パニック障害かもと思ったら
~最新治療と気になる費用~

2023.03.30

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監修医師:伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)
専門領域は精神科(心療内科)、精神神経科、心療内科、 美容皮膚科、産業医。

ある日突然発症する「パニック障害」。パニック障害は、理由もなく強い不安感に襲われ、動悸や発汗などの発作があらわれるこころの病気です。

パニック障害は決して珍しい病気ではありません。近年芸能人がパニック障害であったことを公表するケースも増え、この病気について知ったという方も多いかもしれません。

パニック障害は、適切な治療を受けることで改善されます。しかし再発率も比較的高く、放置するとうつ病などの別の病気につながるケースも多いため、早めに医療機関を受診し、治療を開始することが重要です。

この記事では、パニック障害の症状や治療について、医師監修のもと詳しく解説していきます。

パニック障害とは

パニック障害とは、不安障害といわれるこころの病の一種です。

人は誰しも今自分自身が置かれている状況や未来に対する不安をもっているものですが、こういった不安が必要以上に強まり、日常生活に支障をきたすようなことがあれば、もしかしたらそれは「不安障害」かもしれません。

中でもパニック障害の場合は、突然理由もなく強い不安感に襲われ、動悸や息切れ、発汗や手足の震えなどの身体的症状(パニック発作)があらわれます。

パニック障害は、この「パニック発作」からはじまり、発作を繰り返すうちに「予期不安」や「広場不安」といった症状が出てくることもあります。「パニック発作」「予期不安」「広場不安」の3つの症状について詳しくみていきましょう。

パニック発作

パニック障害は、ある日突然パニック発作が起こることから始まります。パニック発作とは、強い恐怖または不安感に加え、以下の13の症状のうち4つ以上の症状があらわれることを指します。

  • 動悸、心拍数の増加
  • 発汗
  • からだの震え
  • 息切れ感、息苦しさ
  • 窒息感(息が詰まるような感覚)
  • 胸痛、胸部の不快感
  • 吐き気、腹部の不快感
  • めまい、ふらつき、気が遠くなる感覚
  • 寒気、ほてり
  • 皮膚感覚の麻痺、しびれ
  • 非現実感、自分が自分でない感覚
  • 正気を失うことへの恐怖
  • 死ぬことへの恐怖

参考:アメリカ精神医学会「DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)」

これらの症状は、例えば人前で話す時に「緊張してドキドキした」といったものとは度合いが全く異なります。パニック発作による症状は「このまま死んでしまうのではないか」と思ってしまうほど強いものです。

パニック発作は、いつどんな場所でも起こる可能性があります。緊張している場面だけでなく、リラックスしている時や寝ている間にも起こる発作です。またパニック発作による症状は、10分程度強い症状があらわれ、その後数分~数十分程度でおさまることが多いです。

予期不安

予期不安とは、パニック発作を繰り返しているうちに、発作がない時にも「また発作が起きたらどうしよう」「次は本当に死んでしまうかもしれない」といった不安が消えなくなってしまうことをさします。

そしてこういった強い不安感から仕事を辞めてしまったり、予定を変更してしまったり、といった行動の変化があらわれる場合もあります。

広場不安

広場不安とは、発作が起きた時に逃げられないような場所や状況に恐怖を感じ、その場所や状況を避けるようになることをさします。

「広場」という名前がついていますが、広い場所そのものを恐れるわけではなく、人によって不安になる場所や状況は異なります。例えば、一人での外出、電車やバスなどの公共交通機関、エレベーターなどの密室、人混みなど、「今パニック発作が起きたら助からない(または助けを呼べない)」と感じてしまう場所で広場不安が起こります。

こういった不安感から、今まで通りの日常生活が送れなくなり、引きこもりがちになってしまう方も多くいます。

パニック障害の治療と費用について

パニック障害はきちんと治療法が確立されており、適切な治療を受けることで、発作が起きなくなったり、不安な気持ちを克服したりすることができます。パニック障害の治療には「薬物療法」と「精神療法」の2種類があります。それぞれの治療法について詳しく解説していきます。

薬物療法

パニック障害の治療には、薬物療法が非常に有効であることが分かっています。

パニック障害はこころの病気の一種ですが、パニック障害が起きる原因の一つとして、脳機能の異常が関係していると考えられています。この脳機能の異常を改善するために、主に「SSRI」という抗うつ薬が使われます。SSRIなどの抗うつ薬は、セロトニン(精神を安定させる働きをもつ脳神経伝達物質のひとつ)の働きを強める効果があり、パニック障害の治療に高い効果を発揮します。

また抗うつ薬とあわせて、ベンゾジアゼピン系抗不安薬が処方されることも多いです。「抗うつ薬」や「抗不安薬」と聞くと、抵抗を感じてしまう人も少なくないかもしれません。しかしパニック障害を治すためには、適切に薬を使うことが一番の近道になるということを覚えておきましょう。

精神療法

パニック障害には薬物療法が非常に有効ですが、それに加えて精神療法を行うことで、より高い治療効果が期待できます。パニック障害の治療で用いられる精神療法の主なものに「暴露療法」と「認知行動療法」があります。

・暴露療法

自分が不安や恐怖を感じる場所や状況にあえて身をさらし、「この場所に行っても大丈夫」と成功体験を積み重ねながら不安に慣れていく治療方法です。

はじめは自分一人でそういった場を訪れることは、強い不安を伴うでしょう。そのような場合は配偶者やパートナー、友人などの力を借りてチャレンジしてみることをおすすめします。暴露療法は「広場恐怖」の症状改善に非常に効果的です。

・認知行動療法

例えば、電車の中でパニック発作を起こしたことがある人は「電車に乗るとパニック発作が起きて助からない」という思い込みを持ってしまいがちです。

こういった思い込み(認知のゆがみ)を修正するために、「認知(ものの見方や考え方)」と「行動の両面からアプローチしていく治療方法です。「予期不安」の症状改善に非常に効果的です。

費用

パニック障害の治療費(3割負担の場合)

初診:約2,000~3,000円
再診:約1,000~2,000円

パニック障害の治療は長期にわたることもあり、年単位の時間がかかることも少なくありません。治療費について不安がある方は、お住まいの自治体で「自立支援医療」の助成について相談してみましょう。

まとめ

パニック障害を放置していると、うつ病などの別のこころの病気につながることもあるので、早めの治療が重要です。

パニック障害は適切な薬の服用により、改善することが可能です。しかし自己判断により投薬を途中で辞めてしまうと、再発してしまうリスクが高まるので、必ず主治医と相談しながら治療を進め、完治を目指していきましょう。