【医師執筆】川崎病とは?症状や治療について解説
執筆医師:武井 智昭(医療法人社団 柴健会 小谷クリニック)
慶應義塾大学医学部卒。日本プライマリケア学会専門医、日本アレルギー学会専門医、日本小児科学会専門医
「川崎病」という病気はご存じでしょうか?あまり聞きなれない名前かもしれませんが、川崎病は、乳幼児での発熱では必ず鑑別が必要であること、患者数は近年では横ばいではありますが、川崎病には心臓に後遺症が生じる場合もあることを認識しておく必要があります。
今回は小児科医の武井 智昭先生に川崎病の症状や治療、後遺症について詳しく教えていただきます。
川崎病とは
川崎病は、ここ数年では1万人程度のお子さんが発症しているといわれています。この疾患を見つけたのは、すでに亡くなりましたが、川崎富作博士が発見して発表したことに由来して付けられた疾患です。
この疾患の原因に関しては、まだ判明しておりません。
ただし、何かのきっかとして小さな血管の炎症により全身の症状が出る事、また、その治療法や後遺症の管理は判明しております。
これまで、アデノウイルス(プール熱)やエルシニア菌感染(腸管)、EBウイルスなどの感染が契機という研究もされてきておりました。
このため、血液検査などで川崎病かどうかを判断する、特異的な内容はありません。
川崎病の特徴とは?
川崎病が発症する季節には特別な差はありません。川崎病はその中で1歳児が多く、そのほとんどは4歳以下のお子さんであります。
生後3か月で川崎病と診断される例もあります。このため、小さなこどもを持つ親としては、発疹を伴う発熱時には川崎病であるかもしれない・・・と注意するべき1つの疾患です。
川崎病の診断について
川崎病は、以下の症状が5つ以上、あるいは4つでも心臓超音波検査で心臓に炎症が生じている(冠動脈の炎症など)を確認した場合に診断がおります。
この一方で、発熱が軽度であったり、症状が3つなど、完全には診断に至らない「不全型」という分類もあります。
川崎病の診断基準は以下の通りです。
- 発熱(38℃以上。日数は現時点では問いませんが、以前は5日以上でした)
- 白目の充血
- 唇の腫れ・発赤、いちご舌
- 全身の発疹
- 手足の指のむくみ(治癒すると皮がむけます)
- 首のリンパ節の腫脹
さらに川崎病の特徴的な症状としてしては、左腕のBCG箇所が赤く腫れることが特徴的であります。
川崎病の後遺症
川崎病は、全身の小さな血管の炎症であるため、前述の症状が見られます。
この症状は無治療の場合では、10~14日程度で自然に改善することが多いです。
この一方で、発熱してから10日以内に解熱をして血管の炎症を改善しない場合などでは、心臓を栄養する冠動脈が拡張・瘤(こぶ)となる、心臓の重大な後遺症が残る場合があります。
この冠動脈の拡張は一過性であることも多いですが、瘤(こぶ)が生じて残ってしまうこともあります。冠動脈の瘤が生じると、心臓を栄養する血管が狭くなるために、狭心症・心筋梗塞などを引き起こすなどのリスクがあります。 この場合には、心臓のカテーテル治療などで毛管を再建することになります。また、心臓の後遺症により運動への制限を要する場合もあるため、川崎病は軽視できない疾患の1つであります。
川崎病の治療
川崎病と診断された場合は、自宅での治療は難しいため、1~2週間の入院が必要となります。
全身の血管の炎症を抑えるために、免疫グロブリン製剤の大量注射を24時間程度かけて実施します。これに加えて血栓予防や炎症抑制の目的でアスピリンを投与します。これらの治療法により、川崎病による死亡率は1%を切っております。
川崎病の多くはこの治療で改善することが多いですが、中には免疫グロブリンに反応しない例もあります。この場合には、副腎皮質ステロイドの大量投与、血漿交換、レミケードなどの免疫抑制剤などの投与も行われることもあります。
症状が安定してからも、5年ほどは冠動脈を含めた心臓の評価を定期的に行う必要があるため、定期通院が必要となります。冠動脈の炎症がほぼ落ち着いたと判断される時期まではアスピリンの内服は継続されます。
後遺症である冠状動脈瘤が生じた場合には、冠動脈を拡張させるためのカテーテル手術や外科的なバイパス手術により冠動脈の血流を維持する治療を必要となるケースもあります。
まとめ
今回は小児科医の武井 智昭先生に川崎病の症状や治療、後遺症について教えていただきました。
川崎病は1歳児での発症が多く、そのほとんどは4歳以下での発症です。
川崎病と診断された場合は、1~2週間の入院が必要となり、免疫グロブリン製剤などを用いた治療が行われます。また症状が安定してからも、5年程度は定期的に通院し、心臓の後遺症がないかをチェックしていく必要があります。 そのため、お子さんに発疹を伴う発熱があった際は、必ず小児科を受診し、医師の診断を受けるようにしましょう。