【医師監修】食生活の乱れで疾患リスク増!           ~食生活改善のための3つのポイント~

2023.03.13

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監修医師:甲斐沼 孟(TOTO関西支社健康管理室)
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科を卒業後、心臓血管外科として勤務。国家公務員共済組合連合会 大手前病院 救急科医長を務め、現在はTOTO関西支社健康管理室に産業医として勤務。

人生100年時代。現代において「健康で長生きすること」は人々にとっての大きな関心事の1つであるといえるでしょう。東京都の「健康に関する世論調査」でも約95%の人が自身の健康について関心があると回答しています。

では健康で長生きするために必要なこととはなんでしょうか。運動をする、ストレスを溜めない、十分な睡眠をとる。もちろんどれも重要なことではありますが、忘れてはいけないのは規則正しい食生活です。
人間の体は食べたものから作られています。普段何気なく食べている食事が健康な体づくりの土台であることを忘れてはいけません。

ここでは食生活の改善方法と乱れた食生活が引き起こす疾患リスクについて、医師監修のもと詳しく解説していきます。

現在の食生活を見直そう

まずは現在の食生活について、以下のうちいくつ当てはまるかみてみましょう。

  • 朝食はあまり食べない
  • 毎日の食事の時間は不規則である
  • 魚より肉が好き
  • 揚げ物をよく食べる
  • 麺類や丼ものなど、一品料理が多い
  • 野菜をあまり食べない

いかがでしたか?当てはまる数が多い方ほど現在の食生活の改善が必要です。

しかし「食生活を改善しないと!」と思っても、日々忙しく生活していると毎日バランスのとれた食事を用意することは難しいですよね。
実際に厚生労働省が発表した「国民健康・栄養調査(令和元年度)」でも「食習慣を改善するつもりである」と答えた人のうち4割以上が「仕事(家事・育児等)が忙しくて時間がない」ことを健康な食習慣の妨げとなる原因だと回答しています。

食生活の改善が難しいと感じている方は、まずは普段の食事の記録をとるところから始めてみることをおすすめします。食事の記録をとることで、自分が思っているよりも食べ過ぎていることや、食事の偏りがあることに気が付くきっかけとなります。最近ではさまざまな食事記録アプリがあるので、そういったものを活用するのも良いでしょう。

食生活を改善する3つのポイント

ここからは食生活の改善のために意識してほしい3つのポイントを詳しくみていきましょう。

栄養バランスのとれた食生活

健康的な食生活の基本は「主食・副菜・主菜」のバランスがとれた食事を1日3食食べること。欠食や偏った食事が続かないように気をつけましょう。

1日で摂取すべき食事量の目安はこちらを参考にしてください。

グラフ, じょうごグラフ

自動的に生成された説明
画像引用:農林水産省「食事バランスガイド」より
ダイアグラム が含まれている画像

自動的に生成された説明
画像引用:農林水産省「食事バランスガイド」より

これらは厚生労働省と農林水産省により策定された「食事バランスガイド」といって、1日に「何を」「どれくらい」食べるべきかの目安をイラストで示したものです。

例えば30代女性(身体活動量ふつう)の1日の食事が以下の場合、【主食4.5、副菜3、主菜4、乳製品2、果物0】となります。


朝食:食パン1枚、目玉焼き1個、牛乳1杯
昼食:スパゲッティ、野菜サラダ
夕食:ごはん中盛1杯、鶏肉のからあげ、ほうれん草のお浸し、具沢山味噌汁

これを上の「適量チェック!CHART」に当てはめると、【主食0.5~2.5、副菜2~3、果物2】が不足していることが分かります。
このように1日の食事を当てはめると「副菜と果物が不足しているから朝食に果物を追加して、夕食に野菜の煮物を追加しよう」と具体的に献立のイメージがしやすくなりますよ。

野菜をしっかり食べる

厚生労働省の「健康日本21(第二次)」では、1日あたりの野菜摂取量の目標値を350gと定めています。しかし「国民健康・栄養調査(令和元年度)」によると、20代以上の全年代においてこの350gの目標値に達していないのが実情です。

グラフ

中程度の精度で自動的に生成された説明
画像引用:厚生労働省「国民健康・栄養調査(令和元年度)」より

一般的な野菜サラダの分量は約100g程度ですので、これを1日3食食べても目標値には達しない計算となります。もちろん全て生野菜で食べる必要はないので、茹でる・焼く・煮るなどの調理をした野菜の献立を増やすことを心がけると良いでしょう。
また1種類の野菜だけでなく複数の野菜(緑黄色野菜など)を組み合わると、より栄養バランスが良くなります。

減塩を心がける

野菜摂取量と同様に、食塩摂取量の目標についても厚生労働省の「健康日本21(第二次)」にて定められています。

食塩摂取量の目標値の平均は1日8g。こちらも「国民健康・栄養調査(令和元年度)」で年代別の平均値を見てみると、全年代において目標値を超えていることが分かります。

グラフ, ウォーターフォール図

自動的に生成された説明
画像引用:厚生労働省「国民健康・栄養調査(令和元年度)」より

特に外食やコンビニ食が多いという方は注意が必要です。外食やコンビニ食では1 食あたりの食塩相当量が5gを超えるものも多く、中にはラーメン1杯で食塩相当量が10gを超えるようなものもあります。

メニューを選ぶ際には必ず食塩相当量を確認する習慣をつけるようにしましょう。そして塩分過多な食生活が続いてしまった時には、自宅で食べられる時は調味料を控えめにする、などできることから実践してみてください。

なお高血圧などの持病がある方は食塩摂取量の目安が異なる場合がありますので、必ずかかりつけ医にご確認ください。

食生活の乱れが引き起こす疾患

健康な体を保つためには規則正しい食生活が必要だと解説しましたが、実際に乱れた食生活を続けているとどのような危険があるのでしょうか。

栄養成分は、不足しても過剰になっても身体に負担がかかります。

糖分を摂りすぎると、肥満や糖尿病、虚血性心疾患など生活習慣病を発症するリスクが上昇します。

食塩を過剰に摂取すれば高血圧、脳卒中、胃がんに罹患しやすく、脂肪を過度に取り入れると脂質異常症に繋がります。

野菜や果物不足に伴って、ビタミンやミネラルが不足すると、がん疾患や骨粗鬆症、貧血などに陥りやすくなります。

一時的に外食が続いたからといって、それがすぐに疾病につながるという話ではありません。あくまで日常的な食生活の乱れが長期間にわたって続くことで生活習慣病などの疾患リスクが高まります。ぜひ今日から、規則正しい食生活が送れるよう意識してみてくださいね。

まとめ

食生活の改善には以下のことを意識することが大切です。

  • 栄養バランスのとれた食生活
  • 野菜をしっかり食べる
  • 減塩を心がける

「今の食生活でも健診でどこも問題なかったし大丈夫」と油断は禁物。今は健康であっても、乱れた食生活の積み重ねが数年後さまざまな生活習慣病を引き起こす危険性があることを理解しておきましょう。

また自身での食生活の改善が難しいと感じている方は、食事管理ができるアプリを使って、自身の食生活の見直しから始めてみることをおすすめします。