ステロイド外用剤は子どもに使っても大丈夫?正しい使い方を医師が解説

2023.10.11

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執筆医師:武井 智昭(医療法人社団 柴健会 小谷クリニック)
慶應義塾大学医学部卒。日本プライマリケア学会専門医、日本アレルギー学会専門医、日本小児科学会専門医

乳幼児の湿疹などのトラブルでは、保湿剤とともに「ステロイド」が含まれる薬剤が合処方されることもあります。ステロイドときくと、副作用、刺激性が心配だと感じる親御さんもいらっしゃるでしょう。

ステロイドは適切に使用すれば、皮膚の状態も安定し、副作用も少なくなります。 今回は小児科医の武井 智昭先生に子どものステロイドの正しい使い方を教えていただきます。

ステロイドとはどんな薬?

ステロイドの正式名称は「副腎皮質ホルモン」であります。

発熱、外傷、心理的内容など、様々な外からのストレスにより、この副腎皮質ホルモンというホルモンが副腎(腎臓の上に存在する臓器)より分泌され、体内の炎症を抑制し、免疫バランスを保っております。

乳幼児にステロイドが処方されるのは、肌トラブルが起きた場合が多いです。 ステロイドには様々な剤型があり、今回ご紹介する塗り薬のほか、内服、注射、点眼、点鼻、吸入など多岐にわたり様々な疾患で利用されております。ステロイドの外用薬も長年使用されてきており、皮膚の過剰な炎症とそれにより生じたかゆみを抑制する効果が期待できます。

子どもにステロイド外用薬が処方されるのはどんな時?

小児科では主に以下の2つの疾患で、保湿剤とあわせてステロイド外用薬が処方されるケースが多いです。

乳児湿疹

乳児湿疹とは、乳児の皮膚、とくに首や顔を含めて体表にできる湿疹です。

おでこや頬が乾燥するタイプや、髪の生えぎわや頭皮・耳の部分がベタベタするタイプなど、湿疹の状態は多様です。

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎とは、特に皮膚の関節の部分や顔、首、体幹などが、慢性的な皮膚のかゆみにより湿疹、びらん、皮がむけて固くなるなどの状態が持続している状態です。発症する年齢は早くても生後3ヶ月ころとなります。

アトピー性皮膚炎では、肌がただれてジュクジュクしたり、皮膚が硬くなったり(苔癬化)などの様々な病変が生じます。

ステロイドの正しい使い方は?

ステロイドにも5つのランクがあり、現在の皮膚の状態や面積に応じて、適切な剤型が処方されます。

乳児湿疹やアトピー性皮膚炎では肌が乾燥するため、ステロイドの外用にあわせて、保湿薬の軟膏・クリーム・ローションを塗るように指示されることも多いです。

ステロイドを塗る量は、大人の手のひら2枚の広さの患部に対して、軟膏・クリームタイプなら人差し指の第一関節の長さぐらい、ローションタイプなら一円玉大の量が目安とされております。

また、顔は薄めに、四肢では厚めに塗ることがポイントとなります。

塗り方や塗る量については症状や子どもの年齢などによりますので、スキンケアと合わせて指導を守るようにしてください。

小さなお子さんにステロイド外用薬が処方され、使用する場合には、1日2回の原則を守り、また概要量も守り、必要以上の長期間は使わないようにしましょう。
ステロイドの効果としては、3日程度で目に見える効果がみられます。1-2週間改善がない場合には他原因(真菌感染など)が考えられますので、その際には早めに受診をしてください。

ステロイドは副作用がある?

ステロイドの外用薬は体への吸収はごく少量です。このため、体重増加・肥満傾向・色素沈着・高血糖などの全身に及ぶ影響はほとんどありません

この一方で、皮膚の概要面には以下のような変化が生じることもあります。

皮膚の細菌感染(とびひ:伝染性膿痂疹)

ステロイド剤の作用として免疫を抑えることがあるため、皮膚の常在菌などがこの部分に入り込んで、かさぶた・膿をつくります。汗をかきやすい夏に多く見られます。

この状態になった場合には、処方していただいた医師に相談して、外用の内容を再検討し、必要であれば抗生物質の外用・内服をされてみるとよいでしょう。

皮膚が薄くなる、血管がめだつ、色素沈着

こちらはステロイドを長期間にわたり外用した場合にみられます。

肌の層が薄くなるために、血管がめだち、皮膚も黒ずむこともみられます。ステロイド外用薬は漫然と使わず、短期間(1~2週間程度)でしっかりと使用して、その後は中止、あるいは再燃時に使う方法が推奨されます。
医師の指示に従って適切に使用をしてください。

まとめ

今回は小児科医の武井 智昭先生に子どものステロイドの正しい使い方を教えていただきました。

ステロイドの効果は期待できる反面、副作用が怖いという不安が強く、なかなか使用に抵抗がある方もおります。適切、かつ短期間の外用は効果的であること、肌のスキンケアが良い状態であれば、食物アレルギーの発症リスクも軽減できるという報告もありますから、お子さんの肌のみならず全身の状態を守ることにもつながります。

早く治したいからといって、自分自身でステロイドの量を増加する、回数を多く塗ることはのは、炎症が治まらないばかりか、かえって副作用などで肌の調子を悪くしてしまう可能性があるので、医師の指示に従い、適切に使用するようにしましょう。