【医師監修】心電図検査で分かることは?異常が見つかったらどうする?

2023.07.28

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監修医師:甲斐沼 孟(TOTO関西支社健康管理室)
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科を卒業後、心臓血管外科として勤務。国家公務員共済組合連合会 大手前病院 救急科医長を務め、現在はTOTO関西支社健康管理室に産業医として勤務。

健康診断や人間ドックで行う検査の一つに「心電図検査」があります。心電図検査は、心臓の病気を早期に発見するに重要な検査です。その心電図検査で異常を指摘されたら、自分は病気なのではないかと不安に感じることでしょう。

心電図検査で異常を指摘されたからといって、必ずしも病気だというわけではありません。しかし自己判断は厳禁です。早めに医療機関を受診し、必要に応じて精密検査を行うようにしましょう。

ここでは、医師監修のもと心電図検査とは何か、また心電図検査で異常が見つかったらどうすべきかを詳しく解説していきます。

心電図検査とは

心電図検査とは、心臓が動くときに発する電気信号を波形として記録して、心臓の状態を調べるための検査です。心電図検査は一般的な健康診断の検査の一つとしても広く用いられ、不整脈や心筋虚血などの心疾患の発見に役立ちます。

心電図検査は100年以上の長い歴史をもち、体への負担が少なく繰り返し行うことが可能な検査です。

心臓の働きと心電図検査で分かること

心臓は自分の意思とは関係なく動き、血液を全身に送る役割を担っています。規則的に電気刺激を起こして心筋に伝達し、収縮と拡張の動きを行わせます。この電気刺激が正常な場所で正常なタイミングで行われると、規則的な拍動となります。

心臓が動く際に必要な酸素や栄養は「冠動脈」を通じて送り込まれます。そのため、冠動脈が狭くなったり詰まったりすると、心臓自体(心筋)に血液が届かなくなり壊死していきます。

これがいわゆる「狭心症」や「心筋梗塞」という病気ですが、この時血液が届かなくなった心筋からも電気信号が出るため、心電図にもあらわれます。

心電図検査では、電気刺激がどの場所でどのようなタイミングで出ているのか、それに伴う心筋の動きはどうなのか、心筋にダメージはないのかなどを知ることができます。

具体的には以下のような病気の発見に役立ちます。

  • 不整脈
  • 狭心症
  • 心筋梗塞
  • 心筋炎
  • 心筋症
  • 心房・心室肥大 など

心電図検査の種類と特徴

健康診断で一般的に実施される心電図検査は「十二誘導心電図」というものです。胸部6ヶ所と両手首・両足首に電極をつけて、12方向からの電気の流れを測定します。

十二誘導心電図では、検査をしている一定時間(数十秒程度)の記録しか行えないため、発作的に起こる不整脈や狭心症などを見つけることには適していません。

心電図検査には、十二誘導心電図の他にも以下のようなものがあります。

  • モニター心電図
  • ホルター心電図
  • 運動負荷心電図

それぞれの違いは以下の通りです。

モニター心電図

モニター心電図とは、病院で持続的にモニタリングする心電図のことです。主に急変リスクのある患者に使用されます。

ホルター心電図

ホルター心電図とは、24時間の心電図を見るものです。病院で検査器具をつけたあとは自宅に帰宅し、普段通りの生活を送る中で、1日の心電図を記録します。

主に発作的に起こる不整脈や狭心症などを検出するのに役立ちます。

運動負荷心電図

運動負荷心電図とは、運動した時の心電図を見るものです。安静にしている時には見られない異常をみつけるのに役立ちます。

心電図検査で異常が見つかったら

心電図検査で異常が見つかっても、必ずしも病気とは限りません。

健康診断で行う心電図検査だけでは心臓の病気を診断することはできませんので、医療機関での診察や精密検査を受けることが必要となってきます。

心電図の波形とは

心電図検査では、心臓から出される電気信号によって「P波」「QRS波」「T波」「U波」という波形を測定し、記録します。

以下のようにそれぞれの波が規則正しく、一定のリズムで記録されている状態を基本波形といい、「正常」だと診断されます。

出典:洞調律 | 心臓病用語集 | 心臓病の知識 | 公益財団法人 日本心臓財団 (jhf.or.jp)

一方で、それぞれの波が規則正しくなかったり、波の高さに異常があったり、基本波形とは形が異なる場合には、「異常あり(所見あり)」と診断されます。

(例1)心房細動の場合

(例2)心室期外収縮の場合

※出典: 2022年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン (j-circ.or.jp) P38、P46

検査結果の見方

健康診断における心電図検査の結果の表記は医療機関によってさまざまですが、一般的には以下のように判定されます。(参考:日本人間ドック学会 | 心電図健診判定マニュアル (ningen-dock.jp)

  • A:異常なし
  • B:軽度異常あるも日常生活に支障なし
  • C:異常があり再検査、または経過観察を要する
  • D1:要治療
  • D2:要精密検査
  • E:治療中

通常B~D2の判定区分の場合、健康診断の結果表の「所見欄」にどのような異常があったのかが記載されています。

心電図で見つかる異常の種類は非常に多く、代表的なものとしては「期外収縮」「洞性不整脈」「異常Q波」「ST異常」「心房細動」「r波増高不良」などがあります。

このように見慣れない言葉が並んでいて不安に思われるかもしれませんが、基本的には前述のA~E判定をもとに、医療機関での診察や精密検査を受けるようにしましょう。

また健康診断で行う十二誘導心電図は、検査時の数十秒の測定のみで結果を分析しているため、異常なしと診断されても、不整脈や狭心症などの見逃しがある可能性もあります。

動悸や息切れ、胸の痛みなどの自覚症状がある場合は、心電図の結果のみで異常の有無を判断するのではなく、一度医療機関を受診して、医師の診察や他の検査もあわせて受けるようにしましょう。

精密検査について

心電図検査で異常を指摘された場合は、健康診断の結果表を持参し、早めに医療機関を受診するようにしましょう。

心電図検査は、循環器科や心臓内科が専門となります。もし近所に専門の病院がない場合や、どこの病院に行けばいいか分からないという方は内科で相談してみることをおすすめします。

医療機関では、健康診断の結果をもとに自覚症状の有無や既往歴の確認などを行ったうえで、必要に応じて精密検査が行われます。

精密検査の種類は、主に以下のようなものがあります。

  • 心エコー
  • ホルター心電図
  • 運動負荷心電図
  • 心臓MRI
  • 冠動脈CT
  • 心臓カテーテル検査 など

心電図検査で異常ありと診断されても、必ずしも病気だというわけではありません。また精密検査の結果不整脈などと診断されたとしても、積極的な治療が必要のない場合も少なくありません。

ただし心電図の異常には、重篤な心疾患が隠れている可能性もあるため、健康診断で異常を指摘されたという方は、早めに医療機関を受診するようにしましょう。

まとめ

健康診断の心電図検査は、心臓の病気を早期に発見するために重要な検査です。

この心電図検査は十二誘導心電図というもので、電気刺激がどの場所でどのようなタイミングで出ているのか、それに伴う心筋の動きはどうなのか、心筋にダメージはないのかなどを知ることができます。

心電図検査で異常を指摘されても必ずしも病気とは限りませんが、正確な判断をするためには医療機関での診察と精密検査が必要です。もし、健康診断で異常を指摘されているのであれば、早めに医療機関を受診するようにしましょう。