適応障害の原因や症状とは?
~最新治療と気になる費用~

2023.03.13

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監修医師:伊藤 直(平成かぐらクリニック院長)
専門領域は精神科(心療内科)、 精神神経科、 心療内科。
主な著書は『精神科医が教える 3秒で部下に好かれる方法』。

職場や学校や家庭で、わたしたちは大小さまざまなストレスを抱えながら生活しています。ストレスを感じても自分なりの方法で発散し、解決方法を見つけられるようであれば、特に問題はありません。

しかし慣れない環境により強いストレスを感じた場合や、ストレスをため込みすぎてしまう人は、それが原因で適応障害を引き起こす可能性があります。

近年、有名人が適応障害を公表するケースも増え、その名称自体は耳にしたことがある方も多いでしょう。適応障害をはじめ、こころの病気に対する世間的な理解は深まってきていますが、まだまだ「本人のやる気の問題」や「甘えている」といった偏見を持つ方が多いのも事実です。

適応障害は決して珍しい病気ではありません。
実際に精神医療の外来受診者の推定5~20%が適応障害だといわれています。適応障害を放置していると、より症状の重いうつ病を発病してしまうこともあるので、早めに医療機関で適切な治療を受けることが重要です。

ここでは適応障害の原因や症状、うつ病との違いについて解説していきます。
また医師のコメントと共に最新の治療や費用についてもご紹介します。

適応障害とは

適応障害とは、ある特定のストレスが原因で日常生活に支障がでるほどの心身の不調があらわれるこころの病気のことです。適応障害の主な症状の一つとして「抑うつ状態」が挙げられます。抑うつ状態とは、気分が落ち込む、やる気がでない等の症状のことであり、「うつ病」とは別物ですので注意しましょう。

ここでは適応障害の原因と症状について詳しく解説していきます。

適応障害の原因とは

適応障害は、その名称からも分かるように、環境の変化に適応できず、強いストレスを感じることが原因で発症します。
例えば仕事で上司のパワハラがあった、友人関係にトラブルがあった、などストレスを感じた明確な原因により、心身の不調をきたした場合に適応障害と診断されます。また仕事や人間関係などの個人的なもの以外でも、事故や災害など、個人の努力では避けられない状況から強いストレスを感じた場合も、適応障害を発症する可能性があります。

適応障害を発症する原因はこのような環境要因の他に、本人の特性やストレス耐性も関係してきます。
例えば同じ部署で同じように仕事をしてきた人でも、ある人は適応障害を発症し、ある人は発症しない、ということも起こり得ます。

ここで注意していただきたいのが、適応障害を発症した人が「弱い」とか「甘えている」というわけではないということです。その環境が本人の特性と合わなかったことが原因であり、環境だけを責めることも、本人だけを責めることもできません。自分に合わない環境で強くストレスを感じた場合、誰しもが適応障害を発症する可能性があることを覚えておきましょう。

適応障害の症状とは

適応障害の症状は大きく分けて①こころの症状 ②からだの症状 ③行動面の変化 の3パターンが挙げられます。それぞれの具体的な症状は以下の通りです。

  1. こころの症状

抑うつ状態(気分の落ち込み)、不安、緊張、イライラ など

  1. からだの症状

疲労感、睡眠障害(不眠・過眠)、頭痛、動悸、胃痛、便秘や下痢 など

  1. 行動面の変化

暴飲暴食、飲酒量が増える、無断遅刻や無断欠勤、攻撃的になる など

適応障害は環境の変化から短期間(~3か月程度)でこれらの症状があらわれるのが特徴です。
もちろん人間誰しも一時的にこのような症状や変化があらわれることは珍しくありません。しかし強いストレスによりこれらのうちのどれか(または複数)の症状が続き、日常生活にも支障をきたす場合、適応障害と診断されます。

うつ病との違いについて

適応障害の症状として挙げた抑うつ状態や疲労感、睡眠障害などは、うつ病の症状としてもよく知られています。適応障害とうつ病はどちらもこころの病気であり、症状も似通っていることから、この二つを混同して捉えてしまう人も少なくありません。しかし実際には、適応障害とうつ病はそれぞれ以下のような違いがあります。

  • 適応障害:特定のストレスが原因、ストレスから離れると比較的早く回復する
  • うつ病:特定の原因が見つからないこともある、ストレスから離れても症状が続く

またうつ病は脳の機能障害であり、セロトニンやノルアドレナリン等の神経伝達物質の働きが低下することが分かっています。

初期のうつ病と適応障害は専門医であっても見分けることが難しく、医師によって違う診断がおりることも考えられます。また治療を進めていく中で適応障害の診断がうつ病に変わるケースもあります。いずれにしても、適応障害もうつ病も症状が出てからできるだけ早く、適切な治療を受けることが大切です。

適応障害の治療と費用について

前述のとおり、適応障害には明確なストレス要因があります。そのためそのストレス要因から離れて休息をとることが、元の生活を取り戻すための一番の近道だといえます。

しかし実際には、仕事や家庭などストレス要因は明確であっても、今すぐにその環境から離れられないといったジレンマを抱えてしまうこともあります。適応障害を発症した人の多くはこういったジレンマを抱えていますが、決して自分一人で解決しようとしてはいけません。医療機関を受診し、医師とともに治療に取り組んでいくことが大切です。

適応障害が疑われる場合、症状によって血液検査などが行われることもあります。検査内容によって費用は異なりますが、一般的に保険適用(3割負担)となる場合の費用目安は以下を参考にしてください。

高血圧症の治療費(3割負担の場合)

初診:約2,500~5,000円
再診:約1,500~2,500円
薬物療法(抗不安薬等):約1,000~2,000円

またカウンセラーによるカウンセリングや、一部医療機関における自由診療を受けた場合は、保険が適用されずに全額自己負担となることもあります。

こういった場合は治療費が高額になることも考えられますので、事前に費用や効果についてしっかりと理解し、納得したうえで治療を進めるようにしましょう。

まとめ

現代では、生涯に5人に1人がこころの病気にかかると言われています。
もちろんこころの病気になりやすい人、なりにくい人、と性格や特性の違いはあれど、誰しもが他人事ではないということを認識しておきましょう。

また適応障害やうつ病をはじめとするこころの病気は、からだの病気と同様に医療機関で治療が可能です。日常生活に支障をきたすほどの症状があらわれた場合には、放置は厳禁です。

人や薬に頼ることをためらわず、必ず適切な治療を受けるようにしましょう。