メディコレNEWS|【医師監修】こどものアトピー性皮膚炎とは

2023.08.30

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執筆医師:武井 智昭(医療法人社団 柴健会 小谷クリニック)
慶應義塾大学医学部卒。日本プライマリケア学会専門医、日本アレルギー学会専門医、日本小児科学会専門医

こどもの皮膚は水分を多く含みますが、デリケートであるため、汗や寒暖差などのちょっとした刺激で、肌の湿疹などのトラブルが起きやすいです。こどもの肌トラブルで多くみられるのが「アトピー性皮膚炎」です。

アトピー性皮膚炎は、皮膚の状態も赤く痒みがある湿疹であるため親御さんも心配になってしまうことでしょう。

今回は小児科医の武井 智昭先生に、こどものアトピー性皮膚炎について詳しく教えていただきます。

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎とは、皮膚のアレルギー反応が主原因となる炎症が現れます。原因は、特定のアレルギー物質のみならず、寒暖差や汗、身体の状況によって生じます。

アトピー性皮膚炎は、「増悪・寛解を繰り返す 痒(痒み)のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因(他のアレルギー疾患の家族歴など、アレルギーになりやすい傾向)を持つ」と定義されています。

アトピー性皮膚炎の特徴としては以下のようなことが挙げられます。

  • 強いかゆみがあること
  • アトピー性皮膚炎に特徴的な皮疹(湿疹)が、体の左右の同じような場所に出現
  • 乳児期では、2ヶ月以上発疹が持続すること

アトピー性皮膚炎の症状は乳児期であれば、頭や顔に始まり、体幹・手足に病変が拡大していきます。

2歳以降幼児期では、首や肘・膝・手首・足の関節などの曲げる方に湿疹ができ、コントロールが悪いと皮膚が硬くなりウロコの様になります。

アトピー性皮膚炎と乳児湿疹について

乳児期において、アトピー皮膚炎と鑑別が困難な皮膚トラブルに「乳児湿疹」があります。乳児湿疹とは、乳児期に生じた湿疹の総称であり、このうちの一部はアトピー性皮膚炎に移行していきます。

乳児のホルモンバランスは3ヶ月くらいまで変化するため、皮脂が詰まり、以後は乾燥によって生じることが乳児湿疹の主原因となります。

乳児湿疹は、頬・おでこなど顔に生じやすいです。湿疹の症状は身体にも拡大することが多く、お腹や背中など全身に広がることもあります。乳児湿疹は生後2週間を過ぎた頃から現れ始め、生後6ヶ月ころから1歳までには改善していくことが多いです。

アトピー性皮膚炎と乳児湿疹の発疹のパターンは似ているため、医師でもこの両者を判別することは困難であり、適切な外用薬を使用しながら経過をみていきます。このため、赤ちゃんに湿疹が現れた場合には、乳児湿疹・アトピー性皮膚炎の両者に共通する保湿やステロイド外用を含めたケアを行います。

受診は小児科・皮膚科どちらでもかまいせん。アレルギー科を併設していれば、より細かい対応が可能となります。

アトピー性皮膚炎の治療

アトピー性皮膚炎と診断されたら、スキンケアをしっかりと行うことが大切です。まずは汗や汚れなどをしっかりとシャワーで洗い流して、保湿や必要に応じたステロイド・免疫抑制剤の塗布を継続していきます。

同時にアレルギー物質となり得る、ホコリ・ダニなどへの環境整備として掃除を入念にする、ぬいぐるみを近づけないなどの対応を行います。アトピー性皮膚炎は、成長して年齢が高くなるにつれて、湿疹の頻度も減ってくることが多いとされておりますが、皮膚病変の重症度によります。

治療のゴールとしては、ステロイドや免疫抑制剤の使用がほとんどなく、保湿のみでコントロールできることを目標にすると、心理的な負担も減ると思います。

薬物療法

アトピー性皮膚炎の初期治療としては、ステロイドの外用が用いられます。

ご両親の中にはホルモン剤による副作用などを心配することもありますが、医師の指示に従い、適切な強さのステロイドを1日2回、その量などをしっかりと指導していただき外用すれば、症状の改善も見込まれます。

見た目の症状が改善しても、アトピー性皮膚炎の炎症は皮膚の奥(真皮)にありますので、外用はしばらく継続する事が多いです。これに加えて、近年では、皮膚の過剰な免疫反応・炎症を抑えて痒みを軽減するため、免疫抑制剤の外用剤が使用されるケースもあります。

ステロイド外用薬で効果が不十分である場合や、副作用が生じた場合、あるいは長期に維持する目的で免疫抑制剤が使用されることがあります。これらの外用剤は生後6ヶ月から使用が可能となります。

アトピー性皮膚炎のホームケア

アトピー性皮膚炎の治療の1つの柱として、前述の外用治療に加えて、自宅でのスキンケアが重要であります。しっかりと雑菌や汗などを洗い流して、おこさんの体を清潔な状態に保つようにしましょう。

シャンプーや石鹸のすすぎ残しをなくし、刺激が低いものに変更してください。また、アトピーの湿疹の部分を機械的にこするのではなく、叩くようにして真皮からのよごれを浮き出すように洗ってください。

入浴後ではタオルではこするのではなく、やさしくふきとってください。その上で保湿剤と外用薬のケアを入念にしてください。タオルも合成繊維ではなく、衣類も刺激が低い素材を選ぶと良いでしょう。また、汗・唾液などが刺激になりやすいため適宜、衣類の交換や拭き取りをしてあげると効果的であります。

まとめ

今回は小児科医の武井 智昭先生に、こどものアトピー性皮膚炎について詳しく教えていただきました。

アトピー性皮膚炎と診断された場合でも、適切な外用薬やスキンケアによって、その大半は改善していくことが多いです。

お子さんの皮膚状態が悪いと、親御さんはご不安に思われるでしょうが、長い目でみれば時間が解決する・・・そのように考えて、神経質になりすぎずにスキンケアなどの対応を継続することが重要です。