アトピー性皮膚炎 原因と治療法は?〜最新治療と気になる費用〜

2023.10.26

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監修医師:竹内 想(名古屋大学医学部付属病院)
医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積みました。 現在は主に皮膚科医・産業医として勤務しています。

皮膚の強いかゆみや湿疹などの症状があらわれるアトピー性皮膚炎。アトピー性皮膚炎というと、子ども特有のものというイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、大人でも注意が必要です。

アトピー性皮膚炎の患者数は近年増加傾向にあります。しかし、さまざまな治療薬の開発により治療の選択肢が広がってきました。

ここでは、医師監修のもとアトピー性皮膚炎の原因や治療法について、詳しく解説していきます。

アトピー性皮膚炎の患者数

2002年のアトピー性皮膚炎の患者数は、約32万人でしたが、2017年には約51万人と増加傾向にあります。

アトピー性皮膚炎は強いかゆみが生じることもあり、不登校や不眠など日常生活にも大きな影響を与えます。そのため、アトピー性皮膚炎は早期に治療していくことが重要です。

アトピー性皮膚炎は子どもに多い

一般的にアトピー性皮膚炎は、乳幼児や小児期に発症し、年齢を重ねるとともに治癒する傾向があります。

アトピー性皮膚炎の有症率は、生後4ヶ月から6歳で12%前後、20〜30代では9%前後となり、子どもに多い病気だと言えます。

大人でも油断はできない

子どもに多いアトピー性皮膚炎ですが、大人でも注意が必要です。

20〜30代の有症率が約9%でしたが、40代で4%、50〜60代でも2.5%の方がアトピー性皮膚炎で苦しんでいます。

また、男女別では、成人男性が5.4%、女性が8.4%と比較的女性が多い傾向があります。

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021」では、アトピー性皮膚炎は、増悪と改善を繰り返すかゆみのある湿疹を主病変とする疾患と定義されています。

また患者の多くは「アトピー素因」を持っているといわれています。

アトピー素因とは

① 家族歴・既往歴(気管支喘息,アレルギー性鼻炎,結膜炎,アトピー性皮膚炎のうちいずれか,あるいは複数の疾患)

または

② IgE 抗体を産生しやすい素因

アトピー性皮膚炎の症状

アトピー性皮膚炎は、強いかゆみがあらわれることが大きな特徴です。

かゆみの強さには個人差があり、「ムズムズ」「チクチク」「ジリジリ」と感じる場合があります。

またアトピー性皮膚炎は多くの場合、左右対称的な特徴的な湿疹があらわれます。湿疹は年齢によって出やすい部位が異なる傾向があります。

アトピー性皮膚炎の湿疹が出やすい部位

乳児期 : 頭、顔、胴体
幼児、小児期 : 首、手足の関節
思春期、成人期 : 頭、首、胸、背中

アトピー性皮膚炎の原因

アトピー性皮膚炎の原因は、皮膚バリア機能が低下することで、外からの刺激に皮膚が反応して炎症やアレルギー反応が起こることにあります。

特に、遺伝的な体質によるもの「遺伝的な要因」とアレルギー物質などの刺激による「環境的な要因」があると考えられています。

遺伝的な要因

家族にアトピー性皮膚炎や気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎などを発症している場合、子どもがアトピー性皮膚炎を発症する可能性が高くなります。

現在では、アトピー性皮膚炎に関連する遺伝子の候補が見つかっており、近い未来に原因が特定されることが期待されます。

環境的な要因

アトピー性皮膚炎の原因となる要因は、年齢によって違いがあります。

乳幼児期では食物アレルギーの原因となる食べ物の摂取、幼児期以降ではダニやハウスダストなどのアレルギー物質の接触などが原因になるといわれています。そのほかにも、汗や空気の乾燥、ウール素材、精神的ストレス、飲酒などもアトピー性皮膚炎を悪化させる可能性があります。

遺伝的な要因・環境的な要因以外にもアトピー性皮膚炎の発症要因となるものは非常に数が多く、また複数の要因が関係していることもあります。そのため原因の特定が困難なことも少なくありません。

アトピー性皮膚炎の治療法

アトピー性皮膚炎はさまざま発症要因が複雑に関係しているため、現時点ではアトピー性皮膚炎を根本的に治療する方法はありません

そのためアトピー性皮膚炎の治療目的としては、かゆみや湿疹などの症状を抑えて、皮膚バリアを正常に戻すことにあります。基本的には、スキンケアや部屋の掃除など日常生活でできるアトピー性皮膚炎の対策をおこなった上で薬物療法をおこないます。

薬物療法

アトピー性皮膚炎に使用される薬剤は主に、軟膏やクリーム、ローションなどの外用薬が使われます。また症状や体質にあわせて、抗ヒスタミン薬や漢方薬などの内服薬も併用することもあります。

近年では、抗がん剤やリウマチなどで注目される生物学的製剤がアトピー性皮膚炎の治療薬にも登場しました。アトピー性皮膚炎の治療薬の開発は、多くの製薬会社が手がけているため治療の選択肢が増えることが期待されています。

ステロイド外用薬

ステロイド外用薬は、炎症を抑える効果が非常に高く、アトピー性皮膚炎で起こる炎症も十分に抑えることが可能です。有効性や安全性についても科学的に立証されているため、アトピー性皮膚炎診療ガイドラインでも推奨されています。
ステロイド外用薬は、効果の強さで5段階にランクが分類されており、重症度によって使い分けられます。

タクロリムス外用薬

タクロリムス外用薬は、ステロイド外用薬とは違った作用によってアトピー性皮膚炎の炎症を抑えます
ステロイド外用薬が使用できない場合にも使用できる治療薬であり、顔や首周りの湿疹に効果が高いとされています。

しかし、かきむしって傷がある場合などでは使用できなかったり、薬効の強さがステロイド外用薬よりも低い場合があったりと、デメリットも存在するので使用には注意が必要です。

JAK阻害薬

細胞内のシグナル伝達を抑えることでアトピー性皮膚炎に関する物質が作られるのを防ぎます。

外用薬と内服薬が存在し、既存のアトピー性皮膚炎の治療薬では効果がない場合に使用することが可能です。外用薬では刺激感が少ないため顔などさまざまな部位にも使用できます。

シクロスポリン

2008年に登場したカルシニューリン阻害内服薬です。16歳以上で既存のアトピー性皮膚炎の治療薬では改善しなかった場合に使用でき、3ヶ月以内に休薬することが求められています。

生物学的製剤

生物学的製剤は、従来の化学的に合成した成分を使用した医薬品とは異なり、遺伝子組み換え技術や細胞培養技術などのバイオテクノロジーを使用して製造された医薬品です。
病気の原因となる部分を標的とするため一般的には治療効果が高いといわれています。しかし、治療効果には個人差があり、治療費も高額になるデメリットもあります。

アトピー性皮膚炎の治療費

アトピー性皮膚炎の一般的な治療費は、診察代や検査、医薬品代などで変化しますが、月3000〜10000円程度(3割負担の場合)が目安となります。

しかし、生物学的製剤やJ A K阻害薬などの高額な医薬品を使用する場合は、治療費が月に約60000円近くになる場合もあります。

普段からできるアトピー性皮膚炎対策

アトピー性皮膚炎における治療法として薬物療法以外にも、普段からのスキンケアと症状を悪化させる要因を取り除くことが重要です。具体的な対策について解説していきます。

スキンケア

アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が低下することで発症するので、皮膚を正常に保つ必要があります。皮膚バリアが低下する要因として皮膚の乾燥があります。
お風呂上がりや洗顔後などは皮膚が乾燥しやすいので乾燥しないように保湿剤を使用して乾燥肌対策してみると良いでしょう。

そのほかにも、汗や皮脂汚れが皮膚を刺激してアトピー性皮膚炎を悪化させることがあるので、入浴やシャワーなどで皮膚を清潔に保つことも重要です。

アトピー性皮膚炎の原因になるものを取り除く

乳児期では、食物アレルギーがアトピー性皮膚炎の原因となる場合もあるので、アレルゲンを含む可能性のある食事を避けると良いでしょう。

ダニやハウスダスト、花粉などもアトピー性皮膚炎を悪化させることがあるのでこまめな掃除や洗濯、マスクなどの着用も必要です。

まとめ

アトピー性皮膚炎の原因は遺伝性要因や環境的要因、またその他の要因が複雑に関係していると考えられています。

アトピー性皮膚炎は強いかゆみなどの症状により、日常生活に影響を与えることもあります。近年では、さまざまな治療薬の開発により治療の選択肢が増えてきました。患者さんごとの症状や体質にあわせた適切な治療を受けることで、辛い症状が抑えられます。

また薬物療法とあわせて、日頃からスキンケアやアレルゲンを取り除くことを心がけましょう。