糖尿病の症状が出現するタイミングは?知って得する糖尿病対策

2023.06.20

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監修医師:中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター)
兵庫医科大学卒業。米国内科学会上席会員、日本内科学会総合内科専門医などの資格を保有。
主な研究内容・論文は「生活習慣関連因子と大腸カプセル内視鏡検査」。

糖尿病は初期の症状が自覚しにくく、気が付いた時には悪化していた、というケースが少なくありません。また糖尿病は病状の悪化に伴い、さまざまな合併症を引き起こすリスクが高まることが知られています。

この記事では、医師監修のもと糖尿病の症状が出現するタイミングや、早期発見のための方法について詳しく解説していきます。

糖尿病の症状が出るタイミングは?

糖尿病とは、なんらかの原因でインスリンの分泌量または効果が低下し、血液中のブドウ糖(血糖)が増えて高血糖の状態が続く病気ことです。

インスリンとは膵臓にあるホルモンの一つで、高くなった血糖値を下げる働きがあります。

インスリンの分泌量や効果が低下する原因には、生活習慣をはじめとした環境面によるものと遺伝的なものがあげられます。

糖尿病が発症した初期は、目立った症状があらわれないのが特徴です。しかし高血糖状態は続いているため、見えないところで糖尿病は進行しています。

実際に、自覚症状が現れる前からインスリンが効きにくくなったり、分泌量が30〜40%低下していたりすることもあります。そのまま病状が進行すると、さまざまな自覚症状があらわれ始めます。

糖尿病の症状

糖尿病は複数の症状があらわれるだけでなく、危険な合併症を伴うこともあります。

ここでは糖尿病の症状と、代表的な合併症について解説します。

糖尿病が進行したときの症状

糖尿病の初期段階はインスリンの分泌量や効果の低下がみられますが、自覚症状はあらわれにくいです。糖尿病がある程度進行したあとに、以下のような症状を自覚し始めることが多いです。

  • 喉の渇き
  • 多飲
  • 尿量の増加
  • 体重の減少
  • 疲れやすい   など

さらに高血糖状態が続くと、意識障害を引き起こす可能性もあります。

糖尿病の合併症状

糖尿病の合併症として有名なのが、以下の三つの障害です。

  • 糖尿病網膜症
  • 糖尿病性腎症
  • 糖尿病神経障害

これらをまとめて「糖尿病の三大合併症」と呼びます。ここではそれぞれの合併症について詳しく解説します。

糖尿病網膜症

糖尿病は網膜の毛細血管に関係する障害です。血糖値が高い状態が続くと、網膜に広がっている毛細血管が傷付いて網膜剥離を引き起こしたり、失明したりする危険性があります。

糖尿病網膜症は症状の進行具合によって、以下の三段階に分かれます。

  • 単純性網膜症
  • 前増殖網膜症
  • 増殖網膜症

初期の単純性網膜症は、毛細血管の一部から出血を起こしたり、詰まったりする段階です。

次の前増殖網膜症になると、今までの血管が機能しなくなるため、新しい毛細血管が増殖し始めます。

そして最後の増殖網膜症になると、既存の血管だけでなく新しい毛細血管も出血を繰り返します。

毛細血管が作られては出血を繰り返す悪循環に陥り、最後は失明してしまいます。

糖尿病性腎症

糖尿病性腎症は、糖尿病の影響で腎臓の機能が低下する障害です。腎臓は血液をろ過したり、体内の血圧や水分量のバランスを調節したりする働きがありますが、これらの機能不全を引き起こします。

糖尿病性腎症の初期段階はほとんど自覚症状がありませんが、腎臓の機能が弱まってくると、身体のむくみや貧血などがあらわれ始めます。症状がさらに進行すると、腎臓の機能不全で血液のろ過や体内のバランス調整が行えなくなり、最後は人工透析を用いることになるのです。

糖尿病神経障害

糖尿病神経障害では、以下の働きがある神経の障害を引き起こします。

  • 感覚神経:触ったものを感じるときの神経
  • 運動神経:手や足などを動かすときの神経
  • 自律神経:血圧や体温の調節をするときの神経

糖尿病神経障害は、それぞれの神経の障害に応じた症状があらわれます。

たとえば、感覚神経が障害された場合、熱いものを触っているのに気付かずに火傷をしてしまう危険性があります。運動神経の障害では、手足が動きにくくなり、歩行時に転倒して骨折してしまった、という場面もあるでしょう。自律神経が障害されていると、動悸やめまいが起こりやすくなるケースもみられます。

このように、糖尿病神経障害は非常に幅広い症状を引き起こすのが特徴です。

その他の合併症

糖尿病は三大合併症の他にも、さまざまな障害を伴う可能性があります。

高血糖状態の継続で血管のしなやかさが失われることで、動脈硬化を引き起こすケースもあるでしょう。動脈硬化が進行すると血管内が狭くなったり、脂肪や血栓が溜まりやすくなったりして血流を悪化させます。

また動脈硬化は以下のような重篤な障害のきっかけにもなります。

  • 足壊疽(えそ)
  • 脳卒中
  • 虚血性心疾患

足壊疽は血流が悪化して足に酸素や栄養が十分に行き渡らなくなった結果、組織が壊死してしまう障害です。
また脂肪や血栓が脳の血管を詰まらせると、脳梗塞(脳卒中)を引き起こします。虚血性心疾患には狭心症や心筋梗塞があり、血栓が心臓の血管を詰まらせることで発症する障害です。

糖尿病を早期発見するためにできること

糖尿病は自分が気付かないうちに進行してしまう病気です。早期に糖尿病を発見し、症状を出現させないためには、どのようなことを行うべきなのでしょうか。

ここでは、そのポイントについてご紹介します。

定期的な健康診断を受ける

糖尿病を早期に発見するためには、定期的な健康診断を忘れずに行いましょう。会社に働いている方は定期的に健康診断を受ける機会がありますが、それ以外の方は注意が必要です。

健康診断を自分から申し込まなければいけないので、つい怠ってしまいがちです。年齢を経るごとに糖尿病のリスクは高まるので、忘れずに健康診断を受けて早期の発見につなげることが重要です。

人間ドックを受ける

定期的に人間ドックを受けるのもおすすめです。人間ドックは健康診断の一つで、検査項目が多いのが特徴です。そのため通常の健康診断だけではわからなかった病気の早期発見ができるメリットがあります。

人間ドックにはさまざまな種類があり、なかには糖尿病の発見に特化したコースもあります。病院やクリニックによって検査内容が異なるので、人間ドックを受けるときはあらかじめ実施する項目を確認しておきましょう。

体調の変化に気を配る

糖尿病の初期症状は明確な自覚症状があらわれません。そのため、早期発見にはちょっとした体調の変化に気を配ることも大切です。

まずは最近以下のような症状がないかチェックしてみましょう。

  • 最近疲れやすい
  • やせてきた、あるいは太ってきた
  • 痺れやむくみがあらわれやすい
  • 喉が渇きやすい
  • トイレが近くなった   など

このような体調の変化を感じたら、医療機関で診断を受けてみるのをおすすめします。症状が悪化して取り返しのつかない状態になる前に、早期の対応を心がけましょう。

まとめ

糖尿病の初期段階は自覚症状がほとんどないので、そのまま悪化したり、合併症を引き起こしたりする危険性が高いです。糖尿病の合併症にはさまざまな種類があり、なかには命に関わるような重篤な障害をともなう危険性もあります。

糖尿病を早期に見つけるためには、定期的な健康診断を受けたり、身体のちょっとした変化に敏感になったりすることが大切です。糖尿病を進行させないためにも、早めの対策を行っていきましょう。