【医師執筆】胃カメラで使う鎮静剤とは?メリットデメリットはある?

2023.09.21

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監修医師:郷 正憲(徳島赤十字病院)
保有免許・資格は日本麻酔科学会専門医、ICLSコースディレクター、JB-POT。主な著書は『看護師と研修医のための全身管理の本』。

胃カメラをする時に鎮静剤を使用する場合があります。

治療を行う場合など、非常に長い時間胃カメラをする場合には積極的に使用されますし、その他にも胃カメラ自体に恐怖心があってなかなか胃カメラができないという場合にも、使用が検討されます。

では、胃カメラで使う鎮静剤とは一体どのようなものなのでしょうか。また使用することにメリット・デメリットはあるのでしょうか。

そんな疑問を解決するため、今回は麻酔科医の郷 正憲先生に「胃カメラで使う鎮静剤」について詳しく教えていただきます。

胃カメラで使う鎮静剤とは

胃カメラの時に使われる鎮静薬として多く使われるのが「プロポフォール」というものです。

プロポフォールは全身麻酔の際にも使われる非常に使いやすい鎮静薬で、一度に多く投与すれば麻酔ががっつりかかりますし、持続的にゆっくり流せば軽く眠ったような状態を維持することができるので、鎮静に重宝されます。

欠点としては血圧がやや下がってしまいやすいことです。とはいえ胃カメラをする程度の際に軽く眠らせるぐらいであればそこまで血圧が下がることはありませんので問題はありません。

他にある欠点としては点滴からプロポフォールを使用しますが点滴が入っている場所に少し痛みを生じるという欠点もあります。この痛みを避けるために少量ずつ使用するというのがポイントになってきます。

他に使用される鎮静剤としては「ミダゾラム」があります。

ミダゾラムは小児にも使用できる鎮静剤で、血管痛などもなく使用される側にとっては非常に気持ちのいい鎮静剤ではあります。

しかし量の調整が難しいという欠点があります。少し量を増やしすぎるとあっという間に呼吸抑制が起こってきて呼吸が止まってしまうこともありますし逆に少ないとすぐに目が覚めてしまうという欠点があるのでなかなか使いづらいのです。

最近使用されることが多い薬としては「デクスメデトミジン」という鎮静剤もあります。ただこの薬が非常に高価ですのであまり使っている病院はないと思われます。今後安くなってくることによって使用される頻度が増えてくるのではないかと考えています。

胃カメラで鎮静剤を使うメリットとデメリット

胃カメラで鎮静剤を利用することでゆっくりと落ち着いた状態で観察をすることができます

実際にカメラをする医師も患者さんをなだめながら大急ぎで観察をするよりもゆっくりとした状態でしっかりと見た方が見落としも少なく、良い結果が得られる可能性が高いのではないかと考えられます。

もちろん患者さん側としては負担が少なく寝た状態で観察をしてもらうことができるので体にとっては非常に楽な胃カメラとなるでしょう。

デメリットとしては薬が体内に入ることによって様々な副作用が出てくることです。

血圧が下がることはもちろんですが薬を代謝するために肝臓を利用されますから目が覚めた後に非常に強い倦怠感を感じることもあります。またアレルギーなど予期せぬ合併症が起こる可能性もありますので何でもかんでも鎮静剤を使用して胃カメラをした方がいいという風なことはなかなか言いづらいところです。

もちろん不安神経症などの病気によってなかなか胃カメラを受けられないという人にとっては非常に有効な治療法だと考えられます。ご自身の状況によって実施をしてくれる先生と相談した上で鎮静剤を使用して胃カメラをしてもらうといいでしょう。

まとめ

今回は麻酔科医の郷 正憲先生に「胃カメラで使う鎮静剤」について教えていただきました。

以前胃カメラをした際に辛い思いをしたという方や、胃カメラに強い恐怖心があるという方は、ぜひ鎮静剤を使った胃カメラを行っているクリニックを探してみてください。

ただし、鎮静剤はあくまで薬ですので、体内に入ることで少なからず副作用のリスクがあることも理解しておく必要があります。不安な点や疑問点があれば、担当の医師へ相談してみましょう。