関節リウマチとは~最新治療と気になる費用~
監修医師:郷 正憲(徳島赤十字病院)
保有免許・資格は日本麻酔科学会専門医、ICLSコースディレクター、JB-POT。主な著書は『看護師と研修医のための全身管理の本』。
「最近、手のこわばりを感じる」「手足の指が動かしにくくなった」。そう感じる方は、ひょっとして「関節リウマチ」かもしれません。
「関節リウマチ」は難しい病気ではありますが、いたずらに恐れる必要はありません。早期に発見し、適切に治療すれば普通の日常生活を送ることも十分可能です。 今回は、関節リウマチの初期症状や原因、また治療方法や気になる費用について解説します。
関節リウマチとは
関節リウマチとは、関節が免疫の異常により慢性の炎症を起こし、軟骨や骨が破壊されることによって関節が変形してしまうやっかいな病気です。
患者数は全国で70-80万人いると推定され、これまでは30-50歳代の女性がピークとされていましたが、最近は高齢化に伴い60歳代女性の発症が最も多く、高齢女性の増加が問題視されています。
関節リウマチの症状
関節リウマチの比較的初期に現れる症状として、以下が挙げられます。
- 朝、目覚めたときに手足の指などの関節が動かしにくい
- 関節が痛い
- 関節が熱をもって腫れる
- 37℃台の微熱や倦怠感、食欲不振が続く など
また痛みや腫れが手足の関節に発症しやすく、左右の関節で同時に起きるのも関節リウマチの大きな特徴です。
進行すると関節の軟骨や骨が破壊され、関節リウマチ特有の変形が起こったり、患者さんによっては膝関節や股関節などの大きな関節に水が溜まって痛みを生じ、日常生活が困難になる場合もあります。
関節リウマチの原因
関節リウマチは、いまだはっきりした原因はわかっていませんが、遺伝的要因や細菌・ウイルスの感染などによって、免疫が自分自身の組織を攻撃することで起こる「自己免疫疾患」と考えられています。
もともと「免疫」は、体内に侵入してきた細菌やウイルスなどを攻撃し、追い払う働きがありますが、何らかの原因で免疫異常が起きると、誤って自分自身の細胞や組織を攻撃してしまうようになります。
そのため組織が炎症を起こし、徐々に関節の周りを取り囲んでいる滑膜に炎症が進み、さらには骨や軟骨を破壊するというのが関節リウマチのメカニズムです。
関節リウマチの診断基準
関節リウマチの診断は、各種の検査や細かい基準により総合的に判断されます。なぜなら、一口に関節の腫れや痛みと言っても、膠原病や、ある種のウイルス感染、または変形性関節症でも同じような症状が見られるからです。
例えば、がんであれば「がん細胞」を見つけることで確定診断ができますが、関節リウマチの場合は、他の病気にあるような明確な診断基準がないため、「分類基準」というものを使って点数を付け、診断を行っています。
ちなみに現在日本で使われているのは、2010年に米国および欧州リウマチ学会が合同で発表した「関節リウマチ分類基準」です。
何科を受診すればいいの?
関節が腫れる・痛いなどの症状があれば「整形外科」を受診するのが一般的ですが、本来は免疫疾患からくる病気なので、家族にリウマチの既往症があるとか、限りなくリウマチの症状が疑われる場合は、経験豊富なリウマチ専門医にかかるのが近道です。
関節リウマチの検査方法
関節リウマチは上記の「関節リウマチ分類基準」を元に診断されるほか、血液検査や画像検査、関節超音波(エコー)検査、関節MRI検査などが行われます。
血液検査
関節リウマチの診断に血液検査は非常に重要です。
自分に反応する抗体の一つである「リウマトイド因子(RF)」は、リウマチ患者さんの70‐80%に見られますが、リウマチ以外の病気や正常な人でも陽性反応が出ることがあるため確定には至りません。
一方、抗シトルリン化ペプチド/蛋白(CCP)抗体は、リウマチ以外で見られることは少ないため、大きな手がかりとなります。
画像検査
関節のレントゲン(X線)検査をすることで、骨や軟骨にリウマチ性の変化がないか確認することができます。
例えば、骨が欠けることによって起きる「骨びらん」という状態は、リウマチに特徴的な所見で、骨が破壊されることによって起きる症状です。
関節超音波(エコー)検査、関節MRI検査
炎症が進み軟骨が壊されると、関節の骨と骨のすき間が狭く見えますが、レントゲン(X線)検査のほかに、関節超音波(エコー)検査、関節MRI検査を実施することで、より早期の診断が可能になりました。 特に関節MRI検査は、診察ではわからない関節の炎症を見ることができるので、リウマチの診断に多く使われるようになりました。
関節リウマチの治療方法
関節リウマチの治療方法には、「薬物療法」「リハビリテーション」「手術療法」などがあります。
薬物療法
関節リウマチの基本は「薬物療法」です。
具体的には、抗リウマチ薬、免疫抑制薬、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)、副腎皮質ステロイド、生物学的製剤、JAK阻害薬などを使用します。
その中でも、関節リウマチ治療の中心として認知されているのは、免疫抑制作用のある抗リウマチ薬「メトトレキサート」です。
メトトレキサートのメリットは、他の抗リウマチ薬と比べて比較的早く効果が現れること、また、その後3〜6か月間にわたって効果が増強することです。
一方で、口内炎、脱毛、吐き気、貧血、肝機能の異常などの副作用も少なくありませんが、関節リウマチに対する効果が高いため、現状では第一選択の治療法です。
ちなみに「抗リウマチ薬」は、発症3か月以内の早期から使用を開始することで、より効果を発揮できると言われており、早期発見・早期治療が重要であることは言うまでもありません。
リハビリテーション
薬物治療を行うと同時に、からだの機能を回復する運動療法、理学療法、作業療法、補助具を使ったリハビリテーションも有効です。
特に、手の指先でつまむ運動や指の握り開きなどの「リウマチ体操」や、温熱、光、超音波などの刺激を利用して血液の循環をよくする「理学療法」などが効果的です。
手術療法
関節リウマチの治療は内科的治療が一般的ですが、症状が長期にわたり全身の関節に炎症が及ぶと、まれに関節や背骨の手術が必要になる場合もあります。
関節リウマチ治療にかかる費用
関節リウマチの治療は、発病してから10〜20年と長い間継続して治療が必要な場合もあり、経済的な負担が伴うことが少なくありません。
特に関節リウマチの治療に高い効果を発揮する「生物学的製剤」は、体重50kgの患者さんであれば、自己負担額が1カ月あたり30,000〜40,000円とかなり高額です。
また関節リウマチは、病気の性質上、関節のつらい痛みや歩行障害などで日常生活に支障をきたすことが多いため、移動にタクシーを使う、介護者を付けるなど、目に見えない負担を強いられるのもこの病気の特徴です。
まとめ
今回は、関節リウマチの症状や治療方法について解説しました。
最近の研究で、関節破壊は発症後の比較的早い時期からすでに進行していることがわかってきました。つまり早期に発見して適切な治療を行えば、症状をコントロールしながら、普通の日常生活を送ることも十分可能です。
気になる症状があれば早めにリウマチ専門医の診察を受け、万が一、関節リウマチだと診断された場合は、一日も早く治療を開始することが大切です。