若い女性の骨粗しょう症に注意!骨粗しょう症予防に必要なこととは?
監修医師:郷 正憲(徳島赤十字病院)
保有免許・資格は日本麻酔科学会専門医、ICLSコースディレクター、JB-POT。主な著書は『看護師と研修医のための全身管理の本』。
骨粗しょう症は、自覚症状がないまま重症化しやすい病気です。日本には約1000万人以上の患者さんがいるといわれています。
一般的に、60~80代の女性に多く見られるのが特徴ですが、近年では若い女性にも発症するケースが増えています。
この記事では、医師監修のもと若い女性の骨粗しょう症の原因と予防法について詳しく解説していきます。
骨粗しょう症とは?
骨粗しょう症は、骨を形成するカルシウムなどが減り、骨密度が低下して骨がもろく折れやすくなる病気です。骨密度が低下すると骨がもろくなって骨折しやすくなります。
体のつくりが小さく、出産や授乳、更年期があるなどの理由から、女性に圧倒的に多い病気です。
骨は新陳代謝を繰り返している
健康で丈夫な骨であり続けるため、骨は新陳代謝を繰り返し、1年間に約20~30%ずつ新しくなっています。これを骨の「リモデリング(再構築)」といいます。
古い骨を壊し、新しい骨が作られる新陳代謝のことを「骨代謝」といいます。また古い骨を壊すことを「骨吸収」、壊された骨を修復して、新しい骨を作ることを「骨形成」といいます。
骨形成が活発な成長期に骨はどんどん強くなります。20~30代では骨吸収と骨形成はバランスが取れた状態になり、年齢を重ねるにつれ、骨を壊す骨吸収が骨形成を上回るようになると、骨がスカスカになって骨粗しょう症になってしまいます。
骨粗しょう症は骨折をすることで、はじめて病気が発見されるケースが少なくありません。早めの対策を立て、骨折のリスクを少なくしましょう。
骨粗しょう症は若い女性でもなる?
若い女性の骨粗しょう症は、生活習慣が大きく関係しています。見た目を気にして過度なダイエットを繰り返すことで、骨の健康維持に必要なカルシウムやたんぱく質、ビタミン、ミネラルなどの不足が続くことが骨粗しょう症の発症要因のひとつです。
女性の場合、女性ホルモン(エストロゲン)が骨量を維持する役割を果たしています。女性のエストロゲンは平均的には25歳前後から緩やかに減少し始めます。
女性の骨量は30歳代中頃から減少が始まるため、女性が骨粗しょうにならないためには、まず30歳前後時点のピークの骨量をなるべく高くしておくことが大切です。
女性は、妊娠期・授乳期でも骨密度の低下が起こりやすくなります。
母乳育児の場合、乳汁分泌ホルモンは卵巣に働きかけて女性ホルモン(エストロゲン)の分泌を止めてしまいます。女性ホルモンを分泌しないことで、骨吸収を活発に行ってカルシウムを溶かし出して母乳に送ります。
そのため、若い女性でも産後に骨粗しょう症が起こりやすくなります。
やせ型でうすい母乳が大量に出る人に骨粗しょう症が起こりやすくなる傾向が多いため、腰痛などがなくても骨密度を測定することをおすすめします。
また、運動不足で骨に刺激を与えない生活が続いたり、母親が骨粗しょう症であった人は特に注意が必要です。
骨粗しょう症の原因
骨粗しょう症はさまざまな要因が重なりあって発症すると考えられています。
骨粗しょう症になりやすくなるリスク要因としては、以下のようなことが挙げられます。
【骨粗しょう症の危険因子】
- カルシウム・ビタミンD・ビタミンK不足
- リンや塩分の過剰摂取
- アルコールの摂り過ぎ
- カフェインの摂り過ぎ
- 極端なダイエットによる「やせ」
- 運動不足
- 日光に当たらない生活
- 喫煙 など
その他の危険因子として、病気や薬剤によるもの遺伝や加齢など防ぎようのないものもありますが、食生活などの生活習慣に気をつけていれば発症リスクを減らすことができます。
骨粗しょう症の疑いがあると診断された方は、このあと紹介する予防法で骨折を防ぎましょう。
骨粗しょう症のセルフチェック
骨折をしてから気付くことが多い骨粗しょう症。「背中が痛い」「腰が痛い」など、立ち上がるときや物を持ち上げるときに痛みを感じる症状が長引くようなら、骨折しているかもしれません。
骨粗しょう症による背骨の骨折で多いのが「脊椎圧迫骨折」です。圧迫による背骨のつぶれは、少し重いものを持ち上げたときなど、ささいなことでも起こるのが特徴。
次第に背中が曲がっていき、身長が縮んできます。これらの症状がある場合は、医師に相談しましょう。
以下に当てはまる方は骨粗しょう症の疑いがあるため、病院で精密検査をおすすめします。
- 骨粗しょう症の自覚症状がある
- 危険因子をいくつも抱えている
- 健診で精密検査をすすめられた など
骨粗しょう症の検査の基本は骨密度の測定です。骨密度は、最も高くなる年代の平均を100%として、それに対して何%であるかを測定します。
【骨密度の測定方法】
- デキサ法(DXA法)
エックス線とコンピューターによって測る測定法。手関節やかかと、腰椎、大腿骨など、さまざまな部位を高精度に測定することができるため、精密検査で用いれらることが多い。 - 超音波測定法(QUS法)
超音波を使ってかかとの骨を測定する方法。手軽に行えるので、集団健診などで用いられることが多い
骨粗しょう症を防ぐポイントと対処法
骨粗しょう症を防ぐポイントは、生活習慣の見直しです。生活習慣の中で大切なのは、食事と運動習慣を持つことです。
ここでは、骨粗しょう症の改善や予防のために積極的に摂りたい食べ物と、運動習慣について解説します。
骨粗しょう症の予防のために摂りたい食べ物
骨粗しょう症の予防策としては、1日3回規則正しくバランスのとれた食事を摂ることが大切です。
野菜中心の食事や欠食をするなど、極端な食事制限(ダイエット)は、骨粗しょう症予防や改善に必要な栄養素を摂ることができません。骨の健康を保つためにも、さまざまな食品をバランスよく食べるようにしましょう。
乳製品や小魚、大豆、緑黄色野菜などからカルシウムは1日650mg摂取するのが理想です。(成人女性の場合)
ビタミンDが多い食べ物と一緒に摂ると吸収率がアップします。
【カルシウムが多い食べ物と含有量】
※「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」で計算
- 牛乳(コップ1杯180g)…198mg
- プレーンヨーグルト(100g)…120mg
- プロセスチーズ(1切れ20g)…126mg
- しらす干し(10g)…52mg
- 木綿豆腐(1/2丁150g)…140mg
- 絹ごし豆腐(1/2丁150g)…113mg
- 納豆(1パック40g)…36mg
- 小松菜(80g)…136mg
- 大根の葉(50g)…130mg
- チンゲン菜(小1株80g)…80mg
- 切り干し大根(1/4袋10g)…50mg
- ひじき(乾燥5g)…50mg
牛乳・乳製品は、カルシウムを多く含む食べ物の中でも特に吸収率がすぐれています。1日200mlを目安に摂るようにしましょう。
またビタミンDは、カルシウムの吸収を助け、骨や歯を丈夫にするビタミン。カルシウムをたくさん摂っても、ビタミンDがないと吸収されないことが分っています。
【ビタミンDが多い食べ物と含有量】
※「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」で計算
- まいわし(2尾正味110g)…35.2μg
- しろさけ(1切れ80g)…25.6μg
- さんま(1尾正味100g)…16.0μg
- まいたけ(1/2パック50g)…2.5μg
- きくらげ(乾燥2枚2g)…1.7μg
ビタミンDが多く含まれている食品の代表は魚です。魚を日常的に食べるようになると、ビタミンD不足は解消されます。
また、きくらげやきくらげなどのきのこ類にもビタミンDは豊富に含まれています。
骨粗しょう症の予防のために避けたい食べ物
ミネラルのひとつであるリンは、骨や歯の原料ですが、摂りすぎるとカルシウムを溶かしだす出す副甲状腺ホルモンを上昇させ、カルシウムの吸収を妨げます。
食品添加物としてリン酸塩が多く含まれるインスタント食品やスナック菓子、ハムなどの加工食品、清涼飲料水などの摂り過ぎには注意しましょう。
嗜好品の摂り過ぎも骨粗しょう症の予防には気を付けたいところです。お酒やカフェインを多く含むもの(コーヒー、紅茶)の飲み過ぎは骨密度を低下させる恐れがあります。適量で楽しむようにしましょう。
適度な運動習慣をもつ
骨は運動で負荷をかけることで丈夫になります。骨粗しょう症の予防のために、ウォーキングなどの運動を定期的に行うようにしましょう。
転倒による骨折を防ぐために、開眼片足立ちやスクワットなどの自重トレーニングもおすすめです。1分間の片足立ちは53分歩くのと同じぐらいの効果があるというデータがあります。
手軽に実践できる運動を取り入れて、骨粗しょう症を予防しましょう。
骨粗しょう症と診断された場合はどうする?
骨粗しょう症の治療は、薬物療法と合わせて運動と食事の改善を行います。
骨粗しょう症の治療薬には、以下のような内服薬や注射(カルシトニン製剤)があります。
- カルシウム剤
- ビタミン剤
- ビスホスホネート製剤
- ラロキシフェン
- カルシトニン製剤
- 副甲状腺ホルモン製剤 など
すでに骨折を起こしている場合は、骨折の治療と合わせて、骨粗しょう症の治療を行います。
まとめ
骨粗しょう症の原因とセルフチェック、予防と対処法について解説しました。骨粗しょう症は自覚症状がないのが特徴で、高齢者だけでなく、若い女性でも発症することがあります。
「いつのまにか骨折」ということがないように、骨を丈夫にする生活習慣を心がけましょう。