【医師監修】すい臓がんは健康診断で分かる?早期発見するためには?

2023.10.26

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監修医師:中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター)
兵庫医科大学卒業。米国内科学会上席会員、日本内科学会総合内科専門医などの資格を保有。
主な研究内容・論文は「生活習慣関連因子と大腸カプセル内視鏡検査」。

日本人のがんの死亡率の4位となるすい臓がん。この30年で8倍以上に増加しており、日本人が注意していくべきがんであるといえます。

また、すい臓がんは難治性のがんともいわれています。

近年がんと診断された人の約60%は完治が見込めるほど医療技術が進んでいる一方、すい臓がんにおいては完治率が約10%と非常に低い水準で推移しています。

そのため、すい臓がんについてはこの病気をしっかりと理解したうえで、早期発見、早期治療が非常に重要となるのです。

この記事では、すい臓がんを早期に発見して治療を進められるようにすい臓がんの早期発見について詳しく解説していきます。また、予防方法についても併せて解説しますので、すい臓がんのリスクがあると考えている方はぜひ参考にしてみてください。

すい臓がんとは

すい臓がんとは80~90%が膵管に発生するがんで、そのほとんどの組織型は腺がんです。高齢男性に多いということが特徴で、発症者のほとんどが50~70歳代の男性です。

すい臓がんの症状は次の通りです。

  • 腹痛
  • 黄疸
  • 体重減少
  • 食欲不振
  • 腹部膨満
  • 腰や背中の痛み
  • 糖尿病

多くの場合は食欲不振、腹痛、腹部膨満、腰や背中の痛みなどによってすい臓がんが発見されます。

また、糖尿病に罹患したことを契機に検査を受けた結果、すい臓がんが見つかる例もあります。

すい臓がんの症状はほかの病気の症状と非常に類似しているため、これらの症状が出てもすい臓がんに罹患しているかもしれないとつながる人はごくごく少数となり、これも早期発見が難しくなる要因と考えられています。
また、すい臓がんは症状そのものが出にくいがんといわれているため、症状が出たころにはすでに進行していて治療が難しいというケースもあるのです。

すい臓がんの検査方法

すい臓がんの検査方法は血液検査、超音波検査、CT、MRI、内視鏡的膵管造影、血管造影が基本の検査ですが、このうち健康診断として行われるのは血液検査と超音波検査のみです。

健康診断では血液検査を行って腫瘍マーカーに異常があるとされた場合に、次の検査へと進みます。また、血液検査を行う前であっても、すい臓がんを疑われる症状が見られている場合には、血液検査とあわせて超音波検査も行いさらに、体の状態を調べていきます。

これらの検査の結果、すい臓がんの疑いがあるとなった時に、CTやMRIなどの検査へと移行していくのです。

すい臓がんの患者さんの場合、血液中にはCA19-9やCEA、糖タンパク質などの糖類が増加することが分かっており、すい臓がんの腫瘍マーカーにはこの糖類が血中で上昇しているかどうかを調べます。

しかし、一方でこれらの腫瘍マーカーはすい臓がんの初期においてはあまり上昇しないということも分かっています。そのため、血液検査のみでは十分にすい臓がんを発見するのは難しいと考えられており、単一の検査だけではなく検査を組み合わせて行っていくことが推奨されるのです。

人間ドックの場合にはすい臓がんの早期発見のためにさまざまな検査を組み合わせて行うので、健康診断での早期発見が見込めるかもしれません。

すい臓がんの早期発見の重要性

すい臓がんは早期発見が非常に難しいがんといわれています。

その理由はすい臓の位置にあります。

すい臓は胃の後ろに位置しており、腹部の臓器の中でも深いところにあることに加えて、十二指腸などのほかの臓器が隣接していたり、血管が集中していたりするため画像検査でもなかなか映りにくい臓器です。

さらに、がんと思わしき病変を確認できたとしても確定診断のための臓器の採取、いわゆる生検が難しいとされており、これらが早期発見をより難しくする要因と考えられています。

さらに、がんが小さいうちには症状がほとんど出ないため、診断名がついたころに手術できる患者さんはわずか20%程度です。

仮に手術できたとしても再発率は高く、手術ができたとしても5年生存率は20~40%です。

また、すい臓がんに対して有効な抗がん剤がないことや、臓器や血管が密接になっているため転移をしやすいことからも治療は困難を極めると考えられているのです。

しかし、すい臓がんは検査を受けて、早期発見ができれば、完治率や死亡率が大きく変わります

すい臓がん全体の5年生存率は非常に不良であるものの、10mm~20mmの大きさですい臓がんを見つけられた場合には生存率は50%、10mm以下の大きさで見つけられれば、80%以上に死亡率が改善されることが分かっています。

一方で、その発見率は、10mm~20mmの大きさでは全体の5%、10mm以下では0.8%と非常に低いのが現状です。
早期発見ができればできるほど助かる可能性が高まるがんである一方、症状が露骨に出てこないがんだからこそ、定期的に健康診断を受けて早期発見をし、治療を受けることが重要なのです。

すい臓がんの予防方法は?

すい臓がんのリスクファクターは生活習慣病である糖尿病、肥満、飲酒や喫煙等です。

また、慢性膵炎や膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の既往をもつ方や、血縁者の中にすい臓がんを患った方が多い場合には発生リスクが高まるということが分かっています。

そのため、このリスクファクターへ該当された場合にはすい臓がんの予防を意識していくことが必要と考えられるのです。

リスクファクターへ該当した方においては、そのリスクを避けられる生活をしていくことが予防につながります。

すい臓がんのみならずがん予防として推奨されている禁煙、節度のある飲酒、バランスの良い食事にくわえ、適度な運動やそれぞれにおいて適正な体形の維持を行っていくのがおすすめです。

特にすい臓がんの予防という観点では、禁煙が効果的であるといわれているため、喫煙者は禁煙をするのが最もすい臓がんの予防としては効果的です。
また、すい臓がんはすい炎などすい臓に関する疾患ががんとなる引き金にもなるため、生活習慣を意識しながらすい炎などのすい臓の病気への罹患にも注意していくことが、すい臓がん予防へとつながります。

まとめ

すい臓がんは早期発見をすることで、生命予後にもよい影響を与えます。したがって、早期発見ができるように検診を受けましょう。

日本には厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」でがん検診の検診方法が定められています。

しかし、膵臓がんについては、指針として定められている検診がないというのが現状です。

そのため、リスクファクターにあたるという場合や気になる症状があるという場合には自主的に検診を受けるようにするとよいでしょう。

人間ドックにおいても検診を実施しているため、その特性やメリットを十分に理解したうえで検診を受けることがおすすめです。