【医師執筆】自宅でできる呼吸リハビリの方法を解説

2023.08.31

  • LINE

執筆医師:松本 学(きだ呼吸器・リハビリクリニック)
兵庫医科大学医学部卒業。専門は呼吸器外科・内科・呼吸器リハビリテーション科。外科専門医・産業認定医などの資格を保有。

呼吸器の疾患を患っている方は、日常的に息切れや息苦しさといった症状に悩まされていることでしょう。

こういった症状を改善し、日常生活の活動をしやすくするために、呼吸リハビリテーションという手法が用いられています。
今回はきだ呼吸器・リハビリクリニック院長の松本 学先生に、自宅で簡単にできる呼吸リハビリの方法について詳しく教えていただきます。

呼吸リハビリテーションとは

呼吸器の病気を抱えた方の中には、日常生活で息切れを感じてしまう方もいます。また動くと息が上がってしまうため、外出や運動を控えている方もいます。

呼吸リハビリテーションとは可能な限り身体機能を回復あるいは維持し、生活が自立できるように支援していくためのリハビリテーションを指します。

具体的には肺気腫や喘息、肺炎、新型コロナウイルス後遺症などが原因で呼吸機能が低下している方や、肺の手術前後の方などが適応となります。

呼吸リハビリテーションの内容は大きく分けて2種類あります。
1つは呼吸機能や身体機能を鍛えるトレーニングであり、もう1つは息がしんどくならないように動く生活方法の改善です。

双方を合わせて行うことで日常生活における息苦しさを緩和することが目的であり、今回は自宅で行える呼吸リハビリテーションについて解説します。

呼吸機能や身体機能を鍛えるトレーニング

呼吸機能や身体機能を鍛えるトレーニングですが、その中で今回は腹式呼吸と肩甲骨回りの筋肉のストレッチ方法を解説します。

腹式呼吸

腹式呼吸とはお腹にある横隔膜を使用して行う呼吸方法で、胸で行う胸式呼吸と比べて大きく息を吸うことができます。大きく息を吸うことで体に取り入れる酸素の量を増やし息苦しさの緩和を目指します。

(動画提供:きだ呼吸器・リハビリクリニック)

実際の方法は、仰向けもしくは椅子に座りリラックスし、お腹に手を当てた姿勢から開始します。その姿勢からゆっくり5秒ほどかけて息を全て吐き出します。ここでは強く吐き出すのではなく、ゆっくりと時間をかけて吐き出すことが重要です。

しっかりと息を吐き出した後、3秒ほどかけてゆっくりと鼻から息を吸います。その際、お腹が膨らむことを手で確認しながらゆっくりと息を吸います。その後再び5秒ほどかけて息を吐き出し、この呼吸を数回繰り返し行います。

肩甲骨回りの筋肉のストレッチ

日常生活で息苦しさを感じていると肩で息をするようになります。首や肩甲骨回りの筋肉が硬くなっており、筋肉の硬さによりさらに息が吸いにくい状況になっている場合があります。

そのような方は首や肩甲骨周りの筋肉のストレッチを行うことが効果的です。

(動画提供:きだ呼吸器・リハビリクリニック)

首周りの筋肉をほぐすには、座った姿勢で左右に大きくゆっくりと首を回すことが効果的です。

また、肩甲骨回りの筋肉をほぐすには、肘を曲げ指先を肩に当てた姿勢から両肘で円を描きます。この時、肩を回すのではなく肘で大きな円を描くことで肩甲骨が動きやすくなり、周りの筋肉がほぐれていきます。

日常生活で意識したい3つの動き

日常生活には、息がしんどくなりやすい動きが3種類あります。それは①手を頭の上にあげる動き②前かがみになりお腹を圧迫する動き③掃除機をかけるなどの反復する動き、の3つの動作です。

これらの動作は、息を止めやすい動作のため、これらを行う際には息を吐きながら行うことが効果的です。

息を吸うことを意識すると肩に力が入りやすく呼吸のリズムが乱れやすいため、息を吐きながら動作を行うことが重要です。

また、重たい荷物を持つ際や階段を昇るなど力を入れる動作も息が止まりやすくなります。その時も息を吐きながら動作を行うことが効果的です。ぜひ一度お試しください。

まとめ

今回はきだ呼吸器・リハビリクリニック院長の松本 学先生に、自宅で簡単にできる呼吸リハビリの方法について教えていただきました。

呼吸リハビリテーションでは、ストレッチや筋トレ、有酸素運動、呼吸トレーニングや日常生活動作の練習などを組み合わせて、症状の改善を目指していきます。

辛い息切れ・息苦しさなどの症状にお悩みの方は、ぜひ呼吸器リハビリを行っているクリニックを受診してみることをおすすめします。