不妊治療はいくらかかる?保険適用の範囲や治療費目安を解説

2023.09.22

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監修医師:馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)
筑波大学医学専門学類卒業 。 現在は宮の沢スマイルレディースクリニック(札幌市)院長として勤務 。専門は産婦人科。

不妊症とは、妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間妊娠しないことをいいます。日本産科婦人科学会では、この「一定期間」について「1年というのが一般的である」と定義しています。

日本では妊娠を望むカップルの4組に1組が不妊に悩み、治療を行っていますが、年々増加傾向にあります。男女とも年齢を重ねるごとに妊娠がしにくくなるため、早めに適切な検査・治療を受けることが重要です。

ここでは、医師監修のもと不妊治療の種類や治療にかかる費用について詳しく解説していきます。

不妊治療とは

不妊治療とは、男性・女性もしくはその両方に検査によって不妊の原因となる疾患があるとわかった場合に、原因に応じて薬による治療や手術を行う治療方法です。原因がわからない場合にも妊娠をするために不妊治療を行う場合もあります。

不妊治療は、妊娠・出産まで、もしくは治療をやめる決断をするまで続きます。

年齢が若いうちに治療を開始した方が妊娠・出産に至る確率が高くなりますが、いつ終わるのか明らかにできない治療でもあります。そのため治療開始してからすぐに妊娠をする場合もあれば、何年も治療を続けるカップルもいます。

また1度子どもを産んだ経験があったとしても、2度目の出産に向けて不妊治療をする「続発性不妊」の方もいます。

まずは不妊治療の種類について詳しく解説していきます。

不妊治療の種類

不妊治療の種類は大きく分けて「一般不妊治療」と「生殖補助医療」の2種類があります。

一般不妊治療

一般不妊治療には以下のようなものがあります。

  • タイミング療法
  • 排卵誘発法
  • 人工授精

それぞれの治療法について詳しくみていきましょう。

タイミング療法

タイミング療法とは、排卵日を診断し、妊娠しやすいタイミングで性交渉を行う方法です。一般的に不妊治療の最初の段階で行われますが、女性側・男性側のいずれか(または両方)に明確な不妊の原因がある場合には、別の治療法からスタートさせることもあります。

排卵誘発法

排卵誘発法とは、内服薬や注射などで卵巣を刺激し、排卵を促す方法です。一般的に、女性側に排卵障害がある場合に選択される治療方法です。

人工授精

人工授精とは、パートナーの精子を注入器で直接子宮に注入する方法です。タイミング療法で妊娠に至らなかった場合や、EDなどの性交障害がある場合に選択される治療方法です。

人工授精で人の手が加わるのは精子を注入する段階のみであり、受精から妊娠までの経過は、自然妊娠とほぼ同じです。

生殖補助医療

前述した一般不妊治療では妊娠しなかった場合に、生殖補助医療が用いられます。

生殖補助医療は特定不妊治療ともいい、以下のような治療があります。

  • 体外受精
  • 顕微授精
  • 男性不妊の手術

それぞれの治療方法について詳しくみていきましょう。

体外受精

体外受精とは、卵子と精子を取り出して、培養液の中で受精させてから子宮内に戻す方法です。

一般的に、人工授精を複数回行っても妊娠に至らない場合に体外受精での治療が検討されます。

顕微授精

顕微授精とは、卵子と精子を取り出して、細い針を使い卵子に直接精子を注入させて受精させてから子宮内に戻す方法です。

体外受精でうまく受精しない場合や、採取できる精子の数が少ない場合などに顕微授精での治療が検討されます。

男性不妊の手術

精液中に精子がいない無精子症の場合、精巣内より精子を直接採取する「MD-TESE」という治療法が検討されます。

不妊治療にかかる費用

令和4年4月より、一部の不妊治療において健康保険の適用範囲が拡大されました。

これにより、今まで全額自己負担が必要だった不妊治療を、保険適用(3割負担)で受けられるようになり、不妊治療を行う方の経済的負担が軽減されました。

健康保険の適用となるのは、「一般不妊治療」と「生殖補助医療」の安全性が確認されている治療法です。また不妊の原因となる疾患がある場合の治療においても保険が適用となります。

具体的には以下の治療が保険適用となります。

一般不妊治療

  • タイミング療法
  • 人工授精

生殖補助医療

  • 体外受精
  • 顕微受精
  • 男性不妊の手術

保険適用後の主な治療費用の目安は以下の通りです。

不妊治療の費用目安(1回あたり・3割負担の場合)
人工授精:約10,000~15,000円
体外受精:約150,000~200,000円
男性不妊の手術:約250,000~300,000円

上記費用は治療に必要な診察費・検査費を含みます。また体外受精や男性不妊の手術は採卵・胚凍結した数によっても費用が変動するため、詳しくは治療を行うクリニックにご確認ください。

助成金について

不妊治療の保険適用の範囲が広がり、患者さんの費用負担は以前に比べて軽減されましたが、体外受精などの生殖補助医療は1回あたり数十万円の費用がかかってしまいます。

また不妊治療は人によって長期にわたる可能性もあり、患者さんの費用負担は決して少ないとはいえない状況です。

こういった高額な費用負担を軽減するために、各都道府県や自治体が主体となって不妊治療の一部の費用を助成する制度があります。

たとえば、東京都であれば「保険医療機関にて行った不妊検査および一般不妊治療に要した費用(保険薬局における調剤を含みます。)について、5万円を上限に助成します」としています。(参考:不妊検査等助成事業の概要 東京都福祉局 (tokyo.lg.jp)

また生殖補助医療費の助成制度もあります。東京都における助成制度では「体外受精および顕微授精を行う際に、保険適用された治療と併用して自費で実施される「先進医療」に係る費用の一部」を助成するとあります。

最新の情報は厚生労働省のホームページや各都道府県の公式ホームページでも確認できるため、お住まいの自治体でどのような助成を行っているか確認してみると良いでしょう。

まとめ

不妊治療とは、男性・女性もしくはその両方に検査によって不妊の原因となる疾患があるとわかった場合に、原因に応じて薬による治療や手術を行う治療方法です。原因がわからない場合にも行われる場合もあります。

令和4年4月より、一般不妊治療および生殖補助医療において健康保険の適用が開始され、これまでよりも患者さんの負担が軽減されました。またお住まいの自治体によっては助成金を受けられることもあるので、確認してみましょう。

不妊治療を行なっても、妊娠するとは限りませんが、年齢が若いうちに早めの治療を受けることで妊娠の確率を上げられます。治療や費用の不安を少しでも解消できるよう、早めに医療機関や各都道府県に相談しましょう。