【医師執筆】こどもの肥満の問題と対策について

2023.09.05

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執筆医師:武井 智昭(医療法人社団 柴健会 小谷クリニック)
慶應義塾大学医学部卒。日本プライマリケア学会専門医、日本アレルギー学会専門医、日本小児科学会専門医

食事をしっかりととるようにしていたが、運動量が少ないために、お子さんのおなかが出てきた、保育園・幼稚園や学校で肥満を指摘された・・・など、肥満を心配する親御さんが多くなってきました。

肥満は外見の問題のみならず、将来の高血圧・高脂血症・糖尿病などの生活習慣病の発症の健康面にも影響があります。

今回は小児科医の武井 智昭先生に、こどもの肥満と対策について教えていただきます。

こどもの肥満とは

肥満とは、「脂肪組織が過剰に蓄積して、標準体重を基準として一定以上の体重が認める事」です。

文部科学省が実施した学校保健統計調査では、肥満傾向にある子供の割合は、この10年間でおおむね減少傾向ではあり男女ともに5~10%であります。

ただ、新型コロナウイルス流行により外出自粛や休校などで運動不足が懸念され、肥満と指摘される方は増加傾向という報告もあります。

肥満は早期にみられると、将来的にもそのまま肥満傾向が持続することがあります。このため、肥満は3歳以降の幼いうちからの対策により改善を行うことが重要であります。

単純性肥満と症候性肥満

小児の肥満の原因には、主に環境的要因と遺伝的要因による「単純型肥満」と、体の病気である「症候性肥満」に分けられます。

この2つの簡単な鑑別としては、単純型肥満であれば身長が伸びて体調に変わりがないこと、症候性肥満であれば身長の伸びも止まってしまい、皮膚の色素沈着などの病変、知的障害や運動障害の合併などがあります。

単純型肥満

小児の肥満のほとんどは、この単純型肥満に分類されます。単純型肥満の原因としては以下のようなことが挙げられます。

遺伝的要因

肥満は遺伝的な要素も高く、両親が肥満である場合、お子さんの70~80%は肥満になると報告されています

環境因子と食生活

ここ20年ほどでファーストフード・スナック菓子など高カロリー・高脂肪の食事が普及してきました。コンビニエンスストア、冷蔵庫、自動販売機などの普及で、自分の食べたいものが以前とくらべてすぐに食べることのできる環境が過食を招きます。

特に清涼飲料水の摂取量は明らかに増加しており、過剰な清涼飲料水摂取による糖尿病のリスクが上昇しております。

運動不足

こどもの教育を取り巻く環境が変化しました。ポータブルゲーム機の普及、パソコンやスマートフォンでの動画視聴に加えて、塾や習い事の増加による食生活に乱れなども含め、こども達が屋外で遊んで運動をする時間が減少しています。

症候性肥満

ごくまれに、体の疾患により肥満となる場合があります。

体重の増加はみられるが、身長の伸びが停止していることを成長曲線で確認をします。これに加えてお子さんの体つきや皮膚の状態を観察してください。低身長、知能障害、奇形などの症状を伴うことがあります。

こうした状態であれば、小児科を受診して適切な治療を行うことにより改善されていくことが多いです。症候性肥満の合併疾患として、クッシング症候群、脳腫瘍、先天異常などがみられます。

こどもの肥満はどんな問題がある?

小児の肥満が引き起こす問題についてみていきましょう。

身体的な問題

こどものうちに肥満が持続すると、動脈硬化が早期に進行します。

その結果として高血圧・高脂血症から2型糖尿病などの生活習慣病発症のリスクが高くなり、無治療の場合は若年で脳出血・脳梗塞、心筋梗塞などの重篤な疾患のリスクが高まります。2型糖尿病となる場合には、長期にわたる内服治療が必要となります。

また肥満傾向であると足・腰に過度な負荷がかかるため、骨折のリスク上昇など、整形外科的な疾患が生じることもあります。このため、疾病予防のためにも、小児のうちに肥満を解消しておくことが重要です。

生活面・心理面での問題

肥満傾向となると、外見をからかわれるなど、いじめの対象となる可能性があること、運動機能が他人と比べて劣る傾向があり自己肯定感が低下する可能性があります。

このため、心のケアという観点からも肥満を改善するような対策が必要であります。

こども肥満はどう対策する?

こどもの体は成長を続けているため、過度なダイエットは避けたほうがよいでしょう。基本としては成人同様、運動習慣・食事習慣などの生活習慣の見直しが基本となります。

まずは家庭で以下のことを心がけるようにしましょう。

  • 朝ご飯は欠かさない
  • 栄養バランスの良い食事をする。とくにタンパク質・食物繊維(野菜)をしっかりととる
  • 食事はゆっくり噛んで食べる
  • スナック菓子、ジャンクフード、清涼飲料水の摂取の制限を決める
  • 寝る前には間食を取らない
  • 運動をする習慣(外遊び)を週に2回程度

まとめ

今回は小児科医の武井 智昭先生に、こどもの肥満と対策について教えていただきました。こどもの肥満対策には、ご両親を含めた周囲の大人の協力が必要です。

「太っているから、おやつは禁止」と一方的に決めるのではなく、こどもの健康を考えて「大きくなってもいつまでも元気に暮らせるように」と、一緒に楽しく対策をしていくと効果的です。