【医師監修】パーソナリティ障害とは?症状や治療について解説

2023.10.30

  • LINE

監修医師:伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)
専門領域は精神科(心療内科)、精神神経科、心療内科、 美容皮膚科、産業医。

パーソナリティ障害という言葉をご存知でしょうか。別の言い方として「人格障害」とも呼ばれるこの障害は、周囲の人たちと比べて性格や行動に極端な部分があるのが大きな特徴です。

勘違いする方もいるのですが、決して「パーソナリティ障害=性格が悪い」というわけではありません

性格は千差万別、ひとりひとり異なって然るもの。ただ、その性格の一部に極端な偏りがあることで社会への適応が難しくなっているだけなのです。

本記事では専門医師監修のもと、パーソナリティ障害についての知識、治療とその費用について分かりやすく解説していきます。

パーソナリティ障害とは

パーソナリティ障害について、厚生労働省は「大多数の人とは違う行動や反応をすることで本人が苦しんでいたり、周りが困っているケースに診断される精神疾患」であると述べています。
(参考 厚生労働省 / 解離性障害/パーソナリティ障害)

「パーソナリティ障害」とひとことに言っても、その症状は実に多彩です。

パーソナリティ、いわゆる人格や個性・性格は、認知や感情、衝動コントロールなど様々な要素が複合的に機能しているため、現れる病態もひとりひとり異なると考えるべきでしょう。

以下ではそんなパーソナル障害をカテゴリー分けしたタイプ分類と症状について説明します。

パーソナリティ障害の3つのタイプ

パーソナリティ障害は大きく3つのタイプに分けられ、さらに細分化すると10通りに分類されます。

【A群 奇妙または風変わりな様子を特徴とする】

  • 妄想性パーソナリティ障害:不信と猜疑心
  • シゾイドパーソナリティ障害:他者に対する無関心
  • 統合失調型パーソナリティ障害:奇妙または風変わりな思考と行動

【B群 演技的、感情的、または移り気な様子を特徴とする】

  • 反社会性パーソナリティ障害:社会的無責任、他人の軽視、欺瞞、自分の利益を得るための他人の操作
  • 境界性:一人でいることに関する問題(見捨てられる恐れによる)、感情や衝動的行動をコントロールすることの問題
  • 演技性:人の注意を引きたい欲求と劇的な行動
  • 自己愛性:もろい自尊心、賞賛される必要性、および自分の価値についての過大評価(誇大性と呼ばれる)

C群 不安や恐れを抱いている様子を特徴とする】

  • 回避性パーソナリティ障害:拒絶される恐れによる対人接触の回避
  • 依存性パーソナリティ障害:服従と依存(世話をしてもらう必要性による)
  • 強迫性パーソナリティ障害:完全主義、柔軟性のなさ、頑固さ

もちろん個々の症状はこういったタイプに厳密に分けられる訳ではなく、場合によってはそれぞれの特徴を併せ持った性格を形成していることもあるため、ひとつのタイプに当てはめ過ぎることがないよう注意する必要があります。

パーソナリティ障害の症状

パーソナリティ障害の症状については前述した3つのタイプおよび10通りのパターンによって異なります。以下でそれぞれを簡単に説明します。

妄想性パーソナリティ障害

周囲から悪意や敵意を向けられているという認識を強く持っています。他者に対する不信感が強く、自分以外を中々信用できません。

ジゾイドパーソナリティ障害

他者に興味がなく、また協調性に欠けるため社会から孤立しやすい傾向があります。周囲からは冷淡、鈍感な性格に見られやすいようです。

統合失調型パーソナリティ障害

ひとりごと、話の脱線、思い出し笑いなど、変わった行動が多いため変わった人と思われやすい傾向があります。あまり人と関わることが得意ではありません。

反社会性パーソナリティ障害

他人に対する共感性が欠如しており、悪気もなく他者に迷惑のかかる行動や犯罪行為を行ってしまいます。

境界性パーソナリティ障害

感情の浮き沈みが大きく、また、常に他者に見捨てられるのでなないかという不安を感じています。そのため他者の気を引くために問題行動を起こしてしまう事もしばしばあります。

演技性パーソナリティ障害

常に他者から注目されていないと気が済みません。注目されるために嘘をついたり人をだましたりします。

自己愛性パーソナリティ障害

自分は特別だという感情が強く、他者は自分より劣った人間と捉えやすい傾向があります。自信家ですが打たれ弱く、失敗や挫折には強くありません。他者に対する興味は薄いですが自分への賞賛は過度に求めます。

回避性パーソナリティ障害

失敗を過度に恐れ、責任のある仕事を完遂することや他者との良好な人間関係を築くことが苦手で逃げ癖があります。

依存性パーソナリティ障害

自分で意思決定することが出来ず、決定権を他者に委ねます。

強迫性パーソナリティ障害

独自のルールがあり、そのルールに固執し他者にも強要します。そのため良好な人間関係が築けません。

パーソナリティ障害の治療と費用

パーソナリティ障害の治療の軸は心理療法、そしてその補助として薬物療法を併用していきます。

治療の最終目的は、以下の3点を目指すこととなります。

  • 周囲に被害を及ぼさない
  • 自分自身が苦痛を感じない
  • 自分なりに生きていく方法を確立する

パーソナリティ障害はあくまで性格の偏りです。治療によって別人のようになって障害が消失するかというとそれは難しいと言わざるを得ません。

しかし、上記をある程度確立することが出来ればパーソナリティ障害を「少し強めの個性」として社会生活を送ることが出来ます。

以下では心理療法と薬物療法、そして治療費についてお話していきます。

心理療法

パーソナリティ障害の治療に軸になるのは心理療法です。心理療法では患者と治療者が協力して問題への認識を深め、問題の対処法を築き上げ、自分の感情を整える、という作業をある程度長い時間をかけて行っていきます。

具体的には、以下のような心理療法を行っていきます。

  • 個人精神療法
  • 集団精神療法
  • 家族療法

また認知や思考、行動パターンを変化せるために認知行動療法等も積極的に行われます。

薬物療法

パーソナリティ障害に対する薬物療法は、あくまで根治療の手段ではなく一時的な症状の緩和を目的として行われます。

実施している期間しか効果が有効ではないとはいえ、問題をしばらく抑えることが出来るという面では即効性もあるため心理療法の補助的な役割を担います。

症状に応じて使用する薬は異なりますが、大枠で考えると

  • 受動的なタイプ➡向精神薬
  • 衝動的・感情が不安定なタイプ➡選択的セロトニン再取り込み阻害薬、気分安定薬
  • 不安や抑うつが強いタイプ➡選択的セロトニン再取り込み阻害薬
  • 境界性、統合失調型、反社会性の強いタイプ➡非定型抗精神薬

多くの場合、こういった形で処方する薬を検討していきます。

これらの薬は有用性が確認されていますが、あくまで効果は使用している期間に限られるため服薬中に症状が消えたからといって障害そのものが完治したわけではないという点には留意しておく必要があります。

パーソナリティ障害の治療費

パーソナリティ障害の程度によっては入院を要するケースもあるため一概には言えないものの、従来は外来でのカウンセリングと薬物治療が中心となることが多いです。

外来での診察は初診で2000~8000円程度(検査等によって異なります)、その後は症状に応じて月数回の再診で生活上の相談や心理療法を実施していきます。

再診にかかる料金も個人差がありますが、心理療法は1回につき数千円、初回は内容によって初回予約料が必要な場合もあります。

治療スタイルや選択される心理療法は医療機関によって異なりますので詳細は直接HP等で確認されると良いかと思います。

まとめ

パーソナリティ障害は精神疾患の一種であり、周囲の人たちと比べて性格や行動に極端な部分があるのが大きな特徴です。

もちろん人それぞれ性格や個性は異なるものですが、パーソナリティ障害が疑われ、自分自身や周囲の人が苦痛を感じているようであれば、一度心療内科や精神科の受診を検討してみましょう。