メディコレNEWS|【医師監修】頭痛に効く痛み止めは?正しい選び方
監修医師:郷 正憲(徳島赤十字病院)
保有免許・資格は日本麻酔科学会専門医、ICLSコースディレクター、JB-POT。主な著書は『看護師と研修医のための全身管理の本』。
日常生活にも支障をきたす辛い頭痛。人によっては月に何度も頭痛が起こり、その度に市販薬で対処しているという方も多いでしょう。
そもそも頭痛はなぜ起こるのでしょうか?また辛い頭痛の症状に効く痛み止めはどれかご存じでしょうか?
そんな疑問を解決するため、今回は麻酔科医の郷 正憲先生に「頭痛に効く痛み止め」について詳しく教えていただきます。
頭痛とは
ある調査によると、日本人が病院を受診した理由となる症状で最も多かったのは腰痛でした。それに引き続き肩こりや風邪症状などが並びますが、女性では第五位に頭痛がランクインしています。
薬局で薬を買うこともできるのに病院を受診するという事は、それだけ薬でも抑えきれないほどの頭痛に悩む人が多いという事でしょう。では、頭痛はなぜ起こってくるのでしょうか。
頭痛の分類
一口に頭痛といっても、その原因は多岐にわたります。
脳が実際に何らかの異常を起こしていたみを感じるもの、脳が「いたみがある」と勘違いしているだけで実際には特に異常がないもの、脳以外の原因で頭が痛いと感じるもの、さらには痛み止めを飲むことによって頭痛が起こってくるものなど、さまざまです。
このように頭痛は非常に複雑で、それぞれに対する治療法も異なります。
頭痛の診療については、「頭痛診療ガイドライン」というものが日本頭痛学会から提唱されています。最新のものは2021年に発表されたもので、これは2018年に国際頭痛学会が発表した国際頭痛分類に基づいて診断、治療を行うよう整理されたガイドラインです。
このガイドラインでは、頭痛の原因について、まず3種類に分けています。
1つ目が一次性頭痛というものです。これは、脳や頭の周りの何らかの異常によって頭痛が起こっているものです。片頭痛や緊張性頭痛、三叉神経痛、あるいは薬物乱用性頭痛がこの一次性頭痛に該当します。一次性頭痛の特徴としては、簡単に言えば「頭痛持ちの頭痛」です。常に、あるいは時々頭痛が起こり、暫く立つと収まると言う事を繰り返していると考えると良いでしょう。
2つ目が、二次性頭痛です。二次性頭痛は何らかの病気が他にあり、その病気のせいで頭痛が起こっているものと考えましょう。具体的には頭部外傷による頭痛や脳血管障害(脳出血やくも膜下出血など)、感染症による頭痛、その他全身状態の異常による頭痛などが該当します。このような頭痛の場合、非常に緊急性が高いものが多いですから、痛み止めで様子を見てはならず、すぐに根本的な治療をしなければなりません。
3つ目は有痛性脳神経ニューロパチー、他の顔面痛およびその他の頭痛です。これは非常に専門的で複雑ですので、あまり考えなくて良いでしょう。
この中でも、いわゆる「頭痛持ちの頭痛」である、一次性頭痛について掘り下げていきましょう。
片頭痛
片頭痛とはその名の通り、こめかみから側頭部にかけてズキンズキンと脈打つような痛みを感じる頭痛です。20代から40代頃の女性に多くみられます。
発作は1ヶ月に1回程度起こり、頭痛だけではなく光や音に対して過敏になったり、吐き気を催すといった特徴がみられます。
また片頭痛の特徴として、前兆症状を伴う場合があることが挙げられます。これは「閃輝暗点(せんきあんてん)」とよばれるもので、ギザギザした光のようなものが視野にちらつきます。
片頭痛という名の通り、最初は片側ですが、だんだんと両側にいたみが広がることが多く、頭痛の強さ、合併症の多さなどによって日常生活もままならないほどとなることも稀ではありません。
原因は様々提唱されていますが、いまだに確定したものはありません。
治療としては、発作時には一般的な治療薬の他、トリプタン製剤とよばれる薬剤が使用されます。また、発作が起こらないように予防薬が使用されることも多いです。
緊張型頭痛
緊張型頭痛とは、筋緊張性頭痛とも呼ばれる頭痛です。その名の通り、筋肉が緊張して張ってくることで起こってくる頭痛です。肩こりからくる頭痛とも説明されるものです。
症状としては、後頭部を中心として頭を締め付けるような頭痛や頭重感などがあります。また、緊張型頭痛では肩こりがあるケースがほとんどです。
緊張型頭痛の機序について説明しましょう。原因となるのは僧帽筋という筋肉です。この筋肉は、背中に広く菱形に広がる筋肉です。肩甲骨の外側から、広い範囲の背骨につながっています。下は腰椎の辺りまで広がっていますが、上の方は後頭部までつながっています。
僧帽筋の中でも肩甲骨から後頭部まで広がっている部分が、長時間にわたって収縮した状態を維持させられることで固くこってしまうのが肩こりです。デスクワークやスマホの使用を長い期間続けることで肩こりは起こってきます。
肩こりが起こると筋肉は軽度収縮した状態でかたまり、筋肉が付着している部分を引っ張り続けます。そのため、肩こりがひどくなると後頭部辺りがずっと引っ張られた状態となってしまい、いたみを生じてきます。最初は局所的ないたみですが、肩こりが継続してしまうと頭全体がいたみを感じるようになり、頭痛を自覚するようになります。
原因から分かるように、緊張性頭痛の特徴としては肩を動かす事でいたみが軽減したり、増悪したりするところにあります。また、後頭部の筋肉の付着部分を圧迫するといたみを感じる事も多くあります。基本的には頭痛のみですが、いたみが非常に強いと吐き気を感じることもあります。
治療としては痛み止めを飲みながら、ストレッチやマッサージをするのが効果的です。
三叉神経痛
三叉神経というのは、顔面の感覚を伝える神経です。頭蓋骨の中を通って、脳に直接神経線維が入っていきます。名前の通り、根元で3本に分かれて、それぞれが顔面の各部分を担当して感覚を伝えています。三叉神経は左右にありますから、顔面を6つに分割して感覚を伝えているのです。第一枝は、眼より上の眉毛、おでこ辺りを担当します。第二枝は眼から下、口より上です。第三枝は口から下、顎の辺りを担当します。
三叉神経痛というのはその三叉神経の領域にいたみを感じる病気です。多くの場合、三叉神経の根元の辺りで血管が三叉神経に接しており、神経が圧迫されることでいたみを感じます。血管に圧迫されますから、血管の拍動に合わせていたみも拍動性に変化する事もあります。
血管が神経の根元をしたから押す事が多いため、第二枝や第三枝の領域にいたみを感じる事があります。
また、神経の過敏性が亢進している事が多いため、顔を洗ったり、くしゃみをしたりと何らかの刺激が顔面にかかったときに症状が出ることも多いという特徴があります。
三叉神経痛は神経の痛みです。ですので、一般的な痛み止めはなかなか効果がありません。神経の痛みに特化した痛み止めが使用されることが多いのですが、それでも効果が無い場合は手術で血管が神経を圧迫しないようにします。
薬剤誘発性頭痛
薬剤誘発性頭痛は、一次性頭痛の中で最もやっかいな頭痛とも言われています。頭痛があるからと痛み止めを内服しすぎた際に起こってくる頭痛です。突然起こってくるわけではなく、前述の片頭痛や緊張性頭痛で頭痛薬を内服し続けた結果に起こってくる事がほとんどです。
3ヶ月以上頭痛が継続し、なおかつ1ヶ月のうち半分以上の日で頭痛を感じている場合、半数以上がこの薬剤誘発性頭痛と言われています。
この頭痛のやっかいなことは、痛み止めを飲んだ後には一時的にいたみが改善する事があることにあります。そのため、痛み止めを飲むのをなかなかやめられず、更にいたみが強くなってしまうという悪循環に陥ってしまうのです。
しかし、一時的に痛み止めの使用を我慢するとゆっくりといたみが改善してくることが多く、この経過で診断がつけられます。
頭痛に効く痛み止めはどれ?
薬局に行くと多くの薬が頭痛薬として売られています。たくさんの種類があって選べない、と思われるかもしれませんが、実は市販されている頭痛薬は大きく分けて「NSAIDs」か「アセトアミノフェン」の二種類しかありません。
それぞれどのような特徴があるのか、そしてどのように頭痛薬を選んでいくのがいいのかを説明しましょう。
NSAIDs(ロキソプロフェン、イブプロフェンなど)
NSAIDsは「エヌセイズ」と読みます。非ステロイド性抗炎症薬の略で、その名の通り炎症を抑えることで痛みを抑えてくれます。頭痛領域では片頭痛や緊張性頭痛など、代表的な頭痛は概ね炎症が関わっているため、よく使用されます。
市販の頭痛薬も、ほとんどはイブプロフェンを中心とした配合になっています。近年、医師の診察によって処方されるのみであったロキソプロフェンが市販可能になり、ロキソニンの商品名で販売されるようになりました。
痛み止めとしては非常に切れ味のよい効果を実感できるものです。内服して10分程度で効果を実感できることもあり、痛くなったらすぐ内服、といった使い方ができます。
しかし一方で、胃粘膜障害や腎障害といった副作用がありますから、特に高齢者では連用を避けた方がいいという欠点もあります。
アセトアミノフェン
アセトアミノフェンは、一部の頭痛薬や鎮痛薬の主成分として使用されています。特に子供用のものとして販売されている場合や、副作用の少ないものとして販売されている場合が多くあります。
アセトアミノフェンは炎症を抑える作用も少しありますが、それに加えて脳や脊髄の様々な場所に作用していたみを感じにくくしてくれます。
また、アセトアミノフェンは非常にありがたいことに副作用がほとんどありません。大量内服で肝障害が起こるとは言われていますが、病院で処方される最大容量の倍を内服しても肝障害は起こらないとされているため、非常に安全性が高いです。
一見、非常に便利そうな薬ですが、欠点もあります。
それは、ある一定以上の血中濃度を維持しなければいたみをあまり抑えてくれないという事です。内服してから血中濃度が上昇してくるまで時間がかかることもあり、飲んですぐには鎮痛効果を発揮してくれません。また、少量を内服すると効果があまり感じられないという事もあります。
そのため、アセトアミノフェンを中心とした痛み止めを利用する場合は必要量を定期的に内服する事で血液中の濃度を一定に保つ飲み方が勧められます。
頭痛薬の選び方
では、どのようにして頭痛薬を選ぶと良いのでしょうか。
まずは、主要成分で頭痛薬を分類しましょう。基本的にはロキソプロフェンを主成分とするロキソニンや、一部のアセトアミノフェンを含有する製品を除くと、ほとんどはイブプロフェンです。
ですので、非常に頭痛が強い場合はロキソニンを選びましょう。
一方で、胃が痛い、腎臓が悪いなどNSAIDsを避けた方がよいと考えられる場合はアセトアミノフェンを主成分とした製品を選びましょう。そうでなければその他の商品でも大丈夫です。
その他の商品は、各メーカーが様々な商品を発売していますが、おなじ価格帯であればほとんど含有成分はおなじです。ですので、好きなメーカーを選び、あとは自分の症状の状態や予算に応じて製品を選ぶといいです。
予算がないのであればシンプルにイブプロフェンのみが配合されているような商品を選ぶと良いでしょう。一方で頭痛薬を飲むとすぐに胃が痛くなるような方は、胃に優しい成分を含有しているという商品を選ぶのが良いです。
頭痛で病院を受診する目安は?
頭痛のなかでも一次性頭痛であれば痛み止めで様子を見てかまわないのですが、痛み止めを使いすぎると薬剤誘発性頭痛を引き起こすことがあります。ですので、前述のように1ヶ月に半分以上頭痛薬を内服するような場合には病院を受診しましょう。
また、二次性頭痛の場合には非常に重篤な経過をたどることがあるため、すぐに病院を受診する事が勧められます。特に受診しなければならない症状として、以下の様な点に注意しましょう。
- 突然の頭痛である
- 今まで感じた事が無いほど痛い頭痛である
- 痛みの程度はそれほどでもないが、今までの頭痛と何かが違う
- 頭痛以外に症状がある(発熱、関節痛など)
- 痛み止めが全く効かない
- 首が硬くなり、顎を胸につける事ができない
このような症状の時には、病院を受診する必要があります。特に脳出血などの可能性もありますから、救急車での受診も検討する必要があります。
頭痛は非常に怖いものです。とにかく「何かおかしい」と思ったらすぐに病院を受診するようにしましょう。
メディコレNEWS編集部まとめ
今回は頭痛に効く痛み止めについて、麻酔科医の郷 正憲先生にお話しを伺いました。
薬局で売られている頭痛薬は非常にたくさんの種類がありますが、成分で分類すると大きくは「NSAIDs」か「アセトアミノフェン」の2種類に分けられます。
NSAIDsは辛い頭痛に対して早く良く効きますが、胃粘膜障害や腎障害といった副作用に注意する必要があります。一方アセトアミノフェンは、副作用は少ないものの、効果が出るまでに時間がかかることがあります。
自分自身の症状や体質にあわせて、適切な痛み止めを選ぶようにしましょう。
また頭痛以外の症状がある時や痛み止めが効かないほどの強い頭痛がある時など、いつもと違う症状があれば、すぐに病院を受診するようにしましょう。