【医師監修】老眼は治療できる!最新治療と費用を紹介

2023.05.27

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監修医師:松原 令(松原眼科クリニック理事長)
神戸大学医学部医学科卒。日本眼科学会認定眼科専門医・ボツリヌス治療認定医などの資格を保有。

多くの人が感じる老化現象の一つに「老眼」があります。一般的には、40歳を過ぎたあたりからじょじょに手元の文字が見えづらくなったり、ピントが合わなくなったりすることから老眼の症状ははじまります。

老眼は「加齢によるものだから仕方ない」と考える人も多いですが、近年ではさまざまな老眼の治療方法が確立してきました。ここでは、医師監修のもと、老眼の最新治療と費用について詳しく解説していきます。

老眼とは

一般的に老眼という名称で知られている症状は、医学用語では「老視」といい、加齢に伴う老化現象の一つです。最近では、デスクワークの普及やスマホの使用率が増えていることで、老眼の進行ペースも弱年齢化してきており、早い人では、30代後半から発症する人も増えてきました

老眼は年齢を重ねるごとに症状も進行していき、日常生活に支障を来すようになってきます。ここでは、老眼の症状や原因について解説していきます。

老眼の症状

老眼の代表的な症状としては、近くのものや手元の文字が見えづらくなることが挙げられます。老眼の場合、遠くのものはよく見えますが、手元を見る時に、ピントが合いにくいのが特徴です。多くの方は、本や新聞を読む際に、今までは問題なく見えていたものが、霞んだり、ぼやけたりする事で老眼を自覚されます。

また老眼により、眼を酷使することによる「眼精疲労」も起こりやすくなります。眼精疲労は頭痛や肩こりなどの辛い症状が伴うこともあるため、適切な治療を受けることが重要です。

老眼の原因

眼球の構造はカメラと非常によく似ています。カメラは被写体を捉えるために、レンズのピントを調整するのですが、眼球の場合、このレンズの役割を担っているのが水晶体です。水晶体レンズが被写体を捉えようとする際に、本来なら水晶体や水晶体を支えている筋繊維が柔軟に伸び縮みしてピント調整を行います。

一般的に年齢を重ねるごとに、この水晶体や筋繊維は硬くなり、柔軟性を失います。それにより、近くのものにピントが合いづらくなることが、老眼の原因だと考えられています。

老眼の治療と費用

以前は老眼に対する有効な治療法はないと考えられていましたが、近年老眼による見えづらさを改善するためのさまざまな治療法が確立されてきました。

老眼の治療には主に①屈折装具 ②点眼薬 ③手術療法の3種類があります。それぞれの治療における特徴と費用について解説していきます。

屈折装具

老眼の治療法または対処法としてよく知られているのが老眼鏡です。老眼鏡などの眼鏡やコンタクトレンズのことを「屈折装具」と呼びます。老眼鏡は市販でも販売されているため、安価で気軽に手に入れることができます

もしかすると「老眼鏡を使用すると老眼が悪化する」と思っている方もいるかもしれません。しかし実際には、老眼鏡の使用で老眼が悪化するということはなく、むしろ老眼鏡を使用することで目の負担は減り、症状の悪化を防ぐ効果があると言われています。

ただし、度数の合わない老眼鏡を使い続けていたり、レンズに傷がついたまま使い続けたりすることで、視力が悪化する可能性もあるので、できれば眼科やメガネ店で視力検査を行い、自分に合った矯正視力の老眼鏡を作ることをおすすめします。

眼科で老眼鏡を作る費用(3割負担の場合)
初診:約2,000~3,000円(処方箋料含む)
眼鏡代:約1~5万円

※老眼鏡は、選択するフレームやレンズによって金額の幅があります

点眼薬

2021年10月にアメリカでは「VUITY(商品名)」という、老眼治療に対する新しい点眼薬が承認されました。VUITYの有効成分は「ピロカルピン」というものですが、ピロカルピン自体は以前より日本でも緑内障などの治療薬として用いられてきました。

VUITYは日本ではまだ未承認の点眼薬のため、購入することはできません。参考までに、アメリカで承認されたVUITYの概要を以下に記します。

商品名:VUITY (有効成分ピロカルピン)

用法:1日1回の点眼
効果:点眼後15分程度で見え方が改善、最長6時間効果が持続
副作用:重篤な副作用はないが、頭痛や充血などの副作用が起こる可能性あり
注意点:点眼後は視野が狭くなるため、運転には注意が必要。

今後日本でもピロカルピンの有効性や安全性が認められれば、新しい老眼治療の方法として広く普及していくことが期待されます。

手術療法

老眼の進行により日常生活に支障をきたしていたり、老眼鏡などの屈折装具が合わない方には、手術療法が検討されます。

老眼治療で行われる主な手術療法には①レーシック手術IPCL手術の2種類があります。それぞれの特徴と費用は以下の通りです。

レーシック手術

近年、近眼の治療法として広く知られるようになったレーシック手術ですが、老眼の治療としても用いられています。レーシック手術では、レーザーで眼の表面である角膜を削ることで、ピント調整を矯正します

老眼治療で行うレーシック手術は、「モノビジョンレーシック」という手法をとることが多いです。モノビジョンレーシックとは、左右の眼それぞれの見え方を意図的に変える方法です。例えば、右目は近くのものを見えやすくして、左目は遠くのものを見えやすく調整します。手術直後は左右の見え方が異なり、人によっては見えづらさを感じる事がありますが、時間の経過と共に視力の回復を感じられるようになります。

レーシック手術の費用(自費診療のみ)
約40〜50万円(両眼) 

IPCL(有水晶体眼内レンズ)手術

IPCL手術とは、眼の中に矯正視力レンズを入れ込む治療法です。一度レンズを挿入すれば、基本的に取り出して手入れをする必要はなく、半永久的に効果は持続します。また1点のみにピントを合わせる単焦点レンズだけでなく、多焦点レンズ(遠く、中間、近くなどの複数に焦点が合わせられるレンズ)もあり、老眼の対応も可能です。

IPCL手術の費用(自費診療のみ)
約60〜80万円(両眼)

どちらも点眼麻酔を使用し、手術時間は約20〜30分程度です。意識がある中での手術となりますが、麻酔薬がしっかりと痛みをカバーしてくれるため、比較的身体的負担は少ないです。

また上記で挙げた手術療法は安全性が確立された老眼治療ではありますが、少なからずリスクは伴います。不安な点や気になることは必ず専門の医師に相談し、手術療法を検討するようにしましょう。

まとめ

老眼の治療というと、以前は老眼鏡をつける対症療法が主なものでした。しかし最近では老眼の治療の幅が広がり、一人ひとりの症状にあわせた適切な治療を選択できるようになってきました。

それぞれの治療法にはメリット、デメリットがあります。まずは、何をどこまで見えるようにしたいのか、具体的なライフプランをイメージした上で主治医とよく相談し、ご自身にあった適切な治療方法を見つけていくことをおすすめします。