【医師監修】肺がんは健康診断で分かる?どんな検査をするの?

2023.10.26

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監修医師:甲斐沼 孟(TOTO関西支社健康管理室)
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科を卒業後、心臓血管外科として勤務。国家公務員共済組合連合会 大手前病院 救急科医長を務め、現在はTOTO関西支社健康管理室に産業医として勤務。

厚生労働省の統計によると、日本のがんの死亡者数は年間38万人にのぼり、統計では日本人の2人に1人はがんに罹り、3人に1人はがんで亡くなっているといわれています。

中でも肺がんの死亡者数は男性1位、女性3位ですが、罹患者数でみてみると、肺がんは男性4位、女性3位です。

これらのデータが示す背景には、肺がんは「早期がんの段階で発見しにくく、発見したときは進行がんである」ことが考えられています。

肺がんの早期発見のために、健康診断で見つけられるのかどうか気になっている人も多いでしょう。

この記事では、肺がんを健康診断で発見できるかどうか、肺がんを早期発見するためのポイントについて解説しています。

肺がんとは

肺がんとは、肺胞や気管支の細胞ががん化によって起こる病気です。

肺がんによって起こるがん細胞は、進行していくと、周りの組織を破壊しながら増殖し、血液やリンパ液の流れによって全身の器官に転移します。

肺がんの転移で多いのが、脳・肝臓・骨・副腎・リンパ節です。肺がんには組織型によってがんの種類が異なるため、それぞれに適した治療を行います。

肺がんの検査方法は?

健康診断は病気のスクリーニング検査の役割がありますが、肺がんを早期発見できることがあります
肺がんの早期発見に関わる検査が、胸部X線検査と喀痰細胞診で、それぞれの検査の目的や対象者は以下です。

胸部X線検査
肺野にある肺がんの有無を調べる。40歳以上の人が対象

喀痰細胞診
気管や気管支にある肺がんの有無を調べる。問診で自覚症状のある人や、50歳以上で喫煙指数(※)が600以上の人が主な対象。

※喫煙指数=1日のタバコの本数×喫煙年数

X線検査はレントゲン検査のことです。X線は、水分や骨など体の組織によって通りやすさが異なる特徴があり、身体の内部の様子をモノクロ画像で映し出すことができます。

胸部X線検査では健康体であれば肺は黒色、心臓や骨は白色で映し出されますが、肺に腫瘍などの異常があると、白い影が現れます

一方、喀痰細胞診は、受検者の痰に含まれている細胞を顕微鏡で調べる検査です。喀痰にはのどや気管支、肺から剥がれた細胞が含まれています。

特に喫煙習慣がある人は、気管支から肺がんが発生しやすく、喫煙指数に応じて検査が行われます。喀痰細胞診の検体の取り方は、起床時の痰を指定の容器に吐き出します(3日間)。

健康診断では肺がんの見落としもある

健康診断の胸部X線検査や喀痰検査は、あくまで肺がんのスクリーニング検査であり、病変を見落としてしまうことがあります

肺がんについて精密に調べるには、CT検査を受けなければなりません。

例えば、レントゲン写真では、肺が心臓や肋骨と重なって写るため、小さい病変や他の組織と重なる病変は見落としされてしまうことがありますし、読影には医師の技量も関わっています。

そのため、過去には健康診断の胸部X線検査にて肺がんの見落としがされた例について医療裁判が行われた例もいくつかあります。

肺がんの有無を調べるにはCTが有効ですが、健康診断の検査項目には含まれていません。健康診断はあくまで病気の振り分けを目的に行われるので、より多くの人を対象に低費用の検査が行われるためです。

そのため、一般的な健康診断では費用がかかるCTではなく、比較的安いコストで行える胸部X線検査や喀痰細胞診が行われます。

なお、会社勤めをしている人の場合、会社が毎年行う健康診断を受けられますが、自営業の人は、自主的に健康診断を受けなければなりません。肺がんだけでなく、生活習慣病など他の病気の早期発見を行うためにも、定期的に健康診断を受けるようにしましょう。

日本では、40歳以上に人を対象に、自治体で肺がん検診も行われています。健診が自分の健康状態を確認するものであるのに対し、検診では特定の病気の有無を調べることができます。肺がん検診の内容は、問診・胸部X線検査・喀痰細胞診のほかに、喫煙者の方は禁煙指導を受けられます。

肺がんの早期発見の重要性

早期の肺がんは自覚症状がみられず、症状が現れている時点で、肺がんが進行していることも多いです。肺がんの症状は以下のものがあります。

  • 痰・血痰
  • 胸の痛み
  • 息苦しさ
  • 動悸
  • 発熱 など

肺がんの症状は、呼吸器にかかわるものです。

気管支や肺に腫瘍があると、がん細胞が周りの組織を破壊しながら異常増殖するので、出血が起こります。口から血が出ると、多くの人は消化器からの出血と考える人も多いでしょう。

一般に消化器からの出血が起こると、血液中に含まれる鉄分が胃酸の作用を受けるため、出血が黒っぽい色になります。一方、気管支や肺からの出血は量に応じて、赤やピンク色になります。吐血や血痰が見られた場合、色を確認することで、消化器と呼吸器のどちらからの出血なのか判断しやすくなります。

肺がんに限らず多くのがんは、早期がんで発見して早めに治療に取り組んだ方が、生存率が高くなります

肺がんの治療にはステージにより、手術・化学療法・放射線療法があります。早期の肺がんなら根治を目指した手術治療を受けられ、その後の予後にも大きな影響を与えます。

日頃の健康管理に気を付けたり、定期的に健診や検診を受けたりするなどして、肺がんの早期発見を目指しましょう。

肺がんの予防方法

すべてのがんの確実に予防する方法はありませんが、生活習慣を見直すことでリスクを下げるのに役立ちます。肺がんをはじめすべてのがん予防に役立つ生活習慣が以下です。

  • 禁煙
  • 節度のある飲酒
  • 栄養バランスの良い食事
  • 適度な運動
  • 適正体重の維持
  • 感染予防

肺がんの原因は、タバコと密接な関係があることが分かっています。

喫煙者の肺がんの発生率は非喫煙者の約4倍で、喫煙指数が高くなるほど、肺がんのリスクが高くなります。

特に、タバコは自分が吸っている煙だけでなく、他人のタバコの煙(副流煙)もリスクがあります。タバコを吸っている人は禁煙を行い、受動喫煙を避けるようにしましょう。

喫煙をしなくても肺がんになる?

日本女性の喫煙率は約7%と年々低下傾向にあります。

一方で、肺がんにかかった女性の多くは、非喫煙者の割合が高い傾向がみられます。

女性に多くみられる肺がんの組織型は腺がんで、腺組織から発生するがんです。肺がんの罹患率に関する男女差は、ホルモンバランスの関連も指摘されています。

つまり喫煙をしなくても肺がんにかかる可能性はあるため、定期的に検診を受けたり、気になる症状があれば早めに医療機関を受診するようにしましょう。

まとめ

肺がんは、気管や肺胞の細胞ががん化することによって起こるがんです。肺がんの自覚症状には、咳や血痰、胸の痛みなどがありますが、早期がんは無症状のこともあり、発見が遅れることがあります。

肺がんの早期発見には、健康診断の検査項目である胸部X線検査や喀痰検査などが役立ちますが、病変が小さいと見逃がしが起こることもあります。

定期的な検査を受け続けるとともに、肺がんを予防するための生活の工夫もしていきましょう。