その症状、低血圧かも!低血圧について解説
~最新治療と気になる費用~
監修医師:中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター)
兵庫医科大学卒業。米国内科学会上席会員、日本内科学会総合内科専門医などの資格を保有。
主な研究内容・論文は「生活習慣関連因子と大腸カプセル内視鏡検査」。
「しっかり睡眠はとっているはずなのに、なんとなく体の疲れがとれない…」もしかしたらその原因は低血圧にあるかもしれません。高血圧の危険性はテレビなどのメディアで取り上げられる機会が多いですが、低血圧も健康に及ぼす影響はあるのでしょうか。
一般的に血圧が低い、というだけですぐに病気だと診断されることはありません。しかし低血圧が原因とされるなんらかの症状が出ている場合には治療が必要となります。また何か他の病気が原因で低血圧を起こしているというケースもあります。
ここでは低血圧に関する基本的な知識や症状、また低血圧の治療とその費用について、医師監修のもと詳しく解説していきます。
低血圧とは
高血圧は日本において日本高血圧学会による【収縮期血圧:140以上かつ(または)拡張期血圧:90以上】という診断基準が存在します。一方、低血圧には「血圧がいくつ以下だと低血圧とする」といった明確な診断基準はありません。
日本の多くの病院ではWHOが世界基準と定めている【収縮期血圧:100以下または拡張期血圧:60以下】を目安としています。
低血圧には大きく分けて「急性低血圧」「慢性持続性低血圧」「起立性低血圧」の3種類があります。それぞれの違いについてみていきましょう。
急性低血圧
ケガによる大量出血や病気、また薬剤によるアナフィラキシーショックなどが原因で、急激な血圧低下を引き起こすことを急性低血圧といいます。
最悪の場合は命にかかわることもありますが、気をつけていれば予防できるというものではありません。急性低血圧が起こった場合は、その原因となっているケガや病気の治療が必要です。
慢性持続性低血圧
慢性的に血圧が低い状態を慢性持続性低血圧といい、一般的に「低血圧」というとこれを指します。服用している薬や疾患が原因で血圧が低い場合と、明確な原因はないが体質的に血圧が低い場合があります。
低血圧を引き起こす疾患の例としては、甲状腺機能低下症や心筋梗塞、不整脈やアジソン病などが挙げられます。
起立性低血圧
寝ている状態(または座っている状態)から立ち上がった時に急激に血圧が低下することを起立性低血圧といいます。一般的に起立性低血圧が疑われる場合、仰向けの状態から立ち上がり3分以内に収縮期血圧が20以上低下するかどうかで診断されます。
いわゆる立ちくらみはこの起立性低血圧が原因となっている場合が多いです。貧血と混同されがちですが、血液の異常である貧血とは異なり、起立性低血圧は血圧の低下が原因となります。
低血圧の症状
低血圧の状態が続くと、全身の血液の巡りが悪くなり、さまざまな症状を引き起こす可能性があります。低血圧の主な症状は以下の通りです。
- めまい
- 頭痛
- 食欲不振
- 疲れやすい
- 動悸
- 朝起きられない
低血圧の方は、なんとなく体がだるい・疲れがとれない、といった症状がみられる場合があります。
- めまい
- 頭痛
- 食欲不振
- 疲れやすい
- 動悸
- 朝起きられない
こういった症状は仕事や学校を休むほどではなくても、確実にQOL(Quality of Life=生活の質)を下げる一因となってしまいますよね。気になる症状があれば、定期的に血圧をはかってみて、低血圧ではないかチェックしてみましょう。
また起立性低血圧の場合、普段は血圧が正常値であっても、立ち上がった際に急激に血圧が下がります。それにより脳の血流が低下して、めまいや立ちくらみなどの症状がみられる場合があります。
立ちくらみによる転倒で骨折や足腰を痛めたりすることがあるので、特に高齢者は注意が必要です。立ちくらみを起こしやすいと感じている人は、ゆっくり立ち上がる・手すりにつかまりながら立ち上がるなどを意識するようにしてください。
低血圧の改善方法
低血圧だから体の不調が続くのは仕方ない、と諦めてはいけません。生活習慣の改善で低血圧は改善できる場合もあります。
まずは以下の生活習慣の中で、実践できていないことがないかチェックしてみましょう。
- 十分な睡眠をとる
- 規則正しい食生活
- 適度な運動
- 湯船にしっかり浸かる
いかがでしたか?日々忙しいと不規則な生活が続いてしまうこともあるかもしれません。
しかしそういった生活を続けていると、低血圧以外にも生活習慣病などを引き起こすリスクも高まります。低血圧による症状が気になる方は、まずは自身の生活習慣を見直してみましょう。
また低血圧によるめまいの改善に加圧ストッキングの着用が有効であることも分かっています。
低血圧によるめまい・ふらつきのある女性を対象に行った愛知医科大学の研究によると市販の加圧ストッキングの着用で、7人中5人(71%)に症状の改善がみられたとの報告があります。
ただし糖尿病患者など、持病がある方には加圧ストッキングの着用は危険なこともあるので、必ず事前に主治医に確認するようにしましょう。
低血圧の治療と費用について
生活習慣を改善しても低血圧が続く場合や、低血圧による症状が強い場合は医療機関を受診しましょう。医療機関では低血圧を引き起こす別の疾患の可能性を調べたり、必要に応じて薬物治療が行われたりすることがあります。
低血圧で受診すべき科はまず循環器内科があげられます。その他呼吸器科、内分泌科、神経内科などの受診が必要となる場合があります。
高血圧症の治療費(3割負担の場合)
初診:約2,000~3,000円(血液検査をした場合)
1か月あたりの薬代(昇圧薬など):約1,000~1,500円
まとめ
低血圧はそれ自体が病気ではないので、特に症状がない方はあまり不安になる必要はありません。
しかしめまいや頭痛、体のだるさなどの症状が出ることがあるため、気になる方は一度医療機関を受診することをおすすめします。医療機関では必要に応じて別の疾患がないかの検査を行ったり、症状が辛い場合には薬が処方されたりすることもあります。
また生活習慣を整えることが症状の改善につながります。低血圧に限らず健康を維持するためにも、規則正しい食生活や運動習慣をつける、早寝早起きを心がけるなどできることから実践してみてくださいね。