動悸で考えられる病気や原因とは?検査や治療法について解説

2023.07.30

  • LINE


監修医師:甲斐沼 孟(TOTO関西支社健康管理室)
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科を卒業後、心臓血管外科として勤務。国家公務員共済組合連合会 大手前病院 救急科医長を務め、現在はTOTO関西支社健康管理室に産業医として勤務。

動悸とは、心臓の鼓動が普段よりも大きく強く感じたり、早く感じたりする症状のことを指します。1日あたりの拍動の回数は約10万回といわれています。拍動は基本的には一定のリズムで起こり、日常生活の中で意識することはほとんどありません。

しかし急に心臓がバクバクと大きく感じたり、脈が飛んだり乱れたりする感じがすると「病気なのではないか」と不安に感じることでしょう。

「動悸」と一口に言っても、問題のないものから、命にかかわる重篤な病気が隠れているものまでさまざまです。

ここでは、医師監修のもと動悸で考えられる病気や原因について詳しく解説していきます。

動悸とは

動悸とは、心臓の鼓動が普段よりも大きく強く感じたり、早く感じたりする症状のことです。動悸の原因によっては、胸の不快感や痛み、息苦しさや息切れなどの症状が合わせて起きることもあります。

動悸はよくある症状であり、心疾患や病気がなくても起こることもあります。ここでは、動悸の症状や原因、引き起こす病気の種類などについて解説していきます。

動悸の症状

動悸の感じ方は人によってさまざまです。具体的には、以下のような症状が挙げられます。

  • 脈拍数の増加
  • 心臓の拍動の自覚
  • 脈が飛ぶ、乱れる など

このように、心臓が強く脈打つように感じたり、脈が速くなったり、飛んだり乱れたりするように感じられる症状を総称して「動悸」と呼びます。

動悸の原因と考えられる病気

動悸が起きる原因は多岐にわたります。特別な治療の必要のない動悸から、重篤な病気により生じる動悸まで、さまざまです。

そのため気になる症状があれば、医療機関で適切な検査を行い、動悸の原因を探っていくことが重要です。ここでは、動悸を起こす原因や考えられる病気について解説していきます。

動悸の原因

動悸を起こす原因としては以下のようなものが考えられます。

  • 不整脈
  • 不整脈以外の心臓の病気
  • 貧血やホルモン分泌の疾患
  • 高血圧、低血圧
  • 薬の副作用、カフェイン・アルコールの摂取
  • ストレス など

激しい運動をした時や緊張した時などに、一時的に強い拍動を感じることは通常の反応であり、問題ありません。

ただし動悸が長い期間続いたり、動悸以外の症状(息苦しさや倦怠感など)が同時に起こるという場合は、一度医療機関で検査をしてみるようにしましょう。上記で挙げた動悸の原因について、詳しくみていきましょう。

不整脈

不整脈は、動悸の原因となる代表的な病気の一つです。脈が遅くなる(徐脈)、脈が速くなる(頻脈)、脈が不規則になる(期外収縮)などを総称して「不整脈」と呼びます。

不整脈の多くは特に治療の必要のないものですが、稀に命にかかわるものもあります。「ただの不整脈だろう」と自己判断し、症状を放置するのは大変危険ですので、気になる症状があれば必ず医療機関を受診するようにしましょう。

不整脈以外の心臓の病気

不整脈以外で、動悸の原因となる心臓の病気として、心臓弁膜症・虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)・心筋症・心筋炎・心膜炎などが挙げられます。

特に動悸と共に胸の痛みや息苦しさ、意識が朦朧とするなどの症状があれば、一刻も早く医療機関を受診するようにしましょう。

貧血やホルモン分泌の疾患

貧血の方は、必要な酸素を体中に送るために心臓から送り出す血液量が増え、心臓が激しく動き、動悸の症状があらわれることがあります。

また甲状腺ホルモンが過剰に作られるバセドウ病などの方も、ホルモンの働きで心臓の拍動が強くなったり速くなったりします。

高血圧、低血圧

高血圧や低血圧では、心臓が全身に血液を送る際に強い力がかかるため、動悸が起きる場合があります。

薬の副作用、カフェイン・アルコールの摂取

気管支を広げる喘息の薬などを服用している場合、薬の副作用として動悸が起こることがあります。また飲料などに含まれるカフェインを大量に摂取した時や、アルコールの過剰摂取でも動悸の症状がみられることがあります。

ストレス

ストレスにより自律神経のバランスが崩れることで、動悸の症状が起きることがあります。またパニック障害、不安神経症、過換気症候群など精神的な病気が原因で動悸が生じる場合があります。

動悸の検査・治療

動悸は特に治療の必要のないケースも多いですが、前述のような病気が隠れていることもあるため、気になる症状があれば医療機関を受診し、適切な検査・治療を受けるようにしましょう。

特に以下のような症状があるときは、早めに医療機関を受診することが勧められます。

  • 胸の痛みや圧迫感、息切れなど
  • 脈拍数が1分間に120回以上、もしくは45回未満
  • 家族や血縁者に心疾患、突然死、繰り返す失神、けいれん性疾患の病歴がある
  • 運動による動悸で意識が無くなった

ここでは、動悸の症状がある場合に行われる検査や治療について解説していきます。

動悸の検査

医療機関では、動悸が起こる状況や症状についての問診を行った後、動悸の原因を突き止めるために必要に応じて以下のような検査が行われます。

一般的な検査

血圧・脈拍・体温・貧血・甲状腺の腫れ・心音・肺の音などを総合的に診察し、動悸の原因となる病気の可能性を探ります。

心電図検査

心電図検査では、不整脈や狭心症、心筋梗塞などの心臓の病気の有無を調べます。通常の心電図検査は、動悸が起きている最中でないと正確な診断ができないため、計測機器を長期間装着する「24時間ホルター心電図検査」が使用されることあります。

血液検査

血液検査では貧血、甲状腺の異常(甲状腺ホルモンの濃度)、心臓の疾患(心臓から分泌するホルモンや代謝物の測定)の有無などを調べます。

超音波検査やレントゲン検査

心電図検査で心疾患が疑われた場合は、心臓の超音波検査や心臓MRI検査、肺の病気を検査するためのレントゲン検査なども行われます。

動悸の治療

動悸の症状があっても、必ずしも治療が必要だというわけではありません。ただし検査の結果、動悸を起こす原因となる病気が見つかった場合や、動悸の症状により日常生活に支障をきたす場合などは、原因に応じた治療が行われます。

動悸の治療としては、主に薬物療法(抗不整脈薬や抗凝固薬など)、電気的除細動やペースメーカーの埋め込み、カテーテルアブレーションなどがあります。

他にも、服薬している薬の影響による動悸であれば薬の中止・変更などが検討されたり、カフェインやアルコールの過剰摂取があれば、それらを辞めるための生活習慣の改善が求められます。

まとめ

動悸は、不整脈や心疾患だけではなくさまざまな原因によって起こります。激しい心拍の脈動や乱れに不安を感じることもあるかと思いますが、病気が原因ではないことも多くあります。

逆に重篤な病の予兆の場合もありますので、家族に心臓病の既往症がある場合や、不整脈が長く続く、動悸と共に意識を失うなどの症状が表れる場合は、軽く考えず早めに医療機関を受診するようにしましょう。