【医師監修】HPVワクチンは接種すべき?対象者と費用は?

2023.04.19

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監修医師:浅野 仁覚(ロイヤルベルクリニック)
福島県立医科大学大学院卒。専門領域は産婦人科。

2022年4月より小学校6年~高校1年相当の女子を対象に、HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の定期接種が再開されました。HPVワクチンについては、2013年4月に定期接種が開始されていましたが、体の痛みなどの副反応を訴える声が相次ぎ、一時積極的な接種の呼びかけは中断していました。また2023年4月からは従来のワクチンよりもより子宮頸がんを予防する効果が高いとされる「9価HPVワクチン」の定期接種が開始されました。

HPVワクチンの有効性や安全性についてはさまざまな研究から明らかになっていますが、以前副反応に関する報道を見て、接種を悩んでいる方も少なくないでしょう。

この記事では、医師監修のもとHPVワクチンを接種すべきかどうか、その有効性や安全性をふまえて詳しく解説していきます。

HPVワクチンとは?

子宮頸がんや肛門がん、咽頭がんなどを引き起こす要因の一つにヒトパピローマウイルス(以下「HPV」という)というウイルスがあります。このHPVの感染を予防するために接種するのが、HPVワクチンです。

実は性交渉の経験がある女性の約8割がHPVに感染しているといわれています。しかしHPVに感染したからといって必ず何かしらの症状が出るわけではなく、HPVに感染しても、ほとんどの人は感染したことに気がついていません。

感染したHPVウイルスの種類や感染場所、また個人の体質によって以下のようながんを発症することがあります。

  • 子宮頸がん
  • 中咽頭がん
  • 肛門がん
  • 陰茎がん
  • 膣がん
  • 外陰がん   など

HPVで発症するがんというと「子宮頸がん」がよく知られていますが、それ以外にも男性に関わるがんもあります。そのため、女性だけでなく男性もHPVワクチンを接種するメリットは大きいことを覚えておきましょう。

HPVワクチンの現状

日本におけるHPVワクチンの定期接種は2013年4月から開始されましたが、HPVワクチンによる副反応の訴えが相次ぎ、2013年6月~2021年11月まで積極的勧奨の一時差し控えが続いていました。この間に、HPVワクチンの安全性および有効性についてさまざまな議論が行われ、2021年11月、厚生科学審議会において「積極的勧奨の再開を妨げる要素はない」と結論づけられました。

全国がん登録罹患データ」によると、2019年に子宮頸がんと診断された症例は10,879例、2020年の子宮頸がんによる死亡者数は2,887人でした。子宮頸がんの発症は20代半ば頃から増え、30代半ば~40代でピークを迎えます。子宮頸がんは、他のがんと比較しても非常に若年層の罹患が多いことが特徴です。

HPVワクチンの接種はWHO(世界保健機関)も推奨しており、実際にカナダやイギリス、オーストラリアなどの接種率は約8割にのぼっています。一方で、日本における接種率はわずか1.9%、子宮頸がんの発症率はG7の中でもワースト1位という結果が出ています。

HPV感染による子宮頸がんの発症および死亡者数を減らすためには、今後HPVワクチンの接種率を高める必要があるといえるでしょう。

HPVワクチンの安全性

子宮頸がんの発症をおさえるためには、HPVワクチンの接種が必要だということは理解していても、以前副反応に関するニュースなどを見て、その安全性に不安を感じている方も多いでしょう。

HPVワクチンは世界中ですでに数億回接種されており、WHOは「安全性に問題はない」と発表しています。もちろんHPVワクチンに限らず、全てのワクチンは一定の副反応が起こる可能性があることは否定できません。しかしHPVワクチンの副反応については、さまざまな研究から、ほとんどが軽微で一時的なものであることが分かっています。

実際にワクチンによる後遺症の報告もありますが、これはHPVワクチンの接種歴がない方にも同様の症状があらわれることがあり、「ワクチン接種との因果関係」については証明されていません。(参考 山梨県/HPVワクチン接種後に症状が生じた方に対する相談・支援

また予防接種への強い不安感や痛みへの恐怖から、頭痛やめまい、吐き気などの症状があらわれることがあります。これは「予防接種ストレス関連反応(ISRR)」と呼ばれ、副反応との見分けがつきづらいケースも多いです。予防接種ストレス関連反応を起こさないために、まずは接種するワクチンの正しい情報を収集し、ワクチン接種の必要性や安全性を、きちんと理解しておくことが重要です。

性交渉の経験があってもHPVワクチンは有効?

HPVワクチン接種は、性交渉をスタートさせる前の若い世代に最も効果的であり、早期接種が推奨されています。ただし、性交渉後のワクチン接種が無意味だというわけではありません

HPVは現在発見されているものでも約200種類が存在するといわれています。その中には、重篤な病気につながりにくい「低リスク型」と、子宮頸がんやその他のがんにつながりやすい「高リスク型」が存在します。「高リスク型」といわれるHPVは、16型や18型をはじめ、およそ15種類ほどあり、HPVワクチンではこれらの高リスク型の感染を防ぐ効果があります。

HPVワクチンは、すでに感染しているHPV株に対しては効果を発揮しません。しかし、性交渉の経験があったとしても、未感染のHPV株に対しては今後感染を防ぐ効果が得られます。これらのことから、すでに性交渉の経験がある人に対しても、HPVワクチンの接種は推奨されています。

さらに、HPVワクチンは、女性だけでなく男性の接種も推奨されています。HPVは子宮頸がんの原因となるだけでなく、咽頭がんや肛門がん、陰茎がんなど、男性に関わるがんの発症するリスクを高めることも分かっています。もちろん、男性がHPVワクチンを接種することで、パートナーをHPVの感染から守る効果もあるため、性別や性経験の有無に関わらず、HPVワクチンの接種を検討してみましょう。

HPVワクチンの対象者と費用

2023年2月時点でのHPVワクチンの定期接種(無料接種)対象者とワクチンの種類は以下の通りです。

HPVワクチン定期接種対象者
小学校6年生~高校1年生相当の女子
または平成9年度から平成17年度に生まれた女性(過去にHPVワクチンの接種を合計3回受けていない方)

HPVワクチン定期接種の種類
サーバリックス(2価HPVワクチン)
ガーダシル(4価HPVワクチン)
シルガード9(9価HPVワクチン)
※シルガード9は15歳未満の女性は2回接種、それ以外は3回接種です

現在日本で接種可能なHPVワクチンは①サーバリックス(2価HPVワクチン)ガーダシル(4価HPVワクチン)シルガード9(9価HPVワクチン)の3種類です。
これら3種類のワクチンは、それぞれ異なるタイプのHPVに対して予防効果があります。サーバリックスは2種類、ガーダシルは4種類、シルガード9は9種類のHPV感染予防に対応しています。

定期接種対象外の年齢、また男性が任意(自費)でHPVワクチンを接種する場合の費用目安は以下の通りです。

サーバリックス(2価HPVワクチン)
約3万円(1回あたり約1万円×3回)

ガーダシル(4価HPVワクチン)
約4万円(1回あたり約1.3万円×3回)

シルガード9(9価HPVワクチン)
約8万円(1回あたり約2.7万円×3回)

※一部の自治体では任意接種費用の一部を補助している場合があります。

まとめ

HPVワクチンは、子宮頸がんをはじめとするさまざまながんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染を予防する効果があります。HPVワクチンの接種については、まだまだ不安が残っている方も少なくないかもしれません。HPVワクチンの安全性については、多くの研究・議論のうえで証明されていますが、不安なことがあれば、事前に医師に相談してみることをおすすめします。

またHPVワクチンを接種すれば、子宮頸がんを発症するリスクが0になるというわけではありません。HPVワクチンを接種したあとも、20歳以降は定期的な子宮頸がん検診を受診することが重要です。