【医師執筆】夏期に流行するヘルパンギーナとは、症状や注意点について解説

2023.08.30

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執筆医師:武井 智昭(医療法人社団 柴健会 小谷クリニック)
慶應義塾大学医学部卒。日本プライマリケア学会専門医、日本アレルギー学会専門医、日本小児科学会専門医

新型コロナウイルスの位置づけが5類に引き下げられた2023年の夏、小児科外来は過去にないレベルで感染症の患者さんが多数受診しております。

1つの感染症だけではなく、ヘルパンギーナに加えて、RSウイルス、アデノウイルス(プール熱)、急性胃腸炎、インフルエンザ・・・小児では少ないですが新型コロナウイルス感染の方もおります。

そこで今回は夏期に流行する感染症の一つ「ヘルパンギーナ」について、小児科医の武井 智昭先生に教えていただきます。

ヘルパンギーナとは

夏期に流行する3大感染症といえば、ヘルパンギーナに加えて、プール熱(アデノウイルス感染症・咽頭結膜熱)、手足口病があります。

ヘルパンギーナとはこの「夏風邪」の1つであり、エンテロウイルス属のコクサッキーウイルスの感染より年齢の低いお子さんにかかりやすいです。

患者の9割は5歳以下であり2歳未満のお子さんが多くを占めますが、成人もかかることがあります。日本では6月ころから感染がはじまり、7月から8月にかけて流行がピークとなります。

成人の場合では、過去に罹患していることから症状の発生頻度は低いです。その反面、免疫力が落ちているときには症状を発症し、無菌性髄膜炎などを引き起こすこともあり注意が必要です。

ヘルパンギーナと診断されたお子さんのケアをするとき、ご家族への感染も注意が必要となります。

ヘルパンギーナの症状・合併症

ヘルパンギーナの症状としては、突然に38℃以上の発熱を認めることが挙げられます。

見た目では発熱のみですが、小児科や耳鼻科で咽頭の様子を観察すると、喉の赤さに加えて、口の粘膜や咽頭の粘膜に水ぶくれがみられます。

咽頭の痛みによって、固い食物などが食べられない、水分をとると不機嫌となり痛がるということがあります。結果として尿が少ない、活気がない、手足が冷たくなるという脱水症状が起きて入院を必要となる場合もあります。
発熱はほとんどの方は1~2日、長くても3~4日ほどで改善していきます。

注意すべき合併症

お子さんでも、大人の方でも注意すべき合併症としては髄膜炎があります。

発熱に加えて首や頭が痛い、嘔気・嘔吐があるという場合には、速やかに受診が必要であります。

ただしヘルパンギーナの髄膜炎の場合は、予後が悪い細菌性髄膜炎と異なり、ほとんどの場合は後遺症を残さず改善していきますので、ご安心ください。

ヘルパンギーナと手足口病との違い

手足口病・ヘルパンギーナともにエンテロウイルス属による感染症であり、感染の好発時期や症状が類似するために、ヘルパンギーナと手足口病が混同されることがあります。この2つの違いは、具体的には手のひらや足の裏に水疱の様な発疹(水ぶくれ)ができるかどうかの症状の有無で、判断をします。

手足口病

  • 38度程度の発熱(熱がない例もある)
  • 口の中、手や足に水疱ができて、膝・肘にまで広がることがある

ヘルパンギーナ

  • 38度程度の発熱
  • 口の中に水疱ができるが、手足に水疱はできない

ヘルパンギーナの治療・予防

ヘルパンギーナの特効薬、ワクチンは現時点ではありません

このため、のどの痛みに対しての内服や発熱に対しての解熱剤の使用をして症状悪化を防ぎながら、自分の免疫で治していきます。

固い食物は痛みが強くなりやすいため、食事はスープ・ゼリー・ヨーグルトなど飲み込みやすいものにすると良いでしょう。

ヘルパンギーナの感染力は強い?

ヘルパンギーナの感染力は、通常の風邪と同じレベルではあります。

麻疹・風疹ほどの空気感染による強さはありませんが、咳・くしゃみに含まれるウイルスによって、集団生活をする場所から感染するリスクがあります。

ヘルパンギーナの感染力は、発熱してから解熱して24時間までが最も強くなります。このため、この期間では自宅での安静が必要となります。

また、解熱してからも2週間程度は、便からウイルスが排泄されております。このため、おむつを必要とするお子さんの場合、手袋・マスクなどの対応が必要となります。

ヘルパンギーナにかかったときの登園制限

ヘルパンギーナには、水痘・おたふく・麻疹・風疹のような登園制限はありません

このため、解熱して24時間が経過して、お子さんが、食事もとれて元気であることが、目安となります。念のため、髄膜炎の症状(発熱の再燃、頭痛、嘔吐、顔色不良)には注意をしてください。

まとめ

今回は小児科医の武井 智昭先生にヘルパンギーナについて教えていただきました。

ヘルパンギーナは夏風邪の代表格です。手足口病と違い、発熱や食事をとりたがらないという症状であり、発疹が出現しないので医療機関での診療が必要です。

口が痛いときに、アイス・ゼリー・ヨーグルト・スープ等、のどごしが良い物をとりながら脱水症状を予防してください。脱水症状や髄膜炎症状があれば入院を要する場合もありますので、すみやかに受診を検討してください。

また、成人にもかかることがありますので、こどもから感染しないように感染対策を十分に行うことが大切です。