若年性白内障とは〜最新治療と気になる費用〜
監修医師:郷 正憲(徳島赤十字病院)
保有免許・資格は日本麻酔科学会専門医、ICLSコースディレクター、JB-POT。主な著書は『看護師と研修医のための全身管理の本』。
白内障というと、高齢者に発症する病気だというイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、最近では10~30代の若い方であっても白内障を発症する方が増えてきました。
若年性白内障は、加齢性白内障と比べて進行が早いことも多く、気になる症状があらわれた場合には早めに検査・治療を受けることが大切です。
ここでは若年性白内障の症状や原因について、また最新の治療や費用について医師監修のもと詳しく解説していきます。
若年性白内障とは
白内障とは、さまざまな要因で眼のレンズの役割を果たす水晶体が濁ってしまう目の病気をさします。白内障は一般的に老化現象の一つであると考えられており、50代以降での発症が多いといわれていますが、近年20~30代の若年層であっても白内障の症状がみられるケースが増えてきました。これを「若年性白内障」といいます。
ここでは、若年性白内障の症状や原因について詳しく解説していきます。
若年性白内障の症状
若年性白内障の主な症状は以下の通りです。
- 視界が霞んではっきり見えない
- 明るいところに行くと強い眩しさを感じる、視界が真っ白になる
- 物が重複して見える など
若年性白内障では、眼のレンズ機能である水晶体が濁ることで、上記のような視機能に関する症状があらわれます。
高齢者が発症する「加齢性白内障」と比べて、若年性白内障は病状の進行が早いケースが多くみられます。加齢性白内障は、加齢に伴い徐々に症状が悪化していくのに対して、若年性白内障は早ければ数か月程度で視力が急激に悪化することもあります。
若年性白内障の原因
若年性白内障の原因はいまだ解明されていない部分もありますが、主に以下のような原因があると考えられています。
外傷性白内障
外傷性白内障とは、眼を打撲したり、強く眼をぶつけたりと何らかの強い衝撃が眼に加わることで発症するものをさします。主にスポーツをしている方に多くみられます。
アトピー性白内障
アトピー性白内障とは、アトピー性皮膚炎を患っている方に発症するものをさします。アトピーによるかゆみで眼の周囲を強くこする行動が眼の負担となっている場合や、治療でステロイド薬剤を長期的に使用した場合など、さまざまな要因が重なることで発症しやすいといわれています。
糖尿病性白内障
糖尿病性白内障とは、糖尿病を患っている方に発症するものをさします。糖尿病を発症すると、血管が細くなるため眼の病気を発症しやすくなります。なかでも代表的なのは、糖尿病性網膜症といわれるものですが、この病気から派生して白内障を発症する方が多くいます。
薬剤性白内障
薬剤性白内障とは、長期的にステロイド剤などを服用している方に発症するものをさします。主に、喘息などの持病でステロイド内服コントロール中の方に多くみられます。ステロイドの影響により白内障を発症した場合は、進行のスピードが速いという特徴があるため、気になる症状があれば早めにかかりつけの医師に相談するようにしましょう。
若年性白内障を放置するとどうなる?
若年性白内障は前述の通り、加齢性白内障と比較すると進行が早いケースが多くみられます。若年性、加齢性問わず白内障は一度発症してしまうと、自然治癒することは望めません。
気になる症状があらわれているにも関わらず、治療をせずに放置してしまうと、最悪の場合失明につながることもあります。また失明に至るまでにも、視力の低下に伴い日常生活に支障があらわれたり、他の目の病気(ぶどう膜炎や緑内障など)を引き起こすこともあります。
見え方がいままでと違う、急激に視力が低下したなどの気になる症状があれば、必ず早めに眼科を受診するようにしましょう。
若年性白内障の治療と費用
若年性白内障が疑われる症状がある場合、眼科では視力検査やコントラスト検査、顕微鏡検査などを用いて診断の確定が行われます。若年性白内障と診断された場合は、主に薬物療法または手術療法を用いた治療が検討されます。
薬物療法
若年性白内障が軽度であり、日常生活にほとんど支障をきたしていない場合は、薬物療法による治療が選択されるケースが多いです。主にピレノキシン製剤やグルタチオン製剤といった点眼薬を用いて、若年性白内障の進行を遅らせることを目的とした治療が行われます。 ただし、これらの薬物療法では若年性白内障を根本的に治すことはできないため、病状の進行や日常生活に支障をきたすようになってきた場合には、手術療法が検討されます。
手術療法
若年性白内障の手術療法では、濁ったレンズを取り出して、代わりに人工のレンズを挿入する手術が行われます。若年性白内障の手術は一般的に短時間で終了するため、日帰り手術を行っている医療機関も多いです。
挿入する人工レンズについては、事前に眼の状態に合った度数のレンズを確認したうえで、主治医と相談して決定します。レンズは種類によって、保険適用の「単焦点レンズ」と自由診療(全額自己負担)の「多焦点レンズ」があります。
・単焦点レンズ(保険適用)
単焦点レンズとは、ピントを1点に合わせているレンズです。近くか、遠くか、またはその中間かのどれか1つに焦点を合わせるので、人によっては手術後も眼鏡やコンタクトレンズの併用が必要なケースもあります。
単焦点レンズの費用(3割負担の場合)
約4〜5万円(片眼)
多焦点レンズでは、遠く、近く、またはその中間の複数にピントを合わせることができるレンズです。遠くも近くも見やすくなりたいという、遠近両用をご希望される方に適したレンズです。多焦点レンズのデメリットとしては遠近両方に対応が可能な分、人によってはピント調整がしづらく感じ、慣れるまでに時間がかかることが挙げられます。多焦点レンズの種類は多岐にわたるため、自身の視力や乱視の度合いに合わせたレンズを選択できます。原則自由診療(全額自己負担)となりますが、保険適用の手術費用にレンズの差額分を支払うことで多焦点レンズを選択できるものもあります。
多焦点レンズの費用
一部保険適用のもの:約30~40万(片眼)
全額自己負担のもの:約50~60万(片眼)
全額自己負担の多焦点レンズは、主に日本では未認可の最新のレンズとなります。他のレンズではピントが合わなかった方や、より性能や品質が高いレンズを希望する方に勧められます。
まとめ
若年性白内障は数か月といった早いスピードで急激に視力低下が起きることもあり、また症状は自然に良くなることはありません。
白内障は10~30代の若年層であればまだ年齢的に関係ないと思ってしまいがちですが、近年若年性白内障を発症する方も増加傾向にあるため、気になる症状があれば早めに眼科を受診するようにしましょう。