【医師監修】低用量ピルの効果と費用について

2023.07.04

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監修医師:馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)
筑波大学医学専門学類卒業 。 現在は宮の沢スマイルレディースクリニック(札幌市)院長として勤務 。専門は産婦人科。

低用量ピルは避妊目的だけでなく、辛い生理痛やPMS、子宮内膜症などの月経に関するさまざまな症状を改善する効果があります。

日本は諸外国と比べても、低用量ピルの普及率は依然として低いままです。それはもしかすると、低用量ピルの正しい知識が広まっていないことが一因かもしれません。

そこで今回は、低用量ピルとは何か、その効果や費用について医師監修のもと詳しく解説していきます。

低用量ピルとは

低用量ピルとは、経口避妊薬の一種であり、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲスチン)が配合されたホルモン剤のことです。

低用量ピルは1日1錠、決まった時間に服用します。低用量ピルの種類や服用目的によって、21日間連続して服用した後に7日間の休薬期間を設ける場合や、休薬期間を挟まず連続して服用する場合があります。

低用量ピルを服用している間は、排卵が止まり、高い避妊効果が得られます。また低用量ピルは避妊目的以外にも、女性にとって嬉しいさまざまな効果が期待できます。

ここでは低用量ピルの効果や副作用について詳しく解説していきます。

低用量ピルの効果

低用量ピルを服用することで期待できる効果は以下の通りです。

避妊効果

低用量ピルは正しく服用することで避妊率99.7%と高い避妊効果が得られます。ただし低用量ピルには性感染症の予防効果はないため、適切なコンドームの使用も必要です。

月経困難症、PMSの改善

低用量ピルは月経困難症(月経痛や頭痛、イライラなど)やPMS(月経前症候群)の治療薬としても用いられることがあります。月経痛などの原因となる「プロスタグランジン」という物質が抑制され、辛い症状の改善が期待できます。

子宮内膜症の改善

低用量ピルは子宮内膜症の治療薬としても用いられることがあります。子宮内膜症とは、本来子宮の内側にある「子宮内膜」という組織が、子宮の中以外の場所(腹膜、卵巣、卵管、腸など)に発生する病気です。低用量ピルを服用することで子宮内膜を薄くし、子宮内膜症の進行を抑える効果が期待できます。

月経周期の調整

受験や試合、結婚式や旅行など、大事な予定と月経が重なりそうな時には、低用量ピルを服用することで月経周期の調整が可能です。低用量ピルを服用することで、月経を遅らせるもしくは早めることができるので、産婦人科で相談してみましょう。

卵巣がん・子宮体がんの予防

低用量ピルの使用により、卵巣がんや子宮体がんの発生リスクが低下するという研究結果が報告されています。しかし一方で、長期間低用量ピルを服用することで子宮頸がんの発症リスクは高まる可能性があります。

低用量ピルの副作用

前述の通り、低用量ピルは女性にとって嬉しい効果が多く期待できますが、副作用についてもよく理解しておく必要があります。

低用量ピルの副作用の程度は人それぞれ異なります。一般的には、以下のような副作用が多く報告されています。

  • 血栓症
  • 吐き気
  • 不正出血
  • むくみ   など

低用量ピルの服用で最も気をつけるべき副作用は「血栓症」です。血栓症とは、血液中にできた血栓(血のかたまり)が血液の流れを阻害してしまう病気のことです。

血栓症は最悪の場合、命にかかわることがある病気です。そのため血栓症が疑わしい場合には血液検査で血栓症をチェックする必要があります。

特に喫煙者や肥満者、40代以降などは血栓症を引き起こすリスクが高まるため、一般的に低用量ピルの服用は推奨されていません。

低用量ピルを飲み始めて最初の頃は吐き気や不正出血などの副作用があらわれることもあります。しかしこれは一時的なものであることが多く、ほとんどの場合服用を続けていくことで副作用は落ち着いてきます

また低用量ピルの副作用として「太りやすくなる」という話を聞いたことがある人もいるかもしれません。現在処方されている低用量ピルに「太りやすくなる」という副作用はありませんが、むくみや食欲増加により一時的に体重が増えてしまう方もいます。一般的にはこれらのむくみや食欲増加も、時間が経てば落ち着くケースが多いですが、もしひどいむくみで足の痛みなどが生じる場合は医師に相談するようにしましょう。

低用量ピルは体に悪い?

低用量ピルを服用して排卵を止めるというと、「体に悪そう」という印象を持つ方もいるかもしれません。また中には「ピルを飲むと妊娠しづらくなる」という話を聞いたことがある方もいるでしょう。

しかしこれらは誤った認識であり、むしろ低用量ピルを服用して、いざ妊娠したい時に服用を止めれば妊娠の可能性が高まるとの報告もあります。

日本は諸外国と比べても低用量ピルの普及率は低く、低用量ピルの服用にマイナスイメージを持っている方も少なくありません。低用量ピルは避妊目的だけでなく、月経困難症や子宮内膜症の治療にも使われる薬です。適切に使用することで、女性の体にとってさまざまなメリットがあるということを覚えておきましょう。

もちろん前述の通り、血栓症などをはじめとする副作用のリスクは伴うため、必ず定期的に健康状態をチェックしながら医師の指導のもと適切な服用を行うことが重要です。

低用量ピルの費用

現在日本で処方されている低用量ピルにはいくつかの種類があります。医師の診察のもと、服用の目的や治療方法によってどの低用量ピルを使用するかどうかが決まります。

避妊目的や月経周期の調整のために低用量ピルを服用する場合は、自由診療(全額自己負担)となりますが、月経困難症や子宮内膜症の治療目的で低用量ピルが処方された場合は保険適用(通常3割負担)となります。

低用量ピルの費用目安は以下の通りです。

低用量ピルの費用目安

3割負担の場合:約500~2,500円(1シートあたり21日または28日分)
 ※フリウェルで約500~600円、ヤーズフレックスで約2
,300~2,400円の自己負担

自由診療の場合:約2,500~3,000円(1シートあたり21日または28日分

近年、オンライン診療にて低用量ピルの処方を行っている産婦人科も増えてきました。しかしオンライン診療の場合は、月経困難症や子宮内膜症などの病気の有無については診断ができないため、原則自由診療(全額自己負担)のみとなります。

もし月経痛などの症状がある場合には、必ず産婦人科を受診し、医師の診察を受けるようにしましょう。

まとめ

低用量ピルには、避妊効果だけでなく、月経関連の辛い症状を改善させるなど、女性にとって嬉しい効果がたくさんあります。しかし血栓症などの副作用のリスクもあるため、定期的に産婦人科で診察を受けながら、医師の指示に従って適切に服用していくことが重要です。

月経困難症や子宮内膜症などの治療目的で服用する場合は、保険適用となることがありますので、詳しくはお近くの産婦人科にてご相談ください。