子どもの便秘はどう対処する?受診を検討する目安は?

2023.08.30

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執筆医師:武井 智昭(医療法人社団 柴健会 小谷クリニック)
慶應義塾大学医学部卒。日本プライマリケア学会専門医、日本アレルギー学会専門医、日本小児科学会専門医

お子さんが夜に急に腹痛を訴えて受診をする・・・。小児救急の腹痛の原因で最も多い原因は、実は普段の排便コントリールが悪い「便秘症」であります。大人でも便秘はつらいですが、小さいお子さんではこの腹痛がつらいため、多くのご両親が早く解消してあげたいと思っているでしょう。

そこで今回は小児科医の武井 智昭先生に「子どもの便秘の対処法」について教えていただきます。

子どもの便秘の基準は?

医学的には便秘とは「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」、「排便困難や腹部膨満感など症状を伴う便通異常」と学会ごとに異なる定義がされています。特に小さいお子さんでは、こうした排便コントロールが不十分ではあるために、ご両親や本人が便秘かどうかの判断が難しいです。

このため、簡単には排便の回数が3日以下、便が固くて排便時間が長い、血液が付着するなど、排便が生活に支障がある状態と考えるとよいでしょう。

こどもの場合も、成人と同様に腹痛やお腹の張りが症状としてみられます。また硬くなった便が少量となり、肛門が傷ついて便に血が混ざることがあります。

腹痛・お腹の張りがなくても、出てきた便が固いこと、排便の時間が長い、便をするときに苦しそう、おならの臭いが強い場合も便秘を疑ってよいでしょう。

子どもの便秘の原因

子どもの便秘の原因としては、主に「食事の影響」と「精神的な影響」が挙げられます。それぞれの原因について詳しくみていきましょう。

食事の影響

こどもの便秘の原因で最も多いのが、食事の影響です。便は食事で食べたもののうち、水分が吸収されて作られますので、食事内容によっては便秘になることもあります。特に水分の摂取不足、お菓子や肉類を多くとることで、便秘になりやすくなります。

この一方で食物繊維の摂取量が少ない場合にも腸管の運動が低下することにより便秘傾向となります。食事内容としてはニンジン、カボチャなどの緑黄色野菜、芋類の摂取不足により便秘が引き起こされることがあります。

精神的な影響

子どもの便秘は、精神的な影響が関与していることも少なくありません。特に2歳くらいからトイレットトレーニングを行う際に便秘になってしまう子どもがいます。

トイレに行くことが楽しくないと、トイレに対して恐怖感があったり、両親に怒られるなどということから、排便に対しての恐怖感があり便秘となることもあります。

このように精神的な影響を受けて、便秘になることがあります。精神的な影響で便秘になりやすい時期は、2~3歳のトイレトレーニングに加えて、幼稚園・保育園の入園、小学校の入学、転居など環境が変わった時が多いです。

子どもの一定数では精神的な影響により、便を我慢することにより、前述の便秘を疑う状態になります。

便秘で受診を検討する目安は?

前述の便秘の症状により腹痛、食欲低下があり、自宅や学校・園での生活に支障がでていると思った場合には、早い段階で小児科を受診したほうが、適切な薬や食事指導などにより早く症状の改善が可能となります。

小児科では、生活リズムや食事の摂取状況などを踏まえて、排便を促す薬のうち1~2剤が処方されることが多いです。明らかな腹痛が強い場合にはグリセリン浣腸でその場で便の排出を行う場合もありますので、医師の指示に従ってください。

自宅で対応可能なホームケア

便秘薬には市販のものもあります。便秘薬を投与するにあたっては、まずは他に消化管の病気がないか確認したほうがよいので、市販薬を使用する前には、まずは小児科を受診して指示を仰いでください

こどもの便秘の改善には、食生活や運動習慣など多角的な対応が必要であるため、ご両親などの家族の協力が必要であります。規則正しい生活、運動習慣、栄養バランスのとれた1日3食の食事内容を、時間も規則的にするようにこころがけてください。その中で、食事に関しては以下の点にとくに注目して対応してください。

食物繊維を多めに摂取する

便を柔らかくする作用がある水溶性食物繊維は、りんご、いちご、バナナなどの果物、ひじき、わかめ、ごぼうなどを摂取することを勧めます。

便のかさを増やす不水溶性食物繊維はほうれんそう、かぼちゃ、青菜類、いんげん豆などに含まれており、これらの食品を積極的に摂取してください。

そのままで摂取するのが難しい場合には、煮てスープにする方法もあります。またヨーグルト・プルーンにも整腸作用がありますので、デザートとして定期的に摂取をすることをおすすめします。

身体を動かす(運動する)

身体活動では全身の筋肉を使います。特に腹筋を使うことにより腸の働きも活発になるため、便秘の解消となります。近距離でもよいのでご両親と一緒に散歩したり、体操、遊びを通した身体活動を15分程度は行ってください。

まとめ

今回は小児科医の武井 智昭先生に「子どもの便秘の対処法」について教えていただきました。

便秘の改善は身体の発育や疾病予防(特に感染症)には有用であります。便秘が解消されると、腸内の細菌のバランスもとれますので、人間の免疫細胞の7割を占める腸内免疫も安定し、風邪などをひきにくくなり、アレルギーの発症も軽減されることが期待されております。

気になる症状があったり、生活に支障をきたすようなことがあれば、早めに小児科を受診するようにしましょう。