男性にも更年期障害があるって本当?泌尿器科医が解説!

2023.09.15

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執筆医師:平澤 陽介(東京医科大学病院)
北海道大学医学部医学科卒。日本泌尿器科学会専門医/指導医・日本内分泌学会専門医などの資格を保有。

「更年期障害」というと女性特有の疾患だと思っている方もいるかもしれませんが、実は男性にも更年期障害が起こることが分かっています。

男性の更年期障害とは一体どのようなものでしょうか。またどんな人がなりやすいのでしょうか。

そんな疑問を解決するため、今回は泌尿器科医の平澤 陽介先生に男性更年期障害について、詳しく教えていただきます。

男性更年期障害とは

更年期障害は女性の病気、そういった先入観をお待ちでないでしょうか?実は男性も女性と同様に更年期障害(LOH症候群)が起こります。

これは主に①加齢と②ストレスにより男性ホルモンが減少することで引き起こされます

下図1をみてください。男性は20歳をピークとして男性ホルモンは減少を始め、40歳になると明確に減少していきます。

女性の更年期障害は女性ホルモンの変動が大きいため、初期は症状が顕著にでるため社会での認知度も高いですが、閉経後5年ほどで症状が落ち着くことが多いです。その一方で、男性ホルモンは40歳からジリジリと加齢に反比例してゆっくりと減少し続けるため、期間に終わりがありません。

社会の認知度も低いため、自分が男性更年期障害と自覚がないまま歳を重ねていくことも多く、ある意味で女性の更年期障害よりもタチが悪いとも言えます。

男性更年期障害の原因は

前述のとおり、男性は加齢に伴い自然と男性ホルモンが減少していきます。

そこに重度のストレスや環境の変化などで、血液中の男性ホルモン(テストステロン)が急激に減少することが引き金となり、男性更年期障害の症状が顕著に出現することが多いです。

男性ホルモンを調節する脳の視床下部は、同時に自律神経の中枢でもあります。男性ホルモンの減少が急激だと自律神経のバランスを崩して、心身に様々な不調が現れます。

また、重度のストレスや環境の変化がない場合でも、加齢とともに徐々に男性ホルモンは低下していくため、本人も自覚ができない程度の軽度の症状が少しずつ出てくることもあります

この場合は、男性更年期障害(LOH症候群)の症状であるにも関わらず、他の病気であると診断されてしまうこともあります。

男性更年期障害(LOH症候群)は40歳代以降のいわゆる働き盛り世代から目立ち始めますが、ホルモンが低下する程度は個人差があるため、60歳代や、仕事を引退した70歳代になってから症状が前面に出てくることもあります。

男性更年期障害はどんな人がなりやすいか?

男性更年期障害にかかりやすい男性は、几帳面でまじめ、完璧主義者、あるいは運動不足の人に比較的多くみられる傾向にあります。つまり日本人に比較的多いタイプの性格でなりやすいといえるでしょう。

男性ホルモンが明確に減少する時期は40歳を超えてから、と前述しましたが、ちょうどその時期に仕事での責任が大きくなったり、子供ができて育児が大変だったり、家のローン返済が重く感じたり、身内の不幸があったり、男性にとっては試練の時期なのかもしれません。

つまり生理的な男性ホルモンの減少に合わせるようにストレスや環境の変化といった更年期障害になる引き金がいくつも男性に襲い掛かるリスクがある時期なのです。

“ミッドクライシス”という中年の危機(中年期の心の葛藤)を示す造語も広まりつつありますが、男性の場合はミッドクライシスと男性更年期障害は隣り合わせの病気と認識していた方がいいでしょう。この時期に、ほとんどの男性が大なり小なり大変に感じています。自分だけではないので安心してください。

まとめ

今回は泌尿器科医の平澤 陽介先生に男性更年期障害について教えていただきました。

40歳頃から男性ホルモンが減少してくることにあわせて、ストレスや環境の変化などが引き金となり男性更年期障害の症状があらわれることがあります。

この記事を読んで、もしかして自分も、と思い当たることがあれば、お近くの泌尿器科を受診して相談してみてください。