メディコレNEWS|【医師監修】気になる動悸の症状、病院の目安は?
監修医師:甲斐沼 孟(TOTO関西支社健康管理室)
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科を卒業後、心臓血管外科として勤務。国家公務員共済組合連合会 大手前病院 救急科医長を務め、現在はTOTO関西支社健康管理室に産業医として勤務。
「動悸」は誰でも一度は経験したことがあるような身近な症状です。
動悸は特別治療が必要のない場合も多いですが、病気が原因で動悸が生じている可能性もあるため、気になる症状があったときは、できるだけ早く医療機関で診察してもらうことが大切です。
ここでは、医師監修のもと動悸の症状や病院にかかる目安、検査や治療などについて詳しく解説していきます。
動悸とは
動悸とは、心臓の鼓動が普段よりも大きく強く感じたり、早く感じたりする症状のことです。また、鼓動が飛び不規則に感じることも動悸に含まれます。
動悸の原因はさまざまで、極度の緊張や不安、ストレスなどを感じて交感神経が活発に働いているだけの場合もありますが、不整脈や狭心症や心筋梗塞などの病気が原因となっている場合もあります。
動悸で病院にかかる目安は?
動悸で医師に診てもらうことを躊躇する方もいますが、診てもらった方がよい動悸もあります。
動悸で病院にかかる目安となる症状は、動悸が長時間続いたり、動悸以外の症状もあらわれるようになったり、遅い脈拍と早い脈拍(頻脈と徐脈)を繰り返したりするような症状があらわれた場合です。
このような動悸があらわれた場合は出来るだけ早くかかりつけ医や近くの内科に行き、一度診てもらうことをおすすめします。診察を受けるときは、以下のようなことをできるだけ詳しく伝えるようにしてください。
- 動悸があらわれ始めた時期
- 動悸が続く時間
- 動悸以外に現れる症状
- 動悸が現れる状況(できるだけ具体的に)
- 脈のリズム(遅いか早いか不規則かなど)
正常な方の脈拍数は、1分間に60~100回です。脈拍数が1分間に50回以下を徐脈(脈が遅い)、101回以上を頻脈(脈が速い)といいます。
すぐに受診が必要な動悸とは
すぐに受診が必要となるような緊急性が高い動悸は、それほど多くはありません。しかし、以下のような動悸が現れたら、できるだけ早めに医療機関を受診することをおすすめします。
- 安静にしているにもかかわらず1分間の心拍数120回以上が10分以上続いている
- 動悸とともに嘔吐、ふらつき、冷や汗、腹痛、倦怠感、呼吸がしにくいなどの症状がある
- 動悸が治まったあと、胸が苦しくなる、意識が朦朧としてきた
上記のような症状がある場合は、心筋梗塞や心不全など、一刻を争う病気である可能性があるため、すぐに医療機関を受診するか救急車を呼ぶようにしてください。
検査について
動悸の症状がある場合には、動悸の原因を特定するための検査が行われます。しかし、検査をしても動悸の原因を特定できないこともあります。その場合は、命の危険があるような病気が動悸の原因でないことを明らかにすることが大切です。
動悸を訴えて医療機関に来た方には、まず問診やバイタルサインの確認、聴診を行ったあと必要に応じて、以下のような検査が行われます。
- 心電図検査
- 24時間ホルター心電図検査
- 胸部レントゲン検査
- 心エコー検査(超音波検査)
- 血液検査
それぞれの検査の特徴をみていきましょう。
心電図検査
心電図検査とは、心臓が拍動するときに流れる電気信号を波形として記録したものです。主に不整脈や狭心症、心筋梗塞などの発見に役立ちます。
心電図検査で調べられるのは10拍程度のため、検査時に動悸がなければ見落としてしまう場合も多いです。
24時間ホルター心電図検査
24時間ホルター心電図検査とは、小型の装置を用いて、24時間にわたり心電図を記録できる検査機器です。日常生活における心臓の動きの異常を確認できます。
胸部レントゲン検査
胸部レントゲン検査では、心臓の大きさを確認することにより、動悸の原因となる心臓の病気があるかどうかを推測します。
また、肺うっ血(肺を循環している血液量が多くなり、血流が悪くなっている状態)、胸水(肺を包む2層の胸膜の間に溜まっている液体)の有無を調べることもできます。
心エコー検査(超音波検査)
心エコー検査では、心臓の動きや大きさ、弁の状態を知ることが可能です。心臓の筋肉の厚みや血液を送り出す力、血流の滞りなどを観測できます。
血液検査
血液検査では、甲状腺機能異常や貧血、血糖状態などを調べます。また、血液中のBNP値(脳性ナトリウム利尿ペプチド)を調べることで、心臓にかかっている負担の程度を知ることも可能です。
必要に応じて上記のような検査を行い異常が認められない場合は、ストレスが原因の動悸であることが推測されます。
動悸の治療と治療費
動悸の症状があっても、必ずしも治療が必要だというわけではありません。検査の結果、経過観察のみとなることも少なくありません。
治療が必要となる動悸の代表的なものに「不整脈」があります。ここでは、動悸の原因として考えられる不整脈の治療について解説していきます。
不整脈による動悸の治療
不整脈の治療は大きく分けると次の5つが挙げられます。
- 薬物治療
- ペースメーカー
- 植込み型除細動器(ICD)
- カテーテルアブレーション
- 外科手術
それぞれの治療方法について詳しくみていきましょう。
薬物治療
頻脈性不整脈(脈が速くなる不整脈)の治療として、抗不整脈薬や抗凝固薬などの薬を用いた治療が行われます。
また症状が軽い徐脈性不整脈(脈が遅くなる不整脈)や症状が強い期外収縮(正常な拍動の中に時々不規則な拍動がある不整脈)でも薬物治療が行われることがあります。
ペースメーカー
ペースメーカーは主に徐脈性不整脈の治療で使用されています。心臓に電気信号を与えて、人工的に心臓を動かすことで拍動のリズムを調整する治療法です。
植込み型除細動器(ICD)
植込み型除細動器は、心室頻拍や心室細動といった突然死の可能性がある不整脈に対して行う治療法です。
不整脈を感知すると自動的に心臓に電気ショックを与え、不整脈を停止させます。
カテーテルアブレーション
カテーテルアブレーションは、足の付け根や首あたりから血管にカテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、不整脈の原因部位を高周波電流で焼灼(焼く)する治療法です。
主に、頻脈性不整脈に対して行われています。
外科手術
上記の治療法を行っても改善がみられない場合には外科手術が行われることがあります。
心房細動に対するメイズ手術や、心筋梗塞を合併している場合に行われるドール手術などが代表的な治療法です。
治療費の目安
動悸の症状に対して薬物療法を行う場合の治療費の目安は、診察代を合わせて1か月あたり約1,000~2,000円(3割負担の場合)です。
ペースメーカー、ICD、カテーテルアブレーション、外科手術などの治療に関しては、通常入院が必要になります。治療法や入院期間によって費用はさまざまですが、30~100万円程度(3割負担の場合)の費用がかかります。
ただし、これらの費用は高額療養費制度が適用されるため、ご加入の健康保険組合に申請をすれば治療費は約10万円に抑えられます。
まとめ
一口に「動悸」といっても、その症状や原因はさまざまです。
動悸の多くは特別な治療が必要のないものですが、不整脈や狭心症や心筋梗塞などの病気が原因となって動悸が起きている可能性も否定できません。
そのため、気になる症状があればまずは医療機関で適切な検査を受けることが重要です。特に動悸が長時間続いたり、動悸以外の症状があったり、頻脈と徐脈を繰り返したりする場合は、早めに医療機関を受診するようにしましょう。