【医師監修】睡眠障害は治せる?症状や治療を解説
監修医師:中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター)
兵庫医科大学卒業。米国内科学会上席会員、日本内科学会総合内科専門医などの資格を保有。
主な研究内容・論文は「生活習慣関連因子と大腸カプセル内視鏡検査」。
日本では約5人に1人が睡眠に関する悩みを持っているといわれています。寝つきが悪い、睡眠時間はしっかりとれているのに疲れがとれない、眠りが浅くすぐに目が覚めてしまう、など睡眠に関するこれらの問題は睡眠障害が関与している可能性があります。
睡眠障害は、睡眠中だけの問題だけではなく、日中の疲労感や集中力低下を伴い、日常生活に支障をきたすことがあります。気になる症状がある方は、一度医療機関で検査をしてみることをおすすめします。
この記事では医師監修のもと、睡眠障害の種類や症状、また治療方法について詳しく解説していきます。
睡眠障害とは
睡眠障害とは、睡眠の質や量にさまざまな問題が生じている状態を指します。
睡眠障害というと十分な睡眠がとれなくなる「不眠症」をイメージする方も多いかもしれませんが、それだけではなく、自分の意識とは関係なく寝すぎてしまったり、深い睡眠がとれないという症状も睡眠障害にあたります。
睡眠障害は夜間の睡眠時における症状だけでなく、日中の疲労感や集中力低下を伴うため、日常生活にも支障をきたすことがあります。睡眠をとっても十分に体が回復せず、不調が続くという場合は、一度医療機関で検査を受けてみることをおすすめします。
睡眠障害の種類と症状
睡眠障害はおよそ60種類以上あるといわれており、大きく分けると以下の6つの種類に分類されます。
- 不眠症
- 中枢性過眠症
- 概日リズム睡眠覚醒障害
- 睡眠呼吸障害
- 睡眠関連運動障害
- 睡眠時随伴症
それぞれの症状や特徴について詳しくみていきましょう。
不眠症
不眠症では、なかなか寝付けない(入眠困難)、夜中に何度も目を覚ます(中途覚醒)、朝早く目が覚めてしまう(早朝覚醒)などの症状があらわれます。
これらの症状によって十分な睡眠時間が確保できず、日中の生活にも支障をきたします。不眠症は最も一般的な睡眠障害であり、ストレスや薬剤の副作用、身体疾患、精神疾患、神経疾患などが原因となります。
中枢性過眠症
中枢性過眠症とは、夜に十分な睡眠をとっているにも関わらず、日中に異常な眠気があり、仕事や学習に支障をきたす状態です。ナルコレプシー、特発性過眠症、クライネ-レビン症候群などのタイプがあります。
中枢性過眠症は、主に中枢神経(全身の各部位に指令を出す役割をもつ神経)に異常をきたすことが原因で発症します。
概日リズム睡眠覚醒障害
概日リズム睡眠覚醒障害は、体内時計による生活リズムが乱れ、夜に十分な睡眠を取れなくなる状態です。極端な遅寝遅起きまたは早寝早起き、連続した睡眠(4時間以上)がとれないなどの症状により、学校や仕事などの社会生活を送ることが難しくなります。
概日リズム睡眠覚醒障害は、不規則な生活や交代勤務、海外渡航による時差などが原因となります。
睡眠呼吸障害
睡眠呼吸障害の中で最も頻度が高いのは、睡眠時に舌根が喉に落ち込んで気道が塞がれ、いびきが起こる(閉塞性睡眠時無呼吸)症状です。睡眠時間はしっかりとっているつもりでも、十分な呼吸ができないため深い睡眠を得られず、日中に強い眠気や疲労感があらわれるのが特徴です。
睡眠呼吸障害は、主に肥満や扁桃腺肥大などが原因で発症します。症状を放置していると、心血管系疾患や糖尿病などの重大な病気を引き起こすことがあるため注意が必要です。
睡眠関連運動障害
睡眠関連運動障害には、レストレスレッグス(むずむず脚)症候群や周期性四肢運動障害などがあります。
レストレスレッグス症候群は、寝床に入って安静にしていると足がムズムズする異常な感覚が現れ、身体を動かすと症状が軽くなる特徴があります。
周期性四肢運動障害は、睡眠中に下肢の細かな震えなどの不随意運動が繰り返し起こり、目が覚めたり睡眠が浅くなる特徴があります。
いずれも鉄欠乏性貧血や腎不全などの病気が原因となることが多く、それらの病気に対する治療が必要となります。
睡眠時随伴症
睡眠時随伴症は、睡眠中に起こる心身の異常な行動を指します。睡眠中に突然大声を出したり、布団から出て歩き出したり、ものを食べ始めたりといった行動が起こります。これらの行動は、本人は全くの無自覚であり、翌朝には覚えていません。
睡眠時随伴症は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)やうつ病、パーキンソン病やレビー小体型認知症などの疾患が原因となっていることが多いです。
睡眠障害かもと思ったら
睡眠障害は夜間の症状だけでなく、日中の社会生活にも影響をおよぼすことが多いです。
前述の症状に当てはまるものがある、または一緒に寝ている家族に指摘されたことがある、という場合には睡眠障害が疑われるため、医療機関を受診し適切な検査を受けるようにしましょう。
睡眠障害は何科にかかる?
睡眠障害が疑われる場合、まずは内科を受診しましょう。
また、ストレスや心理的な要因が原因であれば精神科や心療内科の受診が適しています。他にもナルコレプシーは脳神経内科、睡眠呼吸障害は呼吸器内科や耳鼻咽喉科の受診も良いでしょう。
睡眠障害の検査
睡眠障害の正確な診断のためには、検査が行われる場合があります。代表的な検査には以下のようなものがあります。
睡眠ポリグラフ検査(PSG)
睡眠ポリグラフ検査では、睡眠中の脳波や心拍、呼吸などのデータを記録し、睡眠の質や異常を評価します。
睡眠時無呼吸検査(SAS検査)
SAS検査は、睡眠時における呼吸の停止や低下を検査するために行われます。
反復睡眠潜時検査(MSLT検査)
MSLT検査は、日中の睡眠を調べる検査です。日中のレム睡眠の回数や、眠気がどのくらい生じているかなどを評価します。
これらの検査結果に基づいて、睡眠障害の具体的な原因や重症度を判断することができます。
睡眠障害の治療と費用
睡眠障害の治療法は、その原因や症状によって異なります。一般的な治療法は、生活習慣の改善、薬物療法、認知行動療法などが挙げられます。
生活習慣の改善
生活習慣の改善では、睡眠環境の整備や規則的な睡眠スケジュールの確立などを目指します。朝は太陽の光を浴びて目を覚まし、日中は適度な運動を取り入れながら活動的に動きます。そして夜はできるだけリラックスできるように、テレビやスマホなどのデジタル機器の使用は避け、眠くなってから布団に入るようにしましょう。
薬物療法
薬物療法では、一般的に睡眠薬を使用します。主にベンゾジアゼピン系の薬が使われますが、依存性や耐性、習慣性に注意が必要です。
薬の使用に関しては、主治医とよく相談し、自己判断で薬を中断したりしないようにしましょう。特に、急に薬を中止すると「反跳性不眠」という状態になることがあるため、医師の指導のもと適切に薬を使用することが大切です。
認知行動療法
認知行動療法とは、認知(物事の捉え方や考え方)のゆがみを正す精神療法の一種です。例えば不眠症の方は、「早く寝ないと」という考えが強すぎるあまり、逆になかなか寝付けなくなるという悪循環に陥ることがあります。こういった方には認知行動療法のプログラムを用いた治療が行われることがあります。
薬物療法(睡眠薬)と比べると即効性はありませんが、継続して治療を行うことで適切な睡眠習慣を取り戻すことができます。
睡眠障害の治療費
睡眠障害の治療費の目安は以下の通りです。
睡眠障害の治療費(3割負担の場合、検査費・薬代含む)
初診費:約4,000~5,000円
再診費:約2,000~3,000円
認知行動療法など治療法によっては、保険適用とならず全額自己負担が必要なこともあります。また症状によっては入院検査が必要となることもあり、睡眠障害の治療費は人によって大きく異なる場合もあります。詳しくは受診される予定の医療機関へお問合せください。
まとめ
睡眠障害は、日常生活に支障をきたすだけでなく、心身の健康にも悪影響を与える可能性があります。
睡眠障害の治療には、日常生活の改善に加えて、必要に応じて薬物療法や精神療法が行われます。気になる症状がある方は、一度医療機関を受診し、適切な検査や治療を受けるようにしましょう。