【医師監修】子宮頸がん検診で異常が見つかったら?検査や治療について解説

2023.09.28

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監修医師:馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)
筑波大学医学専門学類卒業 。 現在は宮の沢スマイルレディースクリニック(札幌市)院長として勤務 。専門は産婦人科。

子宮頸がんは20~40代の若い女性での罹患率が高いがんです。主に性交渉によって感染するHPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスが原因で子宮頸がんが発症するといわれており、性交渉の経験のある女性であれば誰しもがこのHPVに感染している恐れがあります。

子宮頸がんの治療に最も重要なことは「早期発見・早期治療」です。定期的に子宮頸がん検診を受けて異常がないかどうかを調べる、そしてもし異常が見つかった場合にはすぐに精密検査や適切な治療を受けることが大切です。

子宮頸がん検診で異常が見つかったとなると不安な気持ちが大きいでしょうが、すぐに「がん」だと確定するわけではありません。

この記事では、子宮頸がん検診とは何か、そして異常が見つかった場合の精密検査や治療について詳しく解説していきます。

子宮頸がん検診とは

子宮頸がん検診は、子宮頸がんの早期発見を目的とした非常に重要な検査です。

子宮頸がん検診は、20歳から65歳までの女性に、2年に1回受けることが推奨されています。現在は多くの市町村で子宮頸がん検診の公費補助があるため、自己負担の金額も少なく検査が可能です。

もしかしたらこれまで子宮頸がん検診を受けたことがあっても、実はどんな検査かよく知らないという方もいらっしゃるかもしれません。ここでは、子宮頸がん検診とは何か、そして子宮頸がん検診で分かる異常の種類について解説していきます。

子宮頸がん検診とは

子宮の膣側近くである子宮頸部にできるがんを「子宮頸がん」といいます。子宮頸がん検診は、子宮頸部の細胞を採取し、顕微鏡で観察することで、がんやがんになる前の病変の有無を調べる検査です。

子宮頸がんはHPV(ヒロパピローマウイルス)というウイルスが関係していることが分かっています。HPVは主に性交渉によって感染するため、性交渉の経験がある女性であれば誰しもがHPVに感染している可能性があります。

子宮頸がん検診には「子宮頚部細胞診」と「HPV検査」の2つの方法があります。それぞれの違いについてみていきましょう。

子宮頚部細胞診

子宮頚部細胞診とは、子宮頚部(子宮の入り口)からブラシや綿棒のような器具を使って細胞をこすり取る検査です。採取した細胞は顕微鏡で観察し、異常がないかどうかを調べます。現在日本で行われている「子宮頸がん検診」というと一般的にはこの子宮頚部細胞診のことをさします。人によっては違和感が生じることもありますが、比較的痛みは少なく短時間で終わる検査です。

HPV検査

HPV検査とは、子宮頚部細胞診と同様に子宮頸部から細胞を採取し、HPVに感染しているかどうかを調べる検査です。発がん性の高いHPVを検出する検査で、細胞診や組織診の結果と合わせて診断に使われます。

医療機関によっては、子宮頚部細胞診とHPV検査は一度の検査でどちらも調べることができることもあります。

子宮頸がん検診で「異常あり」と診断されたら

子宮頸がん検診で「異常あり」という結果を受け取った方は、自分はがんなのではないかと不安な気持ちに襲われてしまうことでしょう。しかし子宮頚がん検診で異常が見つかったからといって、すぐに「がん」と診断されるわけではありません

子宮頸がん検診で異常が見つかった場合、まずは再検査や追加検査が必要となります。もちろん異常が見つかった場合でも、がんでない可能性もあります。

ここでは、子宮がん検診で分かることや、子宮頸がん検診の再検査について解説していきます。

子宮頸がん検診でわかること

子宮頸がん検診では、がんになる前の「子宮頸部異形成」といわれる状態が見つかることも多いです。子宮頚部異形成は、通常の細胞の状態とは異なっているものの、それ自体ががんだというわけではありません

子宮頚部異形成は、病変の程度によってCIN1(軽度)・CIN2(中等度)・CIN3(高度・上皮内がん)の3種類に分類されます。

軽度や中等度の異形成であれば、自然に消滅してしまうことも多く、すぐに治療が必要になるわけではありません。ただし、場合によってはがんに進行してしまうこともあるため、異形成と診断された場合は、必ず医師の指示に従い定期的に検査を受ける必要があります

また細胞の異常があるかどうか判別ができない場合ASC-USという結果が出ることもあります。ASC-USは簡単にいうと「子宮頸がん疑いの疑い」という状態です。追加検査、または6か月後の再検査によって異常の有無を調べます。

子宮頸がん検診の再検査について

子宮頸がん検診で細胞の異常が認められた場合には、一般的にはコルポスコピー検査という精密検査を行います。

コルポスコピー検査とは、コルポスコープという専用の顕微鏡を使い、子宮頚部の異常を細かく観察する検査のことです。検査の結果、病変が疑われる箇所を数mm程度切除し、病理組織診をすることで確定診断を行います。

コルポスコピー検査はほとんどの場合痛みは軽微であり、短時間(10~15分程度)で終わる検査です。ただし人によっては痛みが強く感じることや、過去の婦人科検診の経験から強い不安を感じる方もいます。その際は、我慢せずに必ず医師に相談するようにしましょう。また子宮頚部細胞診でASU-US(細胞の異常があるかどうか不明な状態)という結果が出た場合は、すぐにコルポスコープ検査は行わずに、HPV検査にてハイリスク型のHPVの感染があるかどうかを調べることもあります。

子宮頸がんの治療と費用について

子宮頸がん検診で子宮頸がん、または前がん病変(高度異形成・上皮内がん)が見つかった場合は、がんの進行度合いに合わせた治療が行われます。

子宮頸がんの治療について

子宮頸がんは早期発見・早期治療が最も重要です。もし異形成の段階で発見されれば、「円錐切除術」という子宮頸部の一部だけを切除する手術が行われるケースが多いです。円錐切除術であれば子宮が温存できるため、今後の妊娠・出産を希望される方においては、第一治療として選択されます。

他にも、がんの進行度合いや年齢、健康状態などにあわせて、子宮全摘手術や放射線治療、薬物治療などの選択肢が検討されます。

子宮頸がんの治療については、女性の今後のライフステージにも影響を及ぼすこともあるため、担当医師とよく相談しながら決定していくことが重要です。

子宮頸がんの治療費用について

子宮頸がん検診にて異常が見つかった場合、まずは産婦人科で精密検査を行う必要があります。精密検査の費用目安は以下の通りです。

子宮頸がん精密検査の費用(3割負担の場合)
コルポスコピー検査+細胞診:約5,000~1万円
HPV検査:約3,000~5,000円

精密検査の結果、子宮頸がんの治療が必要になった場合の費用目安は以下の通りです。

子宮頸がん治療の費用(3割負担の場合)
円錐切除術:約5~7万円(2泊3日の場合)
腹腔鏡手術:約25~30万(5~7泊程度の場合)
開腹手術:約50万(2週間程度の場合)

上記治療費については、治療内容や医療機関によっても大きく異なることがあります。また治療費については、医療費控除や補助制度の対象となることもあります。詳しくは医療機関やご加入の健康保険組合にお問合せください。

まとめ

子宮頸がんの早期発見・早期治療には、定期的に子宮頸がん検診を受診することが重要です。もし子宮頸がん検診で異常が見つかったとしても、それがすぐにがんだと確定するわけではありません。まずは精密検査を受けて、病変の状態を確認し、必要に応じて適切な治療を受けるようにしましょう。

子宮頸がんの治療においては、今後妊娠出産を希望するかなど、女性のライフステージにあわせた治療方法が検討されます。担当の医師とよく相談したうえで、最も適切な治療方法を選択することが重要です。