【医師監修】胃がんは健康診断で分かる?どんな検査をするの?

2023.10.31

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監修医師:中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター)
兵庫医科大学卒業。米国内科学会上席会員、日本内科学会総合内科専門医などの資格を保有。
主な研究内容・論文は「生活習慣関連因子と大腸カプセル内視鏡検査」。

胃がんは日本人にも多いがんで、男女とも50歳代から増加し、高齢になるほど増える傾向にあります。2021年の統計によると、女性より男性に多く、死亡者数は、男性では27200人でがん全体の12%(2位)、女性では14800人で同9%(5位)となっています。また罹患者数は、男性が90000人でがん全体の16%、女性が40500人で9%となっています。
(参考:『がんの統計2022 公益財団法人 がん研究振興財団 資料編』 『同 図表編

胃がんは早期に発見されることが多く、治る可能性が極めて高く、消化器がんの中で治りやすいがんの一つであり、日本人の胃がんは近年、減少傾向にあります。

これは早期に見つかることが増え、安全で十分な手術が出来るようになったからです。

今回は胃がんの早期発見のために、胃がんの基本的な知識から検査・予防まで、医師監修のもと詳しく解説していきます。

胃がんとは

口から入った食べ物は、食道を通って胃の入口(噴門)から胃の中(胃底→胃体)へと移動し、出口(幽門)から十二指腸へと送られていきます。噴門は食物の食道への逆流を防ぎ、幽門は食物を十二指腸へ送り出す量を調節しています。

主な胃の働きは、以下の3つがあります。

  • 貯留:食べたものを一時的に貯めておく
  • 混和、消化:食べたものを胃液と混ぜ合わせ、消化する
  • 輸送:混和した消化物を十二指腸へ送る

貯留・混和・輸送などを行う正常な胃の粘膜の細胞が、外界からの様々な刺激によって変化し、がん細胞となり無秩序に増えていく、これが胃がんです。

がんは、大きくなるにつれ、徐々に胃の内側から外側へ、粘膜下層、固有筋層、漿膜へと深く進んでいきます。

がんがより深く進むと、大腸や膵臓、肝臓などにも直接広がっていき、腹膜播種(お腹の中にがん細胞が散らばる)を起こすことがあります。

また、胃の壁を硬く厚くさせながら広がっていく胃がんがあり、これをスキルス胃がんといいます。

スキルス胃がんは進行が早く、治りにくいがんで、腹膜播種が起こりやすい、内視鏡では診断することが難しいといった特徴があります。

胃がんの種類

胃がんの9割以上は、胃壁の最も内側の粘膜(粘膜上皮細胞)から発生する腺がんであり、腺がんはさらに分化型胃がんと未分化型胃がんに分けられます。

  • 分化型胃がん
    がん細胞の形が胃や腸の粘膜構造を残しているがん
    高齢者、男性に多く、かたまりのまま増殖する
  • 未分化型胃がん
    がん細胞の形や並び方に胃や腸の粘膜構造が少ないがん
    比較的若年者や女性に多く、パラパラと広がるように増殖する

内視鏡検査やX線検査による肉眼的所見では、以下のように6つに分類されます。

  • 表在型(0型)
  • 腫瘤(しゅりゅう)型(1型)
  • 潰瘍限局型(2型)
  • 潰瘍浸潤(しんじゅん)型(3型)
  • びまん浸潤型(4型)
  • 分類不能(5型)

また、深達度により早期がんと進行がんに分けられます。

  • 早期がん
    がんが粘膜下層までにとどまっているもの
  • 進行がん
    がんが固有筋層以下にまで進んでいるものすべてをいう

胃がんの検査方法にはどんなものがあるの?

胃がんの死亡者数の減少に、がん検診の普及による早期発見は大きく貢献しています。 

胃がんは早期に発見すれば治療が可能な疾患であり、毎年、定期的に健康診断(もしくはがん検診)を受診し、手遅れとならないよう、早期に発見することが重要です。

胃がんが疑われた場合には、まず、「がんかどうかを確定するための検査」を受けます。

がんであることが確定した場合には、治療方針を決めるために、「がんの進行度(進み具合)を診断する検査」を受けます。

治療方針を決めるための進行度を診断する検査では、がんの深さや、胃から離れた臓器やリンパ節などへの転移、胃に隣り合った膵臓すいぞう、肝臓、腸などの臓器への広がりを調べます。

胃がんの疑いがあるかどうかを調べる

胃がん検診など、胃がんの疑いがあるかどうかを調べるための検査としては、主にX線検査・内視鏡検査・胃がんリスク層別化検査の3種類があります。

X線検査(バリウム検査)

造影剤である硫酸バリウムと発泡剤(空気で胃を膨らませる薬)を飲み、胃の形や粘膜の状態をX線写真で確認する検査です。

検査技師の指示で検査台の上に乗り、仰向けやうつ伏せ、左右に回転しながらX線を照射し、胃の壁の表面にバリウムを付着させ、胃の形や胃の壁の表面模様(凹凸)をX線写真に写し出します。

異常があると、胃の変形部分や胃の壁の表面へのバリウムの付着などが生じ、模様の異常として現れます。

この検査では、胃がんだけでなく、胃潰瘍や胃ポリープなどの異常の有無も判定します。

内視鏡検査

「胃カメラ」とも呼ばれている内視鏡検査は、先端にカメラのついたスコープを使って、口(鼻)から内視鏡を挿入し、胃の内部を直接観察します。

一般的な検査時間は、5~15分程度で、がんが疑われる部分(病変)の場所、その範囲と深さ、他にも病変がないかなどを調べます。経口内視鏡(口から入れる内視鏡)、経鼻内視鏡(鼻から入れる内視鏡)に分かれます。

胃がんリスク層別化検査(ABC検診)

近年、胃がんのリスク要因として注目されているヘリコバクター・ピロリ菌の感染を調べる検査です。

「ピロリ菌感染の有無を調べる検査」と「胃粘膜の萎縮度を調べる検査」を組み合わせて胃がんになるリスクを4段階で判定します

血液検査のみで終わり、痛みや体への負担が少ない検査ですが、ここで判定できるのはあくまでも「胃がんのリスクが高いかどうか」だけであり、がんやその他の病変の有無を調べることはできません

がんであることを判定する

胃がん検診でがんの疑いが見つかった場合、精密検査を行い、確定診断をします。

内視鏡検査(精密検査)、生検・病理検査

胃がん検診として胃部X線検査を実施し、病気が疑われる場合には、精密検査として胃内視鏡検査を行います。

また、内視鏡検査中に病変が見つかった場合、鉗子と言われる処置具を使って直接組織を採る生検(がんがあるか、どのような種類のがんであるかなどを顕微鏡で調べる検査)および病理検査を行うことで胃がんであるかどうかの判定ができます。

胃の外でのがんの広がり方を調べる

胃がんが見つかった場合、必要に応じて、リンパ節や他の臓器への転移を調べる検査が行われます。

腹部CT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)検査

身体にあらゆる角度からX線を照射し、体の断面を撮影する検査です。がんの深さ、リンパ節への転移の有無とその範囲、肝臓をはじめとする胃の周辺臓器への転移の有無や腹水の有無などを調べ、得られた情報をコンピュータで解析するものです。

また、がん治療(化学療法や放射線療法など)の効果の把握などにも用いられています。

腹部超音波内視鏡(EUS: Endoscopic Ultrasonography)検査

超音波内視鏡(EUS)とは先端に高解像度の超音波装置が備わった内視鏡で、口から挿入します。EUSの先端を胃壁や十二指腸壁にあてて観察を行うことで、消化管壁のすぐ向こう側にある膵臓や胆嚢などを至近距離で詳細に観察することができます。胃壁の表面を観察する内視鏡検査とは異なり、粘膜下の状態をエコー像として観察します。

分解能に優れた超音波内視鏡検査により、粘膜上皮の病巣だけでなく、病巣がどのくらいまで深く進展しているか、リンパ節の転移や、周りの臓器への浸潤などについての詳細な情報を得ることができます。

その結果、内視鏡的治療が適応するかどうかの判断、進行性胃がんの場合はどこまで切除するかの境界線を決めるうえでの重要な情報を得ることができます。

PET(Positron Emission Tomography:陽電子放射断層撮影)検査

リンパ節や他の臓器への転移の有無、がんの再発の有無などが通常のCT検査では明確な診断が難しい場合に行われることがある検査です。CT検査やMRI検査が形態を画像化するのに対し、PET検査は細胞の代謝の状態を画像化する検査です。

また、PET検査は1回の検査で全身において、がんの検査を行うことができることが大きな特徴です。しかし、全てのがんをPET検査で早期に発見できるわけではなく、保険適応外の疾患や検診として受診する場合には全額自己負担となるため、かなり高額な検査になります。

MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)検査

磁気を利用して体の断面を撮影し、がんの広がりを調べる検査です。CTが行えない場合のほか、確定が困難な肝臓への転移状態を調べる検査としても用いられます。

胃がんの早期発見の重要性

2012年から2013年に胃がんと診断された人(がん診療連携拠点病院等)の5年相対生存率は66.6%で、それらを進行度別にすると

  • 限局(胃がんの病変が胃の中にとどまっている状態):96.7%
  • 領域(胃のまわりのリンパ節からがん細胞が見つかるが、隣の臓器には病変が及んでいない、または隣の臓器に病変が及んでいるが、胃から離れた臓器には転移していない状態):51.9%
  • 遠隔(胃から離れた臓器やリンパ節で病変やがん細胞が見つかる状態):15.7%

となっており、早期に発見できればできるほど、5年相対生存率が高まることが分かります。

また、胃がんの臨床病期(ステージ)別の5年相対生存率は、

  • ステージⅠ:96.0%
  • ステージⅡ:69.2%
  • ステージⅢ:41.9%
  • ステージⅣ: 6.3%

となっており、臨床病期(ステージ)が進んでいる状態で見つかった胃がんは、5年生存率が下がっています。
(参考:がんの統計2022 公益財団法人 がん研究振興財団 資料編

そのためにも、早期がんのうちに発見して治療することが重要になります。

早期胃がんは、一定の条件を満たしている場合、内視鏡による治療で病変を適切に切除でき、治る可能性が極めて高いといわれています。この場合は、体への負担も少なく、胃の機能も維持できます。

このような背景から、近年では根治が望める早期胃がんの発見が増え、その結果、胃がんによる死亡率も低下しています。
これらのことから、いかに早く胃がんを見つけるかが重要であり、そのためには毎年定期的に健康診断やがん検診を受診することが何よりも大切であるといえるでしょう。

胃がんの予防方法

胃がんに限らず、がんの予防には、健康の三大要素である、栄養・運動・休養に加え、生活習慣を見直す・感染に気を付けることが重要です。

栄養

栄養については、以下のことを心がけ、バランスのよい食事を摂るようにしましょう。

  • 塩分の摂りすぎに注意する
  • 熱い食べ物や飲み物を控える
  • 不規則な食事に気をつける
  • 緑黄色野菜、果物を摂る
  • ビタミンCを摂取する
  • 緑茶を飲む

運動

運動については、無理のない範囲で以下のような習慣をつけることを心がけましょう。

  • 適正な体重を維持する
  • 朝晩のストレッチ体操
  • 週に2~3日の有酸素運動(ウオーキング、サイクリング、ジョギング等)
  • 休日には好きなスポーツに没頭する

休養

疲労やストレスがたまると、心身にさまざまな影響を及ぼすことがあります。

十分な休養をとり、疲れやストレスをためないようにしましょう。

  • 朝日を浴びる
  • 趣味を思う存分に楽しむ
  • 就寝前1~2時間前に入浴し、体温が下がった頃に眠りにつく
  • 瞑想をする

生活習慣を見直す

喫煙や飲酒の習慣がある方は、生活習慣を見直してみましょう。

喫煙が多くのがんに関連していること、喫煙者は非喫煙者と比べてがんになるリスクが高まることは、様々な調査や研究から明らかになっています。

禁煙は今から始めて遅すぎるということはありません。ぜひ禁煙に取り組んでみてください。

また飲酒の量と様々ながんとの関連が指摘されています。節度ある、適度な飲酒を心がけましょう。

お酒を飲む場合は純エタノール量換算で1日あたり23g程度までとし、飲まない人、飲めない人は無理に飲まないようにしましょう。

感染に気を付ける

ヘリコバクター・ピロリ菌感染は、胃がんの最も重要なリスク因子であることが分かっています。

国際がん研究機関は、日本のような胃がんが多い国ではピロリ菌感染者に対する除菌治療を推奨しています。

機会があればピロリ菌の検査を受け、除菌についても主治医と相談して決めましょう。

まとめ

胃がんは早期に発見すれば、さまざまな治療の選択肢があり、消化器のがんの中でも「治りやすいがん」の一つであるといえます。

胃がんを早期発見するためには、定期的に健康診断(もしくはがん検診)を受診することが重要です。