我慢できない歯の痛みの対処法は?痛み止めを飲んでもいい?

2023.08.16

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監修医師:郷 正憲(徳島赤十字病院)
保有免許・資格は日本麻酔科学会専門医、ICLSコースディレクター、JB-POT。主な著書は『看護師と研修医のための全身管理の本』。

我慢できない歯の痛み。特に夜間や休日は、すぐに歯科にかかることもできずに辛い痛みをどうにかやり過ごす方法はないかと困っている方もいらっしゃるでしょう。

歯の痛みがある時は痛み止めを飲んでもいいのでしょうか?そして歯の痛みに効果的な痛み止めの選び方とは?

そんな疑問に答えるため、今回は麻酔科医の郷 正憲先生に「歯の痛みの対処法」について教えていただきます。

歯の痛みがある時は痛み止めを飲んでもいい?

つらい歯の痛みがあると、生活の質が非常に落ちます。意外かもしれませんが、そもそも歯は非常に敏感なものなのです。こう言うと、歯は固いのに敏感って本当なの?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、考えて見てください。細いものをかんだとしましょう。髪の毛一本だけでもかんだら気づきますよね。一方で、背中に髪の毛がついたとしましょう。くすぐったくて気づくこともあるでしょうが、髪の毛一本だけついただけでは気づかないことがほとんどです。

このように、様々な皮膚や他の場所では気づかないような微細な変化でも気づくほど、実は歯は敏感なのです。

そんな歯ですから、少しの異常でも強い痛みを感じてしまいます

虫歯はもちろん、歯周病や歯肉炎などの炎症性疾患、打撲などの外傷、稀ですが歯肉癌などの腫瘍性疾患など様々な病気で痛みは起こりますし、ストレスでかみしめる事が多いとそれだけで痛みを感じることもあります。

また、歯やその周囲の痛みではありませんが、三叉神経痛や心筋梗塞でも歯の痛みを訴える事もあり、歯が痛いという訴えから鑑別しなければならない疾患は非常に多岐にわたります

また、歯の痛みがあると痛みだけにとどまらず、様々な症状を引き起こします。口は食事にも呼吸にも携わるところです。そのため、歯が痛いと食事が十分にできず栄養の問題が出現したり、かむことが不十分で飲み込んでしまうことで胃腸の調子が悪くなってしまったりということもあります。

また、呼吸が浅くなってしまい、口呼吸にもなることがあるためにカゼを引きやすくなるなど種々の呼吸器の異常をきたすこともあるのです。

このように、歯の痛みというのは普通の痛み以上にしっかりと対応する事が求められるのです。

もちろん、原因は様々あり、放置すると重篤な結果になる事もあります。痛みはそもそも体が発する警戒信号です。ですので、痛みがあると言う時点で原因を探さなくてはなりませんが、すぐに受診ができない事も多いでしょう。また、受診したとしてもすぐに原因は分からない事もありますから、そのようなときには一時的な対応として痛み止めを飲むことは、痛みによる合併症を防ぐためにも重要と言えるでしょう。

もちろん、原因を治療するわけではありませんから、痛み止めを内服しても薬が切れると又痛くなってくることがほとんどです。あくまで痛み止めを内服するのは一時しのぎである事を忘れないようにしましょう。

歯の痛みに効く痛み止めはどれ?

では、歯が痛いときにはどのような痛み止めを内服すれば良いのでしょうか。

基本的に、歯やその周囲の痛みというのは「体性痛」と呼ばれる痛みです。

体性痛というのは、筋肉や骨、皮膚などの痛みとおなじで、痛みを検知するセンサーが刺激されることで感じる痛みです。痛みの特徴としては触ると痛い、刺すような痛みです。

体性痛に対しては、ロキソプロフェンやイブプロフェン、ボルタレンといった「NSAIDs」という名前で分類される鎮痛薬が効果的です。これらのNSAIDsは、炎症を抑えることで痛みを抑える薬です。

体性痛が起こっている場所では炎症が起こっています。炎症によって痛みを検知するセンサーが敏感になってしまうことで痛みを強く感じるのです。ですので、NSAIDsは炎症を抑えることでセンサーが敏感にならないようにし、痛みを感じにくいようにします。

そのため、歯が痛いときにはまずはNSAIDsを内服するといいでしょう。ほとんどの場合にはすぐに効果が出るはずです。

しかし一方で、歯の周囲以外に原因がある場合、例えば三叉神経痛や心筋梗塞などの場合、痛み止めの効果はあまりありません

このような場合には根本的な治療をしなければならないことがほとんどですので、病院を受診しましょう。とくに歯の痛み以外に息苦しさや倦怠感などもある場合には心筋梗塞を先ずは除外しなくてはなりませんから、救急病院を受診してください。

つらい歯の痛みがある時の応急処置の方法は?

歯が痛い場合には、まず痛み止めを飲むというのが選択肢でしょうが、他にも対処できることはないのでしょうか。

最も効果的で、早く効果が出るのは冷却です。

先ほど説明したように、歯の痛みのほとんどは炎症によります。炎症が起こると組織は熱を持ち、腫脹して更に炎症が強く引き起こされます。冷却することでこれらの炎症反応を抑えることで、痛みを少しでも緩和する事ができます。

また、体勢もある程度関与してきます

頭が低い場所にあると、血液の流れが頭に流れやすくなり、歯の周辺にも流れやすくなります。そうなると炎症や炎症による腫脹がひどくなり、痛みが更に悪化します。痛みでしんどくて横になりたいという事もあるかもしれませんが、なるべく頭を高めにして臥床することをお勧めします。

ただし、基本的には痛み止めを含めてこれらの対処は原因を治療しているわけではなく、あくまで何らかの原因でおこっている痛みを抑えているだけになります。基本的には根本治療をしなければ痛みは収まってきませんから、これらの対処をしながら早めに歯科を受診することをお勧めします。

メディコレNEWS編集部まとめ

今回は麻酔科医の郷 正憲先生に「歯の痛みの対処法」について教えていただきました。

我慢できない歯の痛みがある時は痛み止めを服用しても構いませんが、痛み止めで痛みを抑えることは一時しのぎに過ぎないということを理解しておきましょう。

また歯の痛みには、痛み止めの服用の他、患部の冷却や頭の位置を高くするなどの方法も効果的です。

いずれにせよ辛い歯の痛みがある場合は、できるだけ早めに歯科を受診するようにしましょう。