メディコレNEWS|【医師監修】こどもの気管支喘息を知ろう
執筆医師:武井 智昭(医療法人社団 柴健会 小谷クリニック)
慶應義塾大学医学部卒。日本プライマリケア学会専門医、日本アレルギー学会専門医、日本小児科学会専門医
生活環境やライフスタイルの変化により、様々なアレルギーの疾患を持つ患者さんが増加しております。
気管支喘息の患者も増加しておりますが、以前と比べて早期発見・早期治療ができるようになり、コントロールがしやすくなってきております。
今回は小児科医の武井 智昭先生に、こどもの気管支喘息について詳しく教えていただきます。
気管支喘息とは
気管支喘息は、呼吸をしたときに空気が通る「気管支」に、慢性的な炎症が起きて、風邪や寒冷・運動・情動をきっかけに発作的に呼吸困難と喘鳴を伴う疾患です。
小児喘息はアレルギー疾患の1つであるため、アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎など、他のアレルギー疾患があるお子さんはなりやすいです。
小児では、ハウスダストやダニのホコリが主なアレルゲンとされており、このほかにも犬・猫などのペットの毛やフケなども原因となります。
これに加えて、天候の変わり目となる季節(気温・気圧差)や風邪によって発作が起こります。
炎症がコントロールできず、発作を繰り返すと、前述の刺激にも反応しやすくなり、症状が慢性化し、成人になっても喘息が移行する場合があります。
ご両親が小さいときに気管支喘息があったり、アトピー性皮膚炎・花粉症などのアレルギー疾患があると、お子さんにも遺伝する傾向があります。また、RSウイルスにかかり重症化した後には、気管支の過敏性が生じて喘息になりやすいという傾向もあります。
気管支喘息の診断
気管支喘息の診断は主に繰り返す喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューする)、呼吸困難という症状経過によって診断されます。
血液検査は、原因となるアレルゲンの検索として、補助的な診断となります。その理由として、喘息の定義としては、「気道感染の有無にかかわらず、1週間以上の間隔をあけて、明らかに呼吸時の喘鳴が3回見られる」とされているためです。
2歳未満のお子さんでは誤嚥やRSウイルス感染に伴う細気管支炎と類似していること、気管の通り道が狭いために風邪を引くとゼーゼーすることが多いために診断の判断が難しい場合があります。その一方で、小児の喘息は3歳までに60~70%が発症して診断されますので、かかりつけの小児科でのフォローが重要となります。
2歳以上のお子さんの場合では、咳や呼吸困難の自覚症状やご両親がその様子を判断できるので比較的わかりやすいです。食物アレルギーによるアナフィラキシー(えびかに、くるみなどのナッツ類)などでの喘鳴かどうかがポイントとなります。
自宅でできるセルフチェック
子供が以下の項目にいくつか当てはまる場合、喘息の疑いがあります。セルフチェックや、病院の問診で医師に説明するときの参考にしてください。
- 風邪をひいたときにゼーゼー・ヒューヒューしやすい。
- 呼吸がぜこぜこしているが、熱はない
- 運動や興奮により咳が出やすい
- 夜間・冷たい風・煙で咳が出やすい
- アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎と診断されている
- 両親や兄弟に、気管支喘息の治療を受けている
気管支喘息発作について
気管支喘息発作は、風邪(ウイルス感染)をきっかけ、あるいは寒暖差・冷風・煙・ペットの毛などで発作が誘発されることが多いです。特に、発作は気温と気圧が低下する、雨などの夜間に生じる傾向が多いために、この時間帯には注意が必要となります。
また気管支喘息に類似した疾患としては、同様のメカニズムが喉頭(のど)に生じて、犬やアザラシが鳴くような咳が出る「クループ症候群」もあります。
気管支喘息発作が起きた際、全身の呼吸がつらそう、呼吸の回数が多い、咳で眠れないなどの生活に支障がある場合には、夜間でも受診をご検討ください。
発作の程度と特徴
気管支喘息の発作の程度は、主に軽度の発作・中等度の発作・大発作の3段階に分類されます。
それぞれの特徴についてみていきましょう。
軽度の発作
痰がらみの咳が発作的に続き、「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という喘鳴を聴取します。
生活にはほぼ支障はありませんが、夜間に眠れないお子さんもおります。
この段階では内服や吸入対応で改善していくことが多いです。
中等症の発作
中程度の発作では喘鳴が強くなり、肩をあげたり胸をへこませたり、全身を使った呼吸となります。呼吸回数も増加します。
この時点ではステロイドの内服あるいは注射、吸入が必要となり入院となる場合もあります。
大発作
前述の中等度の発作に加えて、くちびるが紫色となり(チアノーゼ)、横になることができないです。
至急、救急車を呼ぶか医療機関を受診してください。入院適応となります。このレベルになると命に危険を及ぼす可能性もあります。
気管支喘息の治療について
気管支喘息の治療は、薬物療法が基本となります。
発作を起こさないために長期管理薬(コントローラー)を使用しながら症状をコントロールし、発作が起きた場合には発作治療薬(リリーバー)を使用します。
長期管理薬(コントローラー)
小児喘息の基本的な病態は、慢性的な炎症であります。症状がなくても、一定期間「抗アレルギー薬(ロイコトリエン拮抗薬)」や「吸入ステロイド薬」などを使用することで、少しずつ気道の炎症状態を改善していきます。
また、自宅で発作が起きたときの対応の薬剤も処方してもらうと安心でしょう。
発作治療薬(リリーバー)
発作が生じた場合には、せまくなった気管支を拡げて症状を緩和する気管支拡張薬の吸入「β2刺激薬」を投与します。
これで改善がみられない場合には、ステロイドの注射が実施されます。
また症状に応じて、内服・気管支拡張薬などの内服薬、テープで貼るタイプの薬の処方もあります。中等症の発作以上であれば、入院を必要とする事が多いです。
まとめ
今回は小児科医の武井 智昭先生に、こどもの気管支喘息について教えていただきました。
小児の気管支喘息は、適切な治療で気管支の炎症がコントロールできていれば、成長とともに発作の頻度・症状が軽くなり、改善していくことが多いです。
軽症のうちに対応する早期発見・早期治療が重要であります。発作に対処するためにも、かかりつけのクリニックで継続的に診療をうけてください。