【医師執筆】思春期早発症とは?治療は必要?
執筆医師:武井 智昭(医療法人社団 柴健会 小谷クリニック)
慶應義塾大学医学部卒。日本プライマリケア学会専門医、日本アレルギー学会専門医、日本小児科学会専門医
思春期早発症とは、通常より早く思春期が始まり、さまざまな身体的変化が起こることを指します。
思春期に起こる体や心の変化が他のお子さんと比べて早くなると、本当に大丈夫か心配になってしまう親御さんも多いことでしょう。思春期早発症については、ある程度の知識をもって、家族として対応も必要とされます。 今回は小児科医の武井 智昭先生に思春期早発症の特徴や治療法について詳しく教えていただきます。
思春期早発症とは
思春期とは、なじみのある言葉としては「第二次性徴」と呼ばれており、こどもから大人に、身体的な変化がみられていく時期です。思春期はこどもの成長には欠かせない時期でありホルモンバランスの変化として生じます。
男の子は12~14歳頃、女の子は10~14歳頃から始まりますが、体の中のもっとも大きな変化は、性腺刺激ホルモンが分泌されることにより外性器などに変化が起きて、生殖能力を持つことです。
男の子は陰嚢の膨らみ・陰茎のサイズの増加、声変わり、女の子は乳房の発達、初潮などが起こります。男女ともですが、こうした性腺刺激ホルモンの変化により、いらだちなど自分でコントロールができなくなり、反抗期を迎えます。 こういった思春期に起こるさまざまな変化が、通常の時期よりも早く(通常2~3年以上早く)起こることを「思春期早発症」と呼びます。
思春期早発症の診断・症状
思春期早発症の診断基準は以下の通りです。
<男児>
- 9歳より前に睾丸が発育する
- 10歳より前に陰毛が生える
- 11歳より前にひげや脇毛が生え、声変わりが起こる
<女児>
- 7歳6ヵ月より前に乳房の発育が始まる
- 8歳より前に陰毛が生える
- 10歳6ヵ月より前に初潮を迎える
上記に挙げた症状が2つ以上認められる、あるいは年齢に不相応な程の身長の伸び、骨の成熟などがあった際には、思春期早発症と診断されます
男児・女児の両方に起こる症状
思春期早発症では、最初は身長の伸びが早いものの、早期に成長が終わり最終的に低身長になってしまうことがあります。これは、男の子にも女の子にも見られる症状で、最終的に成人になったときの身長が低くなります。
また、思春期早発症の原因が頭部にある場合は、頭痛、視野が狭まる、まひ・しびれなどが起こることもあります。
思春期早発症はどんな検査をする?
まずはこれまでの成長・発達の記録となる成長曲線を記載して、身長の急激な伸びがないかどうかを確認します。
その際、性ホルモンを含めたホルモン検査、一般的な血液検査、骨の成熟度(骨年齢)を判定するための手のX線撮影などが行われます。
他にも必要に応じて、前述の性ホルモンの負荷試験、疾患の確認のため頭部のMRI検査・腹部超音波検査が検討されます。
思春期早発症の原因
思春期早発症は、原因不明とされる特発性が多くをしめます。
この一方で、以下のような疾患により思春期早発症となることもあります。
- 脳腫瘍
- 副腎腫瘍
- 卵巣腫瘍
- 先天性副腎過形成症 など
上記のような疾患が原因となっている場合には、原因となる疾患に対する治療(外科手術など)が行われます。
思春期早発症は治療が必要?
思春期早発症と診断された場合は、早期に治療を開始することが勧められます。
思春期早発症で治療が必要となる理由は以下の通りです。
- 早期に体が完成してしまうために、最終的には低身長となる
- 乳房・陰毛、月経などが低年齢であるため、本人や周囲が戸惑い心理社会的問題が起きる
- 頻度は低いが、脳腫瘍などの原因が判明して早期治療が必要となる
治療方法について
原因が判明しない、特発性中枢性思春期早発症では、LH-RHアナログという薬物治療を開始します。1か月に1回、医療機関で薬の注射を行います。
このお薬は下垂体から精巣・卵巣を刺激するLH、FSHを抑え、結果的にはLH/FSHの下流となる精巣からの男性ホルモン、卵巣からの女性ホルモンの分泌を抑制することにより、思春期の進行をゆるやかにして、年齢不相応な月経・陰嚢腫大などの思春期徴候を抑えます。
同時に、骨の成長も緩徐になるため、一時的に身長の伸びを悪くなりますが、最終身長の改善を目標します。 この治療は、身長や体重の推移、性ホルモンの検査結果、骨成熟の変化などによって、治療の頻度や薬の量は異なります。定期的に通院し、治療中止を随時判断していきます。
まとめ
思春期早発症は、後遺症が残る、命に関わる疾患でないことがほとんどですが、身体的のみならず、心理面、社会面での影響が生じ、本人・家族が戸惑うこともあります。
同時に、家族・本人が適切な治療を行えば治っていくことも理解することが、疾患への理解につながるでしょう。 気になる症状があれば、一度かかりつけの小児科で相談してみるようにしましょう。