大人の吃音症とは?症状や原因、治療法を解説

2023.07.11

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監修医師:伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)
専門領域は精神科(心療内科)、精神神経科、心療内科、 美容皮膚科、産業医。

吃音症は、話す際に「どもり」や「なめらかに話せない」という症状がある病気を指します。一般的には子どもに多く見られますが、大人になってから吃音症を発症することもあります。

大人の吃音症は、コミュニケーションに悩みを抱えることが多く、日常生活や仕事などの社会活動を円滑に行えなくなることもあります。そのため気になる症状があれば、早めに適切な検査・治療を受けることが重要です。

ここでは、医師監修のもと大人の吃音症の症状や原因、治療法について詳しく解説していきます。

吃音症とは

吃音(きつおん・どもり)症は、話す際に言葉が滑らかに出てこない言語障害の一種です。一般的には、音の繰り返しや延長、途切れなどがある話し方をするのが特徴です。

吃音症は2語文以上の発話をはじめる2~5歳の幼児期に発症する(発達性吃音)ことがほとんどだといわれています。しかしなんらかの原因で大人になってから吃音症を発症する(獲得性吃音)こともあります

吃音症は女性よりも男性に多くみられ、成人では約100人に1人は吃音の症状を持っているといわれています。

吃音症は言語の流暢性に影響を与えるため、コミュニケーションに困難を抱えてしまうケースが少なくありません。また本人がうまく話せないことを気に病み、不安やストレスを抱えてしまい、他者との関わりを避けてしまうケースも多くみられます。

まずは吃音症の症状について詳しく解説していきます。

吃音症の代表的な症状

吃音症では、声自体は出るものの言葉が滑らかに出てこないという症状がみられます。

具体的には、特徴的な発声方法として以下の3種類が挙げられます。

  • 連発(音の繰り返し)
  • 伸発(音の引き伸ばし)
  • 難発(ブロック)

上記の3種類の症状は吃音の中核症状といわれます。それぞれの特徴について詳しくみていきましょう。

連発

連発とは、「こ、こ、こ、こんにちは」のように言葉の始めの音を繰り返すという症状です。また「はじ、はじ、はじめまして」のように言葉の一部分を繰り返す場合もあります。

連発は吃音の中核症状といわれ、初期の吃音症によくみられる症状となります。

伸発

伸発とは「りーんご」などのように言葉の始めの音が引き延ばされるという症状です。またサ行の音では子音のみが伸びることも多く、「(スーと空気が漏れるような音のあとに)さかな」という場合もあります。

連発と同様に伸発も、軽度の吃音症でよくみられる症状です。

難発

難発はブロックや阻止と呼ばれることもあり、言葉が途中で止まってしまう症状です。

「……はじめまして」や「は……じめまして」のように、言葉の始まりまたは途中に喉がつまったように止まります。この言葉が止まっている間は、通常息も止まってしまっているため、息苦しさの症状が伴います。

難発は、大人の吃音でよくみられる症状だといわれています。

情緒性反応

吃音症では上記のような症状が続くことによって、日常生活において他者とのコミュニケーションに強いストレスを感じたり、社会へ出ることへの強い不安を感じやすくなります。

そして「また吃(ども)ってしまったらどうしよう」という予期不安から、吃りの症状が出た時に赤面やこわばり、落ち着かないなどの情緒的な反応がみられることがあります。

大人の吃音症の原因

一般的に、吃音症は幼少期に発症するものとされてきましたが、なんらかの原因によって大人になってから吃音症を発症することもあります

大人になってから発症する吃音症は一般的に「獲得性吃音」と呼ばれます。この獲得性吃音の主な原因は主に以下の2種類に分類されます。

  • 神経原性吃音
  • 心因性吃音

ここでは、それぞれの特徴について詳しく解説していきます。

神経原性吃音

神経原性吃音の主な原因は、脳の病気の後遺症や神経学的な疾患が挙げられます。神経原性吃音を引き起こす原因となりうる疾患には以下のようなものがあります。

  • 脳梗塞
  • 脳卒中
  • 頭部外傷
  • 認知症
  • パーキンソン病
  • てんかん など

前述の症状のうち、神経原性吃音では連発(音の繰り返し)が多くみられ、難発(ブロック)は少ないという特徴があります。

また神経原性吃音では、失語症(「聞く」「話す」「読む」「書く」などの言語の働きに対する障害)や構音障害(発音が正しくできなくなる障害)を併発することもあります。

心因性吃音

心因性吃音の主な原因は、慢性的なストレスやトラウマ(心理的ショック)などの心理的要因が挙げられます。

心因性吃音でみられる症状は、特定の場面でのみ吃音の症状があらわれるなど、小児期からの吃音(発達性吃音)と比べると重症度が低いことが多いという特徴があります。

また心因性吃音では、うつ病や他の精神疾患を併発することもあります。

吃音症の治療と費用

吃音症の治療は一般的には、耳鼻咽喉科での検査や診察を受けたうえで、「言語聴覚士」という言葉の訓練の専門家による治療が行われます。また心理的要因により発症した心因性吃音では、精神科や心療内科で治療を受けられることもあります。

吃音症の治療は、病状に応じてさまざまな方法が用いられています。治療を続けるためには、自分に合った適切な治療方法を受けることが大切なポイントになります。

吃音症の治療

吃音症の一般的な治療方法には、言語療法や心理療法があります。吃音症の原因によっては、薬物療法が併用されることもあります。治療の選択肢や効果は個人によって異なるため、専門医の指導のもと、最適な治療方法を見つけることが重要です。

言語療法

言語療法では、流暢性形成法や吃音緩和法などを用いて、発声技術の向上や流暢性の改善を促すための訓練が行われます。

心理療法

心理療法では、吃音に関連する不安やストレスを軽減するためカウンセリング認知行動療法(心の考え方や行動の関係を改善する治療法)などを併用する治療が行われます。

薬物療法

抑うつや社交不安障害を合併している場合、抗うつ薬や抗不安薬などの薬物療法を併用することがあります。

吃音症の治療費

大人の吃音症に必要な治療費は、医療機関によって異なります。また、言語療法や心理療法の費用を考慮する必要もあります。

初診で言語療法や心理療法を行った場合の費用は2,500~5,000円(診察代込み、3割負担の場合)程度になります。

大人の吃音症の治療は、長期間の通院や治療が必要です。吃音症と診断された場合は、通院や治療費など医療費の負担を軽減する制度(自立支援医療制度や高額療養費制度など)を活用することができるため、医療機関へ相談しましょう。

まとめ

吃音症は、子どもだけではなく大人になってから発症することもあります。

大人の吃音症の主な原因は、脳や神経の疾患などによる「神経原性吃音」とストレスなど心理的要因による「心因性吃音」があります。

吃音症の治療は長期にわたることが多いですが、原因や症状をもとに適切な治療を継続していくことで、症状をコントロールしていくことも可能です。気になる症状があれば、早めに医療機関を受診するようにしましょう。