【医師監修】糖尿病の寿命とは?糖尿病を悪化させない対策を紹介

2023.06.21

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監修医師:甲斐沼 孟(TOTO関西支社健康管理室)
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科を卒業後、心臓血管外科として勤務。国家公務員共済組合連合会 大手前病院 救急科医長を務め、現在はTOTO関西支社健康管理室に産業医として勤務。

「糖尿病になると長生きできない」「寿命が短くなる」というような話を聞いたことがあるでしょうか。糖尿病は、進行すると体のさまざまな部位に合併症を起こす可能性がある病気です。そのため、「糖尿病ではない人と比べると寿命が短い」といわれてきました。

今回は、糖尿病と寿命との関係、また糖尿病を悪化させないための対策について解説していきます。

糖尿病患者と健康な人との寿命の違い

以前は、糖尿病のある方は健康な方と比べると寿命が10年以上短いといわれていました。しかし年々その差は縮まってきていて、現在はさほど違いがありません。実際、30年前と比較すると、糖尿病の方の平均寿命は8〜10年ほど伸びています

ただし、免疫の異常などが原因で発症する「1型糖尿病」の方は、遺伝や生活習慣の影響で発症する「2型糖尿病」の方よりも短命の傾向があるのは事実です。

イギリスの調査では、70歳まで生きる人の割合は、健康な方では80%前後である一方、1型糖尿病のある方は50%前後でした。この差は、1型糖尿病が思春期ごろに発症するために罹病期間が長いことが原因の一つであると考えられます。それでも、30年前と比較してみると、1型糖尿病の方の寿命も15年ほど伸びています

現在は、1型糖尿病の方への膵臓移植など新しい技術の開発もすすめられており、さらに寿命が伸び、2型糖尿病と同様に健康な人とほとんど変わらないレベルになるかもしれません。

糖尿病患者の寿命が伸びている理由

糖尿病のある方の死因として、以前は慢性腎不全(腎臓病)や心筋梗塞、脳梗塞が多くを占めていました。これらの病気は、糖尿病によって血管がダメージを受けることで生じるものです。

ところが現在では、糖尿病がない方と同じく、死因の1位は「がん」になっています。糖尿病から心筋梗塞や脳梗塞を発症する方もいますが、割合は大きく減りました。

これは、治療薬が進歩し、一人ひとりに合った薬を選べるようになったことが要因の1つであると考えられます。糖尿病の薬は種類が増え、糖質の消化・吸収を調整する薬、インスリンの分泌を促す薬、インスリンを効きやすくする薬など、一人ひとりの体の状態にあわせた適切な薬を使うことで血糖値のコントロールが可能になりました。

また、食事や運動を変えることが血糖値の改善に役立つという実際のデータに基づき、患者さんが努力した結果でもあります。

一人ひとりに合った薬を選べるようになったこと、患者さんが食事や運動の改善を意識しておこなったことで、血糖値のコントロールが改善され、寿命が伸びてきたというわけです。

糖尿病を悪化させないためには?

糖尿病は「食事制限がきつい」「通院がめんどう」のようにマイナスイメージをお持ちの方が多く、発症するとショックを受けてしまう方も少なくありません。

ですが、きちんと治療し対策を取ることで、糖尿病のない方と同様、合併症をおこさず元気に過ごすことができる病気です。血糖値のコントロールをしっかりおこなえば、糖尿病のない方と同じような生活を送ることができます

そのためには、糖尿病を悪化させない、合併症を発症させない対策をとることが重要です。ここでは、糖尿病を悪化させないための効果的な対策をお伝えします。

まずは10分体を動かす

運動をおこなうことで、分泌されるインスリンが効きやすくなる(インスリン抵抗性が改善される)ことがわかっています。

とはいえ、ジムに通ったり、ランニングをしたりはハードルが高いと感じる方も多いでしょう。そういった方は、まずは日常生活の範囲で体を動かすことをおすすめします。

通勤のときに1駅分歩く、エレベーターではなく階段を使うなど、できる範囲で取り組んでみてください。ほんの少しからでも、続けることが大切です。

もっとできるという方は、1日に60分を目標に少しずつ体を動かす時間を伸ばしたり、週に何回かランニングやスイミング、サイクリングなど強度の高い運動を取り入れたりしましょう。

ただし、極度の高血糖の方、腎臓や心臓の悪い方、網膜症を合併している方など、運動をしてはいけない方もいます。運動を始める前に、必ず主治医に確認するようにしましょう。

肥満の方は減量を

肥満の方は、減量をすることでインスリンが効きやすくなり、血糖値のコントロールがよくなることがわかっています。例えば、BMIを41(高度肥満)から24(適正体重)に改善することで、寿命も4年弱伸びるといわれています。

「痩せ体型」まで目指す必要はありませんが、適正範囲の体重(BMI:18.5〜25)を維持できるようにしましょう。

  • BMIの計算方法
    BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

たとえば身長165cmで75kgの方であれば、「BMI = 75(kg)÷1.65(m)÷1.65(m) = 27.5」となり、もう少し減量した方がよいということになります。

調理方法を意識した食事

糖尿病の治療では「食事療法」もとても重要です。

とはいえ、あまり自炊をする習慣のない方にとって食事の改善は難しいと感じるかもしれません。また食事療法というと「調味料をきっちり計って自炊をしなくてはいけない」というイメージをお持ちの方も多いでしょう。ここでは、簡単に取り入れられる2つのポイントをご紹介します。

糖尿病の食事では、カロリーを抑える必要があります。そのためにまずは「調理方法を変える」ことを意識してみましょう。

一般的に茹でる・蒸す>焼く>炒める>揚げるの順に糖尿病の方にとっては、よくない調理方法になります。同じ豚肉料理でも、トンカツ(揚げもの)より豚しゃぶ(茹でる)を選ぶようにするだけでカロリーを大きく減らすことができます。外食のときにも使える方法ですので、ぜひ取り入れてみてください。

次に「バランスのよい食事」を意識してみましょう。糖尿病の場合でも、「絶対に食べてはいけない」という食材はありません。どんな食材だとしてもバランスが大切です。

野菜や海藻、きのこなど食物繊維の多い食材は、血糖値の上昇を穏やかにしてくれます。外食で丼物やパスタなどの一品料理をよく食べている方は、野菜の小鉢などがついてバランスのよい定食のメニューを選ぶようにしてみましょう。

糖尿病の方が食生活を改善してコレステロール値を下げることができれば、寿命が1年弱伸びることがわかっています。

まとめ

今回は、糖尿病と寿命との関係について解説しました。

以前は健康な方と比べて短かった糖尿病の方の寿命ですが、医療の進歩や患者さんの努力によって、健康な方とほとんど変わらないレベルになっています。

糖尿病の合併症をおこさず元気に過ごすために、運動をしたり食事に気をつけたりといったできることから始めてみましょう。