎疾患を持つ人の場合は重症化し生命のリスクを伴う可能性もあります。

感染性胃腸炎の原因

感染性胃腸炎の原因は多種多様ですが、一般的には細菌やウイルスが原因であると考えられています。

それぞれ主な原因菌は次のようになります。

細菌性:腸炎ビブリオ、病原性大腸菌、サルモネラ、カンピロバクタなど
ウイルス性:ノロウイルス(SRSV) 、ロタウイルス、腸管アデノウイルスなど

特に、日本で秋から冬にかけて流行を見せるのはノロウイルスとロタウイルスが原因の感染性胃腸炎です。

また、ごく稀ですが寄生虫が感染性胃腸炎の原因となる場合もあります。

寄生虫ではクリプトスポリジウム、アメーバ、ランブル鞭毛虫などがあげられます。

感染性胃腸炎の症状

原因となるウイルスあるいは細菌によって症状は異なる場合がありますが、主に発熱、下痢、悪心、嘔吐、腹痛などの症状が見られます。

ただし、全ての症状が必ずしもみられるということではありません。

嘔吐や下痢だけという場合もありますし、発熱がない場合もあります。

また、乳幼児や高齢者の場合、頻回の嘔吐や下痢、発熱によって、脱水が症状として見られることもあり、乳幼児と高齢者においては症状に対して早めの対処が必要です。

ウイルスや細菌の潜伏期間はその病原体によって異なり、感染してから1日以内に症状が出る場合もあれば、1日たってから症状が出る場合もあります

ウイルスや細菌に感染していても無症状で経過したり、軽い風邪のような症状で経過する方もいたりと、経過によっては個人差が大きいのも特徴です。
症状の持続期間は平均して1〜2日となり、その後自然に軽快していくため、治療をしなくても完治が見込めます。

感染性胃腸炎の感染経路

感染性胃腸炎の感染経路は接触感染および経口感染です。

接触感染とは感染者が手で触れたもの、感染者の嘔吐物や便を触った手を介して感染するものです。

感染者の嘔吐物の片付けをしたことによって接触感染を起こすことが多い傾向にあります。

人によっては感染性胃腸炎の原因菌を所持しているにもかかわらず症状が出ないケースもあります。そのため、感染していたにもかかわらず、糞便をした後に手を洗わずにほかの物に触れ、それを触った人が口もとに媒介して感染する場合もあるのです。

経口感染とは、原因となる細菌やウイルスに汚染された食べ物を食べたことで感染するものです。

例えば、ノロウイルスは二枚貝を汚染していることが多いので、生ガキあるいは加熱不十分な二枚貝を食べてノロウイルスに感染するというケースが多々見られます。

ほかにも、生卵を食べてサルモネラ菌に感染した、魚介類の刺身を食べてカンピロバクターに感染したという事例もあります。

感染性胃腸炎はいつまでうつる?

感染性胃腸炎の原因となる細菌やウイルスは、症状が消失しても体内に潜伏しています。

概ね、症状が消失しても感染から2週間は体内にウイルスあるいは細菌が潜伏していると考えられており、この期間は症状が消失していたとしても、感染のリスクがあるので注意が必要です。

ただし、症状が顕著にみられている期間が最も感染力が強く、次第に感染力は弱まってきますので、免疫力がある方においては症状が消失していればうつらなくなるかもしれません。

感染性胃腸炎の治療

感染性胃腸炎は、ウイルスが原因の場合は特効薬を含む有効な治療方法がありません

そのため、症状に対して必要な処置を施す対症療法が中心です。

細菌あるいは寄生虫が原因の場合は、それらに有効な薬剤などがあるため、薬剤を用いて治療ができます。

ここからは、ウイルスが原因の感染性胃腸炎に着目して解説していきます。

感染性胃腸炎を早く治すには?

感染性胃腸炎を早く治すためには体内に潜伏しているウイルスあるいは細菌を体外へと排出する必要があります。

体外へウイルスや細菌を排出するために、下痢や嘔吐は有効です。そのため、下痢や嘔吐は必要な症状となり、症状が出現した初期の段階では、下痢や嘔吐を止めるための治療はほとんどされません

ただし、下痢や嘔吐によって水分が摂れないと脱水を起こし、生命のリスクを伴います。特に、乳幼児や高齢者では脱水になりやすいため、水分や食事が摂れないほど症状が深刻な場合には整腸剤や吐き気止め、下痢止めの内服薬で症状を落ち着かせます。

また、すでに脱水症状となっている場合や、経口から水分が摂れない、薬を口から飲んでも吐いてしまうという場合には点滴で補水したり、注射などを用いて治療薬を投薬することも可能です。

感染性胃腸炎の治療は薬が必要?

上述しているように感染性胃腸炎では必ずしも薬を用いて治療をする必要はありません

実際に、治療を積極的にしなくても下痢や嘔吐で原因ウイルスが排菌されれば症状が軽快することもあります。

しかし、高齢者や乳幼児、基礎疾患がある方など症状が長期化することで、重症化するリスクを秘めているという方は、薬を用いた治療が推奨されます

また、感染性胃腸炎には特効薬がありません。そのため、治療よりも予防が推奨されています。

感染性胃腸炎の予防は手洗いの励行、原因となりうる食品の十分な加熱処理です。

また、調理をする方は調理のときの手洗いや生ものを調理した器具の熱湯消毒も予防につながります。

感染者の嘔吐物を処理する際には自分のもうつらないあるいは、ほかの人にもうつさないように塩素系の消毒剤で消毒するなど感染を広げないようにしていきましょう。

まとめ

毎年秋から冬にかけて感染が広がる感染性胃腸炎。主に発熱、下痢、悪心、嘔吐、腹痛などの症状が1~2日程度持続するのが特徴です。

健康な人では重症化するリスクは低く、原因となるウイルスあるいは細菌が体外へ排出されれば、自然に症状はおさまっていきます。そのため、薬の服用が不要なケースがほとんどです。

しかし子どもや高齢者、基礎疾患を持つ人の場合は、重症化する恐れもあるため、必要に応じて薬の服用や点滴が検討されます。経口から水分が摂れない、薬を口から飲んでも吐いてしまうという場合は、早めに医療機関を受診するようにしましょう。