【セミナーレポート】美容に関する情報発信の注意点とニーズ【200記事以上監修の美容外科医が本音アドバイス】
近年、幅広い世代で美容・再生医療への関心が高まりつつあります。インターネットやSNS上には、美容・再生医療に関するたくさんの情報があふれていますが、中には科学的根拠に基づかない情報や誇張された広告も存在しているのが現状です。
美容・再生医療に関する情報発信は、読者が本当に知りたい内容を的確にとらえ、最新の医学知識をもとに正しい情報発信を行っていくことが求められます。
では、美容・再生医療に関する情報発信を行っていく中で具体的にどのようなことに注意して、どんなコンテンツを作成していくべきなのでしょうか。
今回は、弊社メディコレで開催したオンラインセミナーの内容をもとに、美容に関する情報発信の注意点とニーズについて、くわしく解説していきます。本セミナーでは、200記事以上の医師監修実績をもつ松澤 宗範先生にお話しを伺いました。ぜひ今後のコンテンツ作成の参考にしてみてください。
この記事はこんな人におすすめ
- 美容・再生医療に関するコンテンツを作成している
- 美容・再生医療に関する情報発信に不安がある
- 美容・再生医療の最新トレンドが知りたい
Profile
松澤 宗範
近畿大学医学部を卒業後、慶應義塾大学病院 形成外科や佐野厚生総合病院形成外科、横浜市立市民病院形成外科、埼玉医科総合医療センター 形成外科・美容外科などで勤務。現在は、青山メディカルクリニック院長とプロクリニック最高経営責任者を務める。
美容・再生医療の記事でありがちな間違いとは?
医療情報の発信においては、情報の正確さが何よりも重要です。しかし、美容・再生医療に関する記事では、誤解をまねく内容や誤った情報が含まれていることも少なくありません。
松澤先生が指摘する美容・再生医療の記事でありがちな間違いは以下の6つです。
- 過度な期待を煽る内容
- 研究結果の過大評価
- 専門用語の誤用
- 物事の一側面しか伝えていない
- 未検証情報の採用
- 不明瞭なコンフリクト・オブ・インタレスト(利益相反)
それぞれの項目について、くわしく内容をご紹介していきます。
過度な期待を煽る内容
美容・再生医療の一部の記事では、研究結果を単純に解釈して、誤解をまねくような見出しや内容で表現されていることがあると、松澤先生は話します。とくに再生医療の分野では、まだ研究段階で信頼性の高い結果がでていない内容でも、読者に良く伝わるように過大に表現されてしまうことがあります。
具体的には、「永遠の10代」「あらゆる病気を治せる」など、研究段階の内容を過大評価して、広い範囲で応用できるかのような誤解をまねく表現を見かけることがあります。
研究段階のものについて情報発信をする際は、「将来的には○○が期待できる」「△△の可能性がある」など、断定的な表現は避け、現段階で明らかになっている内容を正しく伝えることが大切です。
研究結果の過大評価
小規模な研究の結果を過大評価して、確定的な証拠であるかのように扱う間違いも見受けられます。とくに再生医療に関する研究は、基礎研究から動物研究、人間を対象とした臨床試験までさまざまな段階があります。
これらの段階の違いが明確に表現されないと、マウスを対象とした研究の成功が人間でも直接適用ができるかのように伝わることもあるのです。
研究結果の安全性や有効性を無視した情報の提供につながるため、現在はどの研究段階であるのかを明記して、研究結果を過大に評価しないよう注意が必要です。
専門用語の誤用
医療の専門用語は非常に難しく、コンテンツをつくる際に頭を悩ませている、という方も多いかもしれません。専門用語は正確に使用する必要があるものの、一部の記事では誤って使用しているケースもあります。
インターネットで調べた情報だけでは間違いが含まれていることもあるので、論文や医学雑誌、医学書籍から正しい表現を引用したりすると良いでしょう。ただしその分野に精通していないと、正しい情報を取捨選択すること自体が非常に難しいため、そういった場合は医師監修などで専門家にチェックしてもらうことも検討してみましょう。
物事の一側面しか伝えていない
コンテンツのなかには特定の治療法や研究結果だけを強調して、その他の研究や意見を無視している表現になっているものもあります。
通常、新しい治療法の開発をする際は、研究結果に偏りが出ないようにするために、いくつかの研究をおこないます。そのため、その最初の研究結果だけを見て「○○という治療法には△△という効果がある」と言い切ってしまうのは少し危険かもしれません。
企業のマーケティング目的でコンテンツを作成する場合など、内容を良く伝えたいがために、特定の研究結果のみをピックアップして情報を広めてしまうこともあるかもしれません。しかしこういった情報発信の仕方は、読者がその話題に関して偏った視点を持つことにもつながります。
副作用やリスクなどマイナス面も記載したり、必要に応じて注釈をつけたり、できるだけ読者に誤解を与えない表現を心がけましょう。
未検証情報の採用
インターネットやSNS上で広がるうわさや、未検証の医療・健康情報を十分な検証をせずに記事にする間違いも多くみられます。
たとえば、再生医療の分野では、2023年に幹細胞培養上清液を使った死亡事例が報告され、インターネットやSNSを中心に大きな話題となりました。この時、一部のメディアでは幹細胞培養上清液そのものが危ないものだと誤解を与えるような情報の発信が行われ、それを見た多くの方に不安を与えることになりました。
しかしこの死亡事例においては、実際は製剤が原因ではなく、それを取り扱うクリニック側に原因があったことが分かっています。
このように、未検証の情報をインターネット上のうわさだけを鵜呑みにして情報発信をすると、読者に誤った認識を植え付け、不安を煽ることになってしまうので十分注意しましょう。
未検証の情報を使用しないためには、一次情報を収集すること、取材をして正しい情報を確かめること、そして自分たちで確かめきれないことは医師監修などでしっかりと専門家の意見を聞くことが重要です。
不明瞭なコンフリクト・オブ・インタレスト(利益相反)
コンフリクト・オブ・インタレストとは、日本語では利益相反といい、研究者や専門家が何らかの企業や製品と金銭的な関わりを持つことを意味します。医療情報のなかには、コンフリクト・オブ・インタレストによって提供される内容もあるため、取り扱いには注意が必要です。
コンフリクト・オブ・インタレストに関わる研究や意見は、資金提供をする企業側の意向にそって内容が偏っている可能性もあります。これらの問題を避けるためには、情報の出典を確認し、複数の信頼できる情報源を参照することが重要になります。
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美容・再生医療について患者さんが本当に知りたいことは?
読者の悩みを解決する美容・再生医療のコンテンツをつくるためには、患者さんの求めている内容を的確にとらえることが重要です。本セミナーでは、現役の医師しか知らない実際の患者さんの声を、松澤先生に詳しく教えてもらいました。
美容医療に関するよくある質問
美容医療について松澤先生がよく質問される内容は以下になります。
- 治療法の種類と効果
- 治療のリスクと副作用
- 治療の費用
- 治療の適用条件
- 治療プロセスとダウンタイム
- 治療の成功事例
美容医療の診察では、松澤先生は患者さんが事前のリサーチで十分に理解できなかった内容について質問されることが多いようです。
また美容医療を希望される患者さんは、「インターネットでみた〇〇という治療を行いたい」とクリニックに訪れる方も多いのですが、実際にはその治療法はその患者さんには適していない、というケースもよくあるそうです。
美容医療に関する記事制作をする際には、上記で挙げたような患者さんのニーズを的確にとらえ、読者の悩みを解決するコンテンツをつくっていくことが重要です。
再生医療に関するよくある質問
次に、再生医療について松澤先生がよく質問される内容について教えていただきました。再生医療に関するよくある質問は以下のとおりです。
- 製剤の有効性や安全性、リスク
- 治療の有効性や安全性
- 自分にあった治療
- 治療で期待できる効果とその持続期間
- 治療に関するリスクや副作用
- 治療後のケアとフォローアップ
再生医療を希望される患者さんは、製剤や治療の有効性や安全性、科学的な根拠、研究の結果など、非常に深い知識まで知りたがる傾向にあると、松澤先生は話します。
美容医療と異なり、希望する治療法について質問されることよりも、自分にあった最適な治療法が何か相談されることが多いとのことです。
また、機器や製剤が生産されている国や会社名、自費診療の料金についても問われることもあります。コンテンツを作成する際は、これらのニーズを正確に追求していくことで、注目が集まる記事が書けるかもしれません。
美容・再生医療、最新のトレンドは?
次に、最新の美容・再生医療のトレンドについても松澤先生に教えていただきました。これからどんなテーマのコンテンツを作っていくか悩んでいるという方は、ぜひ参考にしてみてください。
美容・再生医療でお客様が特に気になっているジャンルは以下の5つです。
- しわ・たるみ治療
- 目の下のクマ
- 毛穴治療
- アンチエイジング
- 薄毛治療
上記で挙げたような治療は美容医療(とくに美容皮膚科)においては王道といわれるようなものばかりですが、これらは実際にクリニックでも多くの患者さんからご相談をいただくジャンルだそうです。
また、これから流行りそうな美容・再生医療のジャンルは以下の4つです。
- NAD治療
- エクソソーム再生医療
- 包茎治療
- 婦人科形成
特にNAD治療やエクソソーム再生医療は現段階で研究が進み、期待が高まりつつある分野となっています。NAD治療とエクソソーム再生医療について詳しく解説していきましょう。
NAD治療
NAD治療とは、イギリスで生まれた若返り効果が期待できるアンチエイジング療法で、今後日本でも広まっていくことが期待されています。
NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)は、健康な体を保つために、私たちの身体に存在している物質です。しかし、10代後半をピークに徐々に減少していき、40代にはピーク時の約半分にまで低下してしまうといわれています。
健康な体を維持するために、NAD+を点滴で補充することで、主に以下の効果を発揮させます。
- サーチュイン遺伝子(人間の老化や寿命に深く関わっている遺伝子)を活性化させ、細胞の老化を抑える
- 細胞内にあるミトコンドリアのはたらきを活性化させる
これらの作用で肌細胞や体力、疲労などが改善され、若返り効果が期待できるようです。しかし、若者への投与はがんの発症につながる可能性があるため、一般的に30代後半からの治療が推奨されています。
エクソソーム再生医療
エクソソームとは各器官の細胞から分泌される、細胞同士が直接会話するための手紙のような物質のことです。
近年、このエクソソームを用いた再生医療の研究が進んでおり、医療現場でも期待が広まっています。エクソソームを各細胞に注入することでさまざまな効果をもたらすことが期待されています。
海外の研究によると、肝臓障害やうつ病、認知症などの発症前にエクソソームを投与すると、これらの病気を予防する可能性があるといわれています。
また、エクソソーム再生治療はNAD治療とは異なり、若い人でも行える可能性があり、今後日本でも注目を集める治療になるのでは、と松澤先生は話しました。
質疑応答
本セミナーでは事前に参加者の方から集めた質問について、松澤先生にご回答いただきました。
Q.新しい医療機器、薬剤の情報入手の方法はどうしたら良いですか?
A.学術雑誌や医療機器・薬剤メーカーの公式ウェブサイト、医療展示会、Pubmed(世界中の医学雑誌などに掲載された文献を検索・閲覧できるデータベース)などから最新の情報を集めると良いです。
各学会は医師や看護師などの医療従事者でなくても登録が可能なことが多く、登録すると最新の雑誌が定期的に送られてきます。また、各学会の学術大会で開催されている医療展示会でも各企業から情報を集められるので、こういったところから最新の情報を入手するという方法もあります。
Q.カウンセラーなどチーム力をあげるために心がけていることは何ですか?
A.チーム力を上げるために特に大切にしていることは、初心者スタッフのコミュニケーションスキルの向上とカウンセラー同士の情報共有です。
初心者スタッフは経験豊富のカウンセラーから指導を受け、コミュニケーションスキルの向上に努めてもらっています。
また、カウンセラー同士で患者さんの情報を共有することで、業務の円滑化にもつながると考えています。
Q.食事では何をどれだけ食べたら美肌に効果がありますか?
A.美肌をつくりたいのであれば、さまざまな食べ物をバランス良く食べることが大切です。
特に、ビタミンやオメガ3脂肪酸、亜鉛、セレンなどは肌の健康に良いので積極的に摂りましょう。また、サプリメントより食事から栄養素を摂る方が効果があります。
Q.食事摂取基準で言われている量で肌の健康は保てますか?
A.食事摂取基準で示されている栄養素の量を摂取すれば肌の健康状態は保てますが、美肌の達成にはつながりにくいです。
美肌を目指したければ、40代以降にNAD治療をおこなうとより効果が得られるかもしれません。
Q.5〜10年後の日本における化粧品、美容医療、健康管理などを含めたビューティ&ウェルネスの変化・進化を、松澤先生はどのように考えていますか?
A.5〜10年後の日本ではAIやセルフケア化、予防医学の進化が進みそうです。
AIが進化すれば、さまざまなデータを使ってその人の肌状態にあった化粧品が簡単につくれるかもしれません。さらに、オンライン診療やバーチャル体験が増えていくことで、医師の診療や処方が必要になる場面も少なくなりそうです。
また、予防医の動きが今後も広まっていくと肌トラブルに対する治療よりも、肌トラブルがでる前の予防の動きが広まるかもしれません。
Q.医師監修に関わる松澤先生のアイデアとして、化粧品の範疇で(医薬部外品ではなく)保湿をイメージさせる表現可能な文言は何ですか?
A.「深層保湿」「水分補給」「ハイドレーションケア」「うるおいヴェール」「みずみずしい肌潤い成分配合」「ソフトモイスチャー」「潤いチャージ」「シルキーモイスト」「うるおい弾力」などです。
※必ず薬機法に該当するのか確認してからお使いください
まとめ
本セミナーでは200記事以上の医師監修に関わる松澤先生に、さまざまな観点から美容に関する情報発信の注意点とニーズについてお話しいただきました。
改めて、美容・再生医療のコンテンツ作成のときには以下に気をつけるようにしましょう。
- 現段階の研究結果を的確に把握し、過大な表現を行わないようにする
- 専門用語を誤用しないためにも、専門家のチェックを入れると良い
- 未検証の情報やコンフリクト・オブ・インタレスト(利益相反)に関わる研究結果の扱いにも気をつける
- 美容・再生医療のそれぞれにおいて、患者さんが本当に知りたい内容を追求する
- 美容・再生医療の最新のトレンドを知っておく(特にNAD治療やエクソソーム再生医療は今後流行る可能性がある)
より信頼性の高い美容・再生医療の情報を発信するためにも、専門医によるチェック(医師監修)があると安心できるでしょう。
メディコレでは各コンテンツのニーズに最適な専門医をキャスティングし、専門家の知見と信頼を提供いたします。
情報発信のときの医師監修にお悩みの方はぜひお気軽にお問い合わせください。