片頭痛は治せる?~最新治療と気になる費用~

2023.06.03

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監修医師:甲斐沼 孟(TOTO関西支社健康管理室)
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科を卒業後、心臓血管外科として勤務。国家公務員共済組合連合会 大手前病院 救急科医長を務め、現在はTOTO関西支社健康管理室に産業医として勤務。

日本では約1000万人の潜在患者がいるといわれる片頭痛。片頭痛では多くの場合、頭痛に加え吐き気や感覚過敏などの症状が伴います。その症状の程度は人それぞれ異なり、月に数回市販の鎮痛剤を飲めば問題ない程度の人もいれば、日常生活が送れず寝込んでしまうほどの人もいます。

いわゆる「頭痛もち」という言葉があるように、片頭痛は体質によるものなので治らないと考えている人も多いかもしれません。実際に片頭痛を完治させることは難しいのですが、近年新しい治療薬の開発により、片頭痛はある程度コントロールできる病気になってきました。

この記事では、最新の片頭痛の治療または予防について、医師監修のもと詳しく解説していきます。

片頭痛の種類と診断基準について

片頭痛とは、頭の片側(または両側、後頭部など)にズキンズキンと脈打つような痛みが繰り返し生じるものを指します。一般的には、10代の思春期頃~50代頃の女性に多くみられます。片頭痛による発作は4~72時間継続し、吐き気や嘔吐、感覚過敏などの症状が伴うことが多いです。

片頭痛は、大きく分けて「前兆のある片頭痛」「前兆のない片頭痛」の2種類に分けられます。それぞれの違いについてみていきましょう。

前兆のある片頭痛

片頭痛に悩まされる方の約2~3割にみられるのが、この前兆のある片頭痛です。片頭痛の前兆症状としては、「閃輝暗点(せんきあんてん)」といって、視界にキラキラ・ギザギザした光があらわれ、目が見えづらくなるものが一般的です。通常は、こういった前兆症状があらわれた5~60分後に頭痛が始まります。頭痛が発生する前に体のだるさや眠気、肩や首のこりを訴える方も多いですが、これは前兆症状とは異なり「予兆」と呼ばれます。

前兆のない片頭痛

片頭痛患者の多く(約7~8割)は、前兆のない片頭痛に悩まされています。前兆のない片頭は、「国際頭痛分類第3版(ICHD-3)」にて以下の通り診断基準が定められています

【片頭痛の診断基準】(参考:国際頭痛分類第3版(ICHD-3)日本語版
A. B~Dを満たす頭痛発作が5回以上ある
B. 頭痛発作の持続時間は4~72時間(未治療もしくは治療が無効の場合)
C. 頭痛は以下の4つの特徴の少なくとも2項目を満たす

  • 片側性
  • 拍動性
  • 中等度~重度の頭痛
  • 日常的な動作(歩行や階段昇降)などにより頭痛が増悪する.あるいは頭痛のために日常的な動作を避ける

D. 頭痛発作中に少なくとも以下の1項目をみたす

  • 悪心または嘔吐(あるいはその両方)
  • 光過敏および音過敏

E. ほかに最適なICHD-3の診断がない(その他の疾患による頭痛でない)

片頭痛と混同されやすい頭痛

頭痛が頻繁に起こるという場合でも、上記の診断基準に当てはまらないようであれば、片頭痛ではなく別の要因による頭痛が考えられます。片頭痛と混同されやすい頭痛は、主に以下のようなものがあります。

緊張型頭痛

緊張型頭痛とは、目の疲れや肩こりによって引き起こされる筋肉性の頭痛のことです。後頭部を中心に締め付けられるような痛みが発生するのが特徴です。片頭痛と緊張性頭痛は併発することも多く、どちらの頭痛が起こっているかを見極め、それぞれの頭痛に対する適切な治療が重要です。

二次性頭痛

二次性頭痛とは、脳やその他の体の病気によって発生する頭痛です。二次性頭痛の中でも危険度が高いものとして、脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)や脳腫瘍、髄膜炎などの疾患による頭痛があります。これらの二次性頭痛は、命の危険に関わることもあるため、一刻も早く医療機関を受診する必要があります。普段から片頭痛がある方も、いつもと違う痛みを感じたり、身動きがとれないほどの強い頭痛が生じたりした場合は、早急に医療機関に相談するようにしましょう。

片頭痛のメカニズムと対処法

片頭痛が起こるメカニズムは、いまだ分かっていないことも多いのですが、現在は脳神経の一つである三叉神経から「CGRP」という血管拡張性物質が放出されることによって片頭痛が起こるという説が有力です。

片頭痛はさまざまなトリガー(要因)が引き金となり、発症するといわれています。トリガーとなるものは人それぞれ異なりますが、主に以下のようなものが挙げられます。

  • ストレスなどの精神的な要因
  • 疲労や寝不足(または寝すぎ)などの身体的な要因
  • チョコレートやアルコールなどの食事的な要因
  • 気圧や天候の変化、匂いや強い光などの環境的な要因
  • 月経、排卵などの女性ホルモンによる要因   など

まずは、自分がどういった状況下において片頭痛が起こりやすいのかを把握し、できるだけそのトリガーを引き起こさないように注意しながら日常生活を送ることが重要です。

また片頭痛の前兆や予兆を感じた際は、薬を飲んで、静かで暗い場所で安静にするようにしましょう。人によっては、頭や首などの痛む箇所を冷やすことで症状が落ち着く場合もあります。片頭痛が発症した時は、入浴などで体を温めることは逆効果となり、痛みが増すこともあるため注意しましょう。

片頭痛の治療と費用について

片頭痛の治療には前述の通り、トリガーを引き起こさない生活を心がけることに加え、適切な投薬が重要です。片頭痛治療に用いられる薬の代表的なものとしては以下のようなものがあります。

鎮痛剤主に軽度~中等度の片頭痛に用いられるのがアセトアミノフェン非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)などの鎮痛剤です。このような鎮痛剤はドラッグストアなどでも手軽に手に入るため常用しやすいのですが、頻繁に服用することで「薬物乱用頭痛」を引き起こす恐れがあります。月に数回程度であれば問題ないケースが多いですが、月に10回以上鎮痛剤を飲むような頭痛に悩まされるようであれば、一度医療機関で相談することをおすすめします。

トリプタン製剤
2000年代に登場した比較的新しい治療薬にトリプタン製剤というものがあります。これは前述したアセトアミノフェンなどの鎮痛剤とは異なり、片頭痛のために開発された薬です。主に中等度~重度の片頭痛に用いられます。トリプタン製剤は片頭痛発作があらわれたら、すぐに服用することで高い効果を発揮します。

トリプタン製剤の費用(3割負担の場合)
1錠あたり:約300円

・CGRP関連薬剤
片頭痛の予防薬として近年注目を集めているのが「CGRP関連薬剤」です。前述の通り、片頭痛が起こるのはCGRPという物質との関連が深いと考えられ、日本では2021年にCGRP関連薬剤の3剤が承認・販売開始されました。1か月に1度程度、皮下注射にて投与することで、片頭痛発作の発症をおさえる効果をもたらします。

CGRP関連薬剤の費用(3割負担の場合)
1本あたり:約1万3,000円
※CGRP関連薬剤「エムガルティ」は初回のみ2本接種します。接種間隔は約1か月に1本、最低3か月の継続が推奨されます。

片頭痛の治療費は上記の通り、使用する薬剤や検査内容によって大きく変動します。

MRIやCT、血液検査などを行なった場合の費用(3割負担の場合)
初診(診察代込み):約5,000~1万円
検査を行わなかった場合の費用(3割負担の場合)
初診(診察代込み):約2,000~3,000円

まとめ

片頭痛治療においては、片頭痛を発症させるトリガーを引き起こさないような生活を送ることと、適切な治療薬の服用が重要です。従来は鎮痛剤を用いて症状をおさえる方法が一般的でしたが、近年新しい治療薬や予防薬の開発により、治療の選択肢が広がりました。辛い片頭痛は放置せず、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。