【医師監修】胃カメラ?バリウム?胃検査の正しい選び方

2023.07.06

  • LINE

監修医師:中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター)
兵庫医科大学卒業。米国内科学会上席会員、日本内科学会総合内科専門医などの資格を保有。
主な研究内容・論文は「生活習慣関連因子と大腸カプセル内視鏡検査」。

健康診断や人間ドックの項目のうち、多くの人が苦手意識をもっているものの一つに「胃検査」が挙げられます。
胃検査は、胃のさまざまな病気を見つける重要な検査であることは多くの人が認識していることと思いますが、どうしてもその検査の辛さから、受診をためらってしまう人も少なくありません。

また胃痛や胃もたれなどの症状から、胃検査を受けようと思っているものの、胃カメラと胃バリウム検査、どちらを受けるべきか悩んでいるという方もいるでしょう。

この記事では、胃検査で分かること、そして胃検査の正しい選び方について、医師監修のもと詳しく解説していきます。

胃検査では何が分かる?

胃検査は、主に以下のような病気を発見するのに役立ちます。

  • 胃炎
  • 胃潰瘍
  • 胃がん
  • 胃ポリープ   など

ここでは、それぞれの病気について解説していきます。

胃炎

胃炎とは、胃の粘膜に炎症が起こっている状態を指します。

一般的に胃やみぞおちの痛み、吐き気、胸やけなどの症状があらわれることが多いです。これらの症状が急激にあらわれた場合は「急性胃炎」、長期間続いている場合は「慢性胃炎」と診断されます。

胃炎の原因として、アルコールやタバコ、過度のストレス、薬の使用、ピロリ菌などが挙げられます。

胃潰瘍

胃潰瘍とは、胃の粘膜の下まで深く傷ついている状態を指します。

一般的に上腹部の痛みや不快感、背中の痛み、吐き気などの症状があらわれることが多いです。胃の血管まで傷つけて出血したり、胃の壁を破って「穿孔」という状態になったりすることもあります

胃潰瘍の原因として、ピロリ菌の感染や痛み止めの薬の使用などが挙げられます。

胃がん

胃がんは、胃の粘膜の細胞が、がん細胞に置き換わり増殖することで発生します。

胃がんの一番の要因は「ピロリ菌」の感染です。ピロリ菌は上下水道の設備が整っていない時代、幼少期に井戸水などから感染していることが多いため、年齢が高いほど感染率は高くなっています。ピロリ菌に感染すると、慢性胃炎から萎縮性胃炎に移行してがんが発生しやすくなると考えられています。

そのほか、塩分の多い食事やタバコ、アルコール、ストレスなどの生活習慣も胃がんの要因として挙げられます。

胃炎の原因として、アルコールやタバコ、過度のストレス、薬の使用、ピロリ菌などが挙げられます。

胃ポリープ

胃ポリープとは、胃の表面に発生するこぶのようなできもののことを指します。

多くの場合、胃ポリープに特別な自覚症状はなく、バリウムや胃カメラによる胃検査を行った際に発見されます。

胃ポリープの種類として「過形成ポリープ」「胃底腺ポリープ」が多くみられます。過形成ポリープはピロリ菌のいる萎縮性胃炎のある胃に発生し、まれにがん化することもあるため定期的な胃検査が推奨されています。胃底腺ポリープはピロリ菌のいない胃に発生し、がん化することはありません。

胃炎の原因として、アルコールやタバコ、過度のストレス、薬の使用、ピロリ菌などが挙げられます。

胃検査の種類と費用は?

胃検査の方法として代表的なものに「胃バリウム検査」「胃内視鏡検査(胃カメラ)」「胃がんリスク検査(ABC検診)」があります。ここでは、3つの胃検査の特徴と費用について詳しく解説していきます。

胃バリウム検査

胃バリウム検査とは、「バリウム」という白くてドロっとした造影剤を飲み、X線で撮影する検査です。健康診断や人間ドックの胃検査では、主に胃バリウム検査が用いられます。

検査にあたり、バリウムの他に胃を膨らませるための発泡剤を飲みます。胃バリウム検査中はゲップをこらえながら、検査台のうえで医師の言う通りに体の向きを変え、撮影します。

飲み込んだバリウムは体内に長時間留まっていると固まってしまうため、検査後は下剤を飲み、便としてバリウムを排出させます。

検査ではX線を使用するので、妊娠中の方や妊娠の可能性がある方は検査が行えません。
検査時間は3〜10分程度です。

胃バリウム検査でわかること

バリウムが胃の中の表面に付着することで表面の隆起や凹みが映し出され、胃炎、胃潰瘍、胃がん、胃ポリープなどがわかります
胃の全体像を俯瞰的に確認することができる胃バリウム検査では、胃の壁全体に染み込んでいくように広がっていくスキルス性胃がんの発見に適していると言われています。

胃バリウム検査のデメリット

胃バリウム検査は、胃カメラとは異なり、胃の中を直接見るわけではなく白黒の濃淡画像のみで判断します。
胃バリウム検査の結果、要精密検査となった場合は、胃カメラを受けることになり、二度手間となることがあります

胃バリウム検査の費用(3割負担の場合)
約4,000円

企業や健康保険組合、または自治体の健康診断などでは、あらかじめ胃バリウム検査が項目に含まれている場合もあります。対象となる年齢や費用はそれぞれ異なるため、詳しくはご加入の健康保険組合や自治体までお問合せください。

胃内視鏡検査(胃カメラ)

胃カメラとは、一般的に直径1cm弱の内視鏡を口から入れて胃の中を直接見る検査です。内視鏡を口から入れることにより嘔吐反射をもよおしやすく、人によってはかなりきつさを感じるでしょう。医療機関によっては、鎮静剤を使用したり鼻から入れる内視鏡を使ったりして、検査へのきつさを解消し内視鏡検査を受けることのハードルを下げる工夫がなされています。
検査時間は10〜15分程度です。

胃カメラでわかること

胃カメラでは、胃の中を直接見ることで胃炎、胃潰瘍、胃がん、胃ポリープなどの病状をその場で確認することができます。そして、胃バリウム検査では発見しにくい小さな病変も見つけることができたり、病変部を拡大してさらに詳しく細胞の形を確認したりすることもできます。必要時には粘膜の一部を採取して顕微鏡検査に出しますので、確実な診断が可能です

胃カメラのデメリット

嘔吐反射や痛みを抑えるために喉または鼻に麻酔を行いますが、まれにこの麻酔の薬によるアレルギーや中毒が起こることがあります
またこの麻酔とは別に、少しぼんやりとした状態で検査を受けられるように鎮静剤を使うこともありますが、呼吸が止まったり血圧が下がったりする副作用症状が出る場合があります。鎮静剤の使用については、事前に医師とよく相談のうえで決めるようにしましょう。

胃カメラの費用(3割負担の場合)

約4,000円+α

鎮静剤使用や生検(粘膜の一部をかじって顕微鏡検査に出す)などがあると料金が追加されます。

胃がんリスク検査(ABC検診)

ABC検診とは、血液検査で胃がんのリスクをABCの3つに分類する検査です。採血だけなので簡単に受けることができます。胃がんの主な要因であるピロリ菌が感染しているかを「血清ピロリ抗体」、胃粘膜の萎縮状態(老化現象)を「血清ペプシノゲン法」、この2つの結果の組み合わせで胃がんのリスクを判定します。

ABC検診のデメリット

ABC検診は、あくまで胃がんのリスク状態を分類し推測しているだけですので、胃がんがあるかどうかの診断はつきません。胃がんリスクが高いと判定された場合は、胃バリウム検査か胃カメラを受ける必要があります。

ABC検診の費用(自費診療のみ)

約4,000〜5,000円

まとめ

胃検査の方法としては、「胃バリウム検査」「胃内視鏡検査(胃カメラ)」「胃がんリスク検査(ABC検診)」の3種類があります。
それぞれメリット・デメリットが異なりますので、自身にあった方法で定期的な胃検査を受けることが重要です。
また現在胃痛や胃もたれなどの症状がある方は、早めに医療機関を受診して医師が選択した適切な胃検査を受けるようにしましょう。