アルコール性肝炎を放置するとどうなる?~最新治療と気になる費用~

2023.05.28

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監修医師:中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター)
兵庫医科大学卒業。米国内科学会上席会員、日本内科学会総合内科専門医などの資格を保有。
主な研究内容・論文は「生活習慣関連因子と大腸カプセル内視鏡検査」。

過度な飲酒が引き起こす疾患リスクのひとつに「アルコール性肝炎」があります。
アルコール性肝炎とは、多量の飲酒により肝臓に炎症が生じる病気であり、主に30~50代の男性に多くみられます。アルコールは肝臓で分解されますが、長い期間大量の飲酒を続けていると次第に肝臓の機能が衰え重症化してしまいます。

アルコール性肝炎の治療には断酒、あるいは飲酒量を減らすことが不可欠です。日常的にお酒を飲んでいる方がきっぱりとお酒を断つことは難しいですが、近年新しい治療薬の開発により飲酒量をコントロールすることが可能になってきました。

この記事では、アルコール性肝炎の症状や最新の治療について、医師監修のもと詳しく解説していきます。

アルコール性肝炎とは

アルコール性肝炎とは、多量の飲酒を長期間続けることで肝臓に炎症が生じる病気のことです。アルコール性肝炎は日常的な飲酒によって発症しますが、その症状の程度は性別や遺伝、肥満などの要素によって異なり、個人差が大きいのが特徴です。一般的に、以下の条件を満たすことで「アルコール性」の肝炎かどうかを見分けます。

  • 長期(5年以上)にわたる過剰の飲酒により肝臓機能が低下している
  • 1日平均純エタノール60g以上の飲酒
    ※女性は1日40g程度の飲酒でもアルコール性肝障害をおこす可能性があります
    ※純エタノール60gの目安は、日本酒3合、ビール(350mL)缶3本程度
  • 禁酒により採血結果(血清AST、ALTおよびγ-GTP値など)が改善する
  • 肝機能検査(肝炎ウイルスマーカー、抗ミトコンドリア抗体、抗核抗体など)が陰性である

ここでは、アルコール性肝炎の症状と診断基準について解説していきます。

アルコール性肝炎の症状

アルコール性肝炎では主に以下のような症状があらわれます。

  • 食欲がなくなる
  • 体のだるさ
  • 熱が出る
  • 体のむくみ
  • 黄疸(全身が黄色っぽくなる)など

アルコール性肝炎は、初期段階では自覚症状が出にくいため、これらの症状があらわれたころには、病状が進行している可能性があります。

アルコール性肝炎の診断基準

アルコール性肝炎の診断には、肝機能の検査や飲酒歴の確認、またアルコール以外の原因による肝障害でないかを確認する必要があります。

JASBRAアルコール性肝障害診断基準(2011年版)」では以下の通り、アルコール性肝炎の診断基準が定められています。

  • 1)肝組織病変の主体が肝細胞の変性・壊死であり、小葉中心部を主体とした肝細胞の著明な膨化(風船化、ballooning)
  • 2)種々の程度の肝細胞壊死
  • 3)Mallory体(アルコール硝子体)
  • 4)多核白血球の浸潤を認める

a.定型的:1)〜4)のすべてを認めるか、3)または4)のいずれかを欠くもの
b.非定型的:3)と4)の両者を欠くもの

※背景肝が脂肪肝、肝線維症あるいは肝硬変であっても、アルコール性肝炎の病理組織学的特徴を満たせば、アルコール性肝炎と診断する。
(参考:JASBRAアルコール性肝障害診断基準(2011年版)

アルコール性肝炎を放置するとどうなる?

アルコール性肝炎を放置し治療が遅れると、肝臓の機能低下を早めてしまいます。前述の症状が出るころには病気が進行している可能性があるので、早期発見が大切です。病状の進行に伴い肝臓の機能が損なわれた結果、「重症型アルコール性肝炎」という命にかかわる重い病気につながる可能性が高まります。

アルコール性肝炎の治療を放置すると、重症化し命の危険に関わることもあるため、一刻も早く医療機関を受診する必要があります。飲酒は治療薬を組み合わせることでコントロールができる病気です。普段の飲酒習慣に不安がある方は放置せず、早めに医療機関を受診し適切な治療を受けるようにしましょう。

アルコール性肝炎の治療と費用

アルコール性肝炎の治療で最も重要なのは、アルコールを摂取しないことです。アルコールの摂取を完全に断つことで、肝臓の修復や回復が期待できます。

断酒が難しい場合、まずは飲酒量を減らす努力をしてみましょう。適切な飲酒量の目安は厚生労働省の「健康日本21」にて、1日平均純アルコールで約20gと定義されています。主な酒類の純アルコール量の目安は以下の通りです。

主な酒類の純アルコール量目安

  • ビール中瓶1本(500ml):約20g
  • 清酒1合(180ml):約22g
  • ウイスキー・ブランデーダブル(60ml):約20g
  • 焼酎(35度)1合(180ml):約50g
  • ワイン1杯(120ml):約12g

参考:厚生労働省「健康日本21」アルコール

多くの人がご存じの通りアルコールは依存性が高く、「治療のため」という目的であっても、断酒が難しいというケースも少なくありません。そういった場合には、飲酒欲求を抑える効果のある「セリンクロ錠」という薬が使われることがあります。セリンクロ錠とは、もともとアルコール依存症患者の治療薬として開発された薬で、日本では2019年より販売が開始されました。

アルコール性肝炎の患者においても、セリンクロ錠の投与により、飲酒量の低減と肝機能の改善が認められたという報告がありますが、現在(2023年時点)まだ処方可能な内科は少なく、専門医のいる医療機関にて治療を行う必要があります。

アルコール性肝炎の治療には、断酒とあわせて食生活の改善も効果的であることが分かっています。アルコール性肝炎の患者さんは、食事の栄養バランスが偏っていることも多く、以下のような食生活を心がけることが重要です。

  • 適正なエネルギー量を摂取する
  • 栄養バランスのとれた食事を心がける
  • 脂肪分の多い食事は控える

またアルコール性肝炎の病状が進行している場合は、肝臓の炎症をおさえるためのステロイド剤(内服薬または注射薬)が投与されることもあります。ステロイド剤は副作用が出ることもあり、また自己判断で薬を途中で辞めると合併症を引き起こすこともあるので、必ず医師の指示に従って服用することが重要です。

アルコール性肝炎の治療費(3割負担の場合)
初診料:約5,000~10,000円(検査費込)
再診料:約1,000~2,000円

アルコール性肝炎の治療費は、使用する薬剤や検査内容によって変動します。初診では、診断に必要な場合、MRIやCT、腹部エコーや肝生検などの検査を行うことがあります。

まとめ

アルコール性肝炎の治療において最も重要なことは、原因である飲酒を断ち、健康的な生活習慣を送ることです。断酒は基本的な治療ですが、すぐにやめられない場合は飲酒量を減らす、適切な治療薬の服用などが推奨され、治療の選択肢が広がりました。

アルコール性肝炎は、日頃の生活習慣を見直すことでリスクを減らすことができる病気です。放置せず、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。