生活習慣病予防健診の目的は?対象者や費用を解説
監修医師:竹内 想(名古屋大学医学部付属病院)
医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積みました。 現在は主に皮膚科医・産業医として勤務しています。
昔と比べると食に困らなくなった現代社会、今やひとり1台車を持っており積極的に運動する機会も益々少なくなりました。昨今は物価の高騰が問題になっているとはいえ、お酒やタバコなど嗜好品は手の届くところにいくらでもあります。
そんな恵まれた環境が生み出した生活習慣病は、今や日本国内の1800万人以上が罹患していると言われています。
今回の記事のテーマは生活習慣病予防健診。生活習慣病予防のために必須の健診である生活習慣病予防健診について、専門的な知識を持つ医師監修のもと、詳しく解説していきます。
生活習慣病予防健診とは?
生活習慣病予防健診とは、主に生活習慣病の事前予防と早期発見を趣旨とする健康診断のことを言います。
厳密に言うと「生活習慣病予防健診」という名称は協会けんぽで実施している予防健診の名称であり、他の健康保険組合では類似の健診についても若干名称が異なります。
本記事はあくまで協会けんぽの生活習慣病予防健診をベースとしてお話させて頂きます。
健康診断に関する用語について
健康診断は主に、労働安全衛生法や協会けんぽで以下のように言葉が使い分けられています。
- 定期健康診断
労働安全衛生法の中で企業が正社員に対して年に1回の受診を義務付けられているもの。フルタイムの正社員であれば年齢問わず必ず年に1回は行わなくてはいけない。費用は企業が負担するため自己負担は無い。
- 生活習慣病予防健診
本記事で解説している健診。35歳以上であれば協会けんぽが費用を補助してくれる。定期健康診断と比べると検査内容は充実している。あくまで希望者が受けられる健診であり必ず受けなくてはいけないものではない。
定期健康診断と生活習慣病予防健診という言葉はよく混同され、間違って認識されがちですが、定期健康診断は企業の正社員として働いている場合1年に1度は必ず受けなければならないのに対し、生活習慣病予防健診はあくまで任意で、希望があった場合のみ実施するという形になります。
生活習慣病予防健診の目的は?
生活習慣病予防健診の主な目的は前述した通り、
- 生活習慣病の事前予防
- 生活習慣病の早期発見
になります。実施する検査は以下のような項目です。
血圧測定 | 脂質検査 | 肝機能の検査 | 代謝系の検査 |
血液検査 | 尿・腎機能検査 | 呼吸系検査 | 心機能検査 |
肺の検査 | 胃の検査 | 大腸の検査 | 眼底検査 |
腹部超音波検査 | 肝炎ウイルス検査 | 子宮頸がん検査 | 乳がん検査 |
これらの中から、健診の検査内容に該当するものを実施します。
生活習慣病予防健診は1年に1回受ける事が可能(希望すれば年に2回以上も可能だがその場合は全額自己負担)で、検査項目が豊富であるため労働安全衛生法で義務付けられている健康診断の項目をすべてカバーしています。
そのため、年に1回行わなければならない職場の健康診断を兼ねることが出来るというメリットがあります。
尚、生活習慣病予防健診では毎年一般健診として約30種類の検査を行いますが、付加健診として特定の年齢年は追加で検査を受ける事が可能です。
また、女性は年齢年に希望することで乳がん検査や子宮頸がん検査も受けられます。
加えて、条件に適合している場合は希望することで肝炎ウイルス検査も行えます。ただこちらはプライバシー保護等の観点からご本人が直接健診機関にお申し込みを行う形式を取っています。
詳しくは協会ほんぽのHPをご参照ください。
人間ドックとのちがいは?
生活習慣病予防健診と人間ドックとの大きな違いは、
- 検査項目の種類
- 費用
この2点になります。生活習慣病予防健診においては基本健診、胃がん健診、大腸がん健診等が中心となる比較的簡素な検査となるのに対し、人間ドックは希望に応じてより細部にわたってしっかりと検査をすることが出来るのが特徴です。
そのため時間や費用に関しては人間ドックの方が多く必要となります。
生活習慣病予防健診は受けるべき?
生活習慣病予防健診は、出来るだけ受けるべきです。その理由は、対費用効果が高くメリットが大きい健診と言えるからです。
まず、健診にかかる費用はその6割を協会けんぽが負担してくれるため自己負担額は非常に低額になります。
とはいえ検査項目は充実しており、一般健診のみでもある程度の検査項目を網羅することが出来ます。
労働安全衛生法で定められている検査項目もすべて含まれているため、職場で従来行う定期健康診断の代わりとして扱える点もメリットのひとつでしょう。生活習慣病予防健診を定期健康診断として扱っている企業も多くあり、その場合は費用を企業が負担してくれるため本人負担はありません。
注意点としては、生活習慣病予防健診はすべての人が受けられるわけではないという点が挙げられます。受けられる対象者については以下で説明していきます。
生活習慣病予防健診の対象者
協会けんぽにおける生活習慣病予防健診の対象者は、以下の通りです。
- 一般健診:35~39歳の加入者で保健指導を希望される方、40~74歳の加入者
- 一般健診+付加健診:40歳、または50歳の方
- 乳がん+子宮がん検診:40歳以上の偶数年齢の女性
- 子宮がん検診(単独):20歳以上38歳以下の偶数年齢の女性
- 肝炎ウイルス検査:過去に検査を受けたことがない方
原則として生活習慣病予防健診は生活習慣病の発症リスクが高くなる35歳以上を対象とするため、それ以下の年齢の方は受けることが出来ないので注意が必要です。
毎年受ける検査は一般健診で、その他特定の年齢や性別によっては希望によって各種健診を追加することが出来ます。
ちなみに、女性に限って言えば子宮がんの単独健診だけは35歳以下でも受けられます。
子宮頸がんの好発年齢は40代ですが、20代後半から徐々に発症率が高くなる傾向があります。がん細胞の進行も非常にゆっくりながんなので、早い段階で発見することが出来れば完治する可能性も高くなります。
まだ若いから、と安易に考えずに定期的な健診を心掛けましょう。
生活習慣病予防健診の費用
生活習慣病予防健診の気になる費用ですが、前述した通りその費用の6割は協会けんぽが負担してくれます。そのため、実際の負担額は以下のようになります。
生活習慣病予防健診費用(自己負担額)
一般健診:7,119円
一般健診+付加健診:11,921円
乳がん+子宮がん検診:50歳以上 2,125円 40~48歳 2,725円
乳がん検診(単独):1,039円
肝炎ウイルス検査:624円
一般健診+付加健診に乳がん検診+子宮がん検診を追加して行っても自己負担額は15,000円程度となりますので、簡易的なコースでも30,000円程度の費用が必要となる人間ドックと比べても非常に安価であることが分かります。
まとめ
今回は協会けんぽの生活習慣病予防健診をベースに、健診の内容や対象者、費用について解説いたしました。
健康状態をチェックし、病気の早期発見のためには年に一度の健康診断の受診が欠かせません。特に35歳以上は生活習慣病のリスクが高まるため、忘れずに健康診断をうけるようにしましょう。