尿路結石とは~最新治療と気になる費用~

2023.06.21

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監修医師:磯野 誠(所沢いそのクリニック)
防衛医科大学校卒業。防衛医科大学校医学研究科、Heinrich Heine大学泌尿器科学講座(ドイツ連邦共和国)留学を経て、2023年 所沢いそのクリニック開院。主な研究内容は泌尿器科癌(前立腺癌・膀胱癌・腎癌)、排尿障害など。

尿路結石とは、腎臓や尿管、膀胱などにできる石のことで、非常に強い痛みを引き起こします。この痛みは、腹部や背中、腰のあたりに生じることが多く、痛みが治まるまで長時間続くこともあります。

尿路結石は30~60代の男性での発症が多いといわれていますが、近年女性の発症も増加傾向にあります。一度尿路結石を発症すると、治療後に再発してしまうケースも多く、日頃から予防的行動に努めることが重要です。

ここでは医師監修のもと、尿路結石とはなにか、また予防法や治療法について詳しく解説していきます。

尿路結石とは

尿路結石とは、腎臓や尿管、膀胱などにできる石のことで、主にカルシウム、尿酸などの成分からできています。これらの成分が尿中に過剰に含まれることで、尿中に結晶が形成され、時間の経過とともに結石として固まってしまいます。

尿路結石のほとんどは腎臓や尿管に結石ができる「上部尿路結石」だといわれていますが、膀胱や尿道に結石ができた場合は「下部尿路結石」と呼ばれます。

尿路結石の原因

尿路結石の原因は、食生活や生活習慣の乱れ、遺伝的要因、感染症などさまざまです。また、水分摂取が少ないために尿の濃度が高くなり、結晶化するリスクが高まることも原因の一つとして考えられています。

他にも、前立腺肥大症やがん、甲状腺の病気や高尿酸血症などの病気により尿路結石を発症するケースもあります。

尿路結石は女性よりも男性に多くみられ、特に30~60代の男性の発症が多いといわれています。
しかし近年、女性の尿路結石が増加傾向にあるといわれています。女性の場合は女性ホルモンの影響により尿路結石を発症することも多く、特に閉経を迎える50代頃に多くみられます。

尿路結石の症状

尿路結石というと、強い痛みが生じるというイメージをお持ちの方が多いかもしれませんが、結石が小さい場合や結石ができる場所によっては無症状のこともあります。
特に腎臓に発生する尿路結石は症状があらわれにくく、健康診断などで指摘されてはじめて気が付くケースも多いです。

尿路結石の中でも、特に強い痛みが生じるといわれているのが尿管にできた結石です。痛みの程度は人によって異なり、鈍い痛みから救急車を呼ぶほどの強い痛みまで、さまざまです。腹部や背中、腰のあたりに痛みを感じることが多いです。

尿管結石では痛みの他に、以下のような症状があらわれることもあります。

  • 吐き気、嘔吐
  • 頻尿
  • 血尿
  • 尿の出が悪くなる  など

女性の場合は、痛みが生理痛に似た症状である場合が多く、診断が遅れることがあるため注意が必要です。

これらの症状がみられたら、医療機関を受診して、適切な治療をうけるようにしましょう。

尿路結石の予防法

一度尿路結石による強い痛みを経験したことがある人は「もう二度とあの痛みは経験したくない」と思うものです。しかし尿路結石は、治療をしても数年のうちに多くの人が再発してしまうといわれています。

尿路結石を再発させないためには、日常生活において以下のことを心がけましょう。

  • 適切な水分摂取
  • バランスのとれた食生活
  • 寝る直前に食事を摂らない
  • 運動習慣の維持  など

尿路結石の発生には、食生活や水分摂取、運動不足などの生活習慣が関係しているといわれています。

例えば、高たんぱく質、高カルシウム、高ナトリウムの食品を過剰に摂取すると、尿路結石を発症するリスクが高まります。
また水分の摂取量が少ないと、尿の濃度が高まり尿路結石が発症しやすくなります。日頃から1日1.5L~2Lほどの水分摂取を心がけましょう。

適切な水分摂取やバランスのとれた食生活、運動習慣を維持することで、尿路結石の予防に努めることが重要です。

尿路結石の治療と費用

尿路結石が疑われる症状がある場合、医療機関では血液検査や尿検査・画像診断などをもとに確定診断が行われます。特に画像診断は、結石のある場所や大きさを特定するのに有効です。

画像診断の結果、結石が4㎜以下の場合は、自然に尿と一緒に出る可能性が高いため経過観察となることもあります。できるだけ早く結石を出すために、1.5~2Lを目安に水分を多く摂るようにしましょう。

治療が必要な場合には、主に保守的治療もしくは外科的治療が選択されます。それぞれの治療について詳しくみていきましょう。

保守的治療

保守的治療では、10mm以下の尿路結石に対して自然排出を促進するための薬剤の投与水分補給、運動、鎮痛剤などによる対症療法を行います。10mm以下の尿路結石の場合、4週間ほどで自然排出されることもありますが、尿路結石の大きさや位置によっては、効果が得られずに外科的治療が必要となる場合があります。

外科的治療

外科的治療には、内視鏡的手術・超音波破砕術などがあり、10mm以上の尿路結石の大きさや位置、患者の状態に応じて選択されます。

代表的な外科的治療として、以下のようなものが挙げられます。

体外衝撃波砕石術(ESWL)

尿路結石が大きい場合は、破砕する必要があります。
体の外から衝撃波を当て結石を割り、尿と一緒に排石させる治療法です。外来治療も可能で、入院の場合でも1~2日程度と負担の少ない治療法です。

経尿道的結石砕石術(TUL)

尿道的結石砕石術(TUL)は、内視鏡を用いて膀胱や尿管から尿道に進め、尿道を通じて石を直接砕石する手術です。
小さな石を破砕するのに最も適しており、一般的に1cm以下の石に対して行われます。数日~1週間程度と入院期間も短いため、保守的治療が難しい場合には有効な治療法とされています。

経皮的腎・尿管砕石術(PNL)

経皮的腎・尿管砕石術(PNL)は、腎臓や尿管にある大きな結石を除去する外科的治療方法の1つです。背中や側腹部から内視鏡を入れ、腎臓の結石を粉砕し、細かくしてから除去する方法です。
大きな結石を効率的に除去できるという利点があり、入院期間は1~2週間程度が必要です。

尿路結石の治療費

尿路結石の治療は、主に泌尿器科にて行われます。尿路結石の治療費の目安は以下の通りです。

尿路結石の治療費(3割負担の場合)
初診費:約3,000~5,000円(検査費含む)
再診費:約2,000~3,000円

尿路結石の治療費は、治療の種類や病院によって異なります。入院・手術となった場合の費用は、約10~15万円です。

まとめ

尿路結石が疑われる症状があれば、まずは泌尿器科や内科を受診し、適切な検査を受けるようにしましょう。尿路結石の治療を受けずに放置していると、激しい痛みが繰り返されたり、腎臓の機能の低下などを引き起こす恐れがあります。

尿路結石は、生活習慣や運動習慣などの日頃の生活習慣を見直すことでリスクを大きく減らすことが可能です。気になる症状があれば早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。